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2025.02.22


Vol.25 齋藤 隆/誰よりも信頼された鉄腕リリーバー【MLBの挑戦者たち〜メジャーリーグに挑んだ全日本人選手の足跡】

 

 

齋藤 隆(さいとう たかし)/1970年2月14日生まれ、宮城県出身。日米通算112勝96敗139セーブ(1992〜2015年)

ベテランの域に入った36歳で渡米し、5球団を渡り歩きながら、7年間もの長きにわたりメジャーの舞台で活躍した齋藤 隆。45歳まで現役を貫き、引退後もサンディエゴ・パドレスのフロント業務に携わるなど、日米球界で幅広く見識を深めている。2023年には横浜DeNAベイスターズの投手コーチから編成部門へ。「選手出身でメジャーのフロント業務を学んだ人は少ないと思う。アジア全体の野球発展のために仕事をしたい」と意気込みを語った。

23年間のプロ生活で、日米通算112勝、139セーブという記録を残した齋藤だが、実は本格的に投手に転向したのは東北福祉大の2年時のことだった。そこからメキメキと力を伸ばし、横浜大洋ホエールズ(当時)のドラフト1位としてプロ入り。快速球と鋭いスライダーを武器に、主に先発として活躍した。大学の2つ上の先輩で、横浜でもチームメイトだった大魔神・佐々木主浩が渡米すると、その後釜としてクローザーに転向。2年間で47セーブを挙げており、この経験が後にMLBで生きたと本人が語っている。
 
 
2002年オフ、FAでのメジャー移籍を考慮したものの、この時は断念。’05年オフになって本格的にメジャー移籍を狙うことになった。とはいえ、来年で36歳。しかもここ数年は不振が続いていた。移籍先はなかなか見つからず、スプリングトレーニング直前の2月になり、ようやくロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を締結。年俸はわずか500万円程度だった。「最後は一番高いところを目指して野球を終えたい気持ちだけでした。忘れ去られるくらいの覚悟で米国へ行きました」と後に語っている。
 
 

2006年6月、ドジャー・スタジアムでの試合前にシアトル・マリナーズのイチロー、城島健司と談笑

キャンプ期間中も苦労した齋藤だったが、開幕直前に故障選手との入れ替わりでメジャー昇格。4月9日、フィラデルフィア・フィリーズ戦でメジャー初登板を果たすと、18日のシカゴ・カブス戦で初勝利。4月を12登板1失点で終え、5月にはクローザーの重責を任された。結局この年はチーム最多の72試合に登板し、球団新人記録となる24セーブを記録。WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数の合計)0.91はリーグ1位、奪三振107は救援投手として両リーグ最多であった。その年の最も活躍した投手に贈られるサイ・ヤング賞の候補としても8位になっている。
 
 

2007年のオールスターゲームでインタビューに応える

翌’07年もクローザーとして起用されると、37歳にして自己最速の159キロをマーク。レギュラーシーズン中に日本人投手が投げた歴代最速記録(当時)であった。また、この日に挙げたセーブにより、デビュー以来48度のセーブ機会で45の成功を収めたことになり、これまでの44/48を超えるメジャー新記録となった。以降も順調にセーブを重ね、監督推薦によりオールスターゲームに初出場。ここでも156キロの速球を投げ込み、1イニングを無失点に抑えている。齋藤は最終的にナ・リーグ3位の39セーブ、防御率1.40、WHIP 0.72という秀逸な成績を残した。またこの年のオフ、現役メジャー選手の格付けランキングにおいて、ナ・リーグ救援投手部門のトップとして評価されている。
 
 

2009年2月、岡島秀樹が所属するボストン・レッドソックスのキャンプに参加

続く’08年、クローザーとして順調にセーブを重ねるも、7月に右肘靭帯を痛めて故障者リスト入り。9月に復帰したが精彩を欠き、わずか18セーブでシーズンを終えた。’09年1月、ボストン・レッドソックスと契約。主にセットアッパーとして活躍し、56試合に登板して防御率2.43と優れた成績を残した。しかし優秀だったがゆえに、出来高を含む来季年俸が高額になることから、ウェイバー公示(球団が支配権を放棄)となった。
 
 

2010年3月、移籍したアトランタ・ブレーブスでオープン戦に登板

‘10年、メジャー3球団目となるアトランタ・ブレーブスでプレーすることになった齋藤は、ここでもセットアッパーとして実力を示す。5月に勝利投手となり、日本人メジャー投手として初めて40歳代での勝利を記録(8月には同じくセーブを記録)。このまま順調にシーズンを終えるかと思われた9月、投球時に右肩の痛みを訴えて降板。診断の結果は右肩腱炎だった。チームがプレーオフ争いを続けるなか、齋藤は故障者リスト入りすることなく10月に復帰。しかし思うような投球ができず、ポストシーズンの選手登録からは外されてしまう。その後、第3戦から選手登録されたものの、登板機会のないままチームが敗退した。
 
 

2011年10月、所属するブルワーズが地区優勝を果たし、シャンパンファイトでチームメートと喜びを分かち合う

翌’11年はミルウォーキー・ブルワーズと契約した。しかし4月に左太腿を痛めて故障者リスト入り。7月にはメジャー復帰を果たし、メジャー通算300試合登板を達成した。すでに41歳だった齋藤は、30登板で4勝2敗10ホールド、防御率2.03という好成績を残した。チームも地区優勝を果たし、4球団を渡り歩いた斎藤にとって、6シーズンで5度目のポストシーズン出場となった。この年はポストシーズンでも登板し、6試合7イニングスを無得点に抑える好投。自身初の勝利も記録したが、チームはリーグチャンピオンシップで敗退している。
 
 

2012年7月、ニューヨーク・メッツ戦に登板

オフにFAとなると、これまでの経験と実績が高く評価され、6球団以上が斎藤の獲得に興味を示す。代理人のネズ・バレロは彼をワインにたとえ「年を重ねるごとによくなっている」と話した。12月にはアリゾナ・ダイヤモンドバックスと契約。しかし開幕前から故障が相次ぎ、7月に復帰するも、8月に再び故障してリスト入り。この年はわずか16試合の登板で、実力を発揮することなく終えている。斎藤自身は「今年ほど体調管理の難しさを感じたことはない」と語った。

そのオフ、東北楽天ゴールデンイーグルスとの契約を発表。横浜時代から8年ぶりとなる NPB復帰が実現した。’15年8月の引退発表までに、通算7セーブ13ホールドを記録。同年10月に行われた引退セレモニーでは、「後輩たちにすべての思いを託し、新しい第二の人生を歩んでいこうと思っています」と力強く話した。ボロボロになるまで戦い続けた男の万感がこもった、どこか晴れやかな去り際だった。

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文=野中邦彦  text : Kunihiko Nonaka
photo by AFLO
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