ハリウッド屈指の“ナイスガイ”が悪役に!? 『大富豪になるための正しい殺し方』最速レビュー!
【グレン・パウエル】が挑む新感覚の逆転クライム劇!
今ハリウッドで最も熱い視線を浴びる最旬スター、グレン・パウエル。“トム・クルーズの後継者”とも称される彼が最新作で挑んだのは、ブラックユーモアあふれるクライムミステリーだ。古典的な犯罪喜劇を現代的にアップデイトした、極上のエンターテイメント。『Safari』でもお馴染みの彼の最新主演作を、どこよりも早くレポート!
大ヒット映画『トップガン マーヴェリック』の生意気パイロット、ハングマン役で注目を集めたのを皮切りに、トップスターへの階段を勢いよく駆け上がり続けてきたグレン・パウエル。その翌年に公開された「恋するプリテンダー』では、作品を大ヒットへ導いた功績から“新ラブコメ王”の称号をゲット。続く『ツイスターズ』や『ランニング・マン』では、早くも大作映画の顔として君臨するポジションに至っていた。
そんなグレン・パウエルを、『サファリ』でもことあるごとに猛烈プッシュしてきたが、ここで改めて考えてみたい。彼の持ち味はなんなのだろう? ハングマンのような反抗的キャラ? ロマンチックな恋の物語にもスマートにハマる魅力? 巨大竜巻に見舞われても生き残りそうなたくましさ? それとも、超絶ピンチの中でめげない不屈のサバイバル精神?
どれもこれも欠かせない要素ではあるが、それだけに留まらないのがグレン・パウエルという男。いわゆるスーパーヒーローではなく、もっといってしまえば善と悪のグレーゾーンにいてなお輝きを放つ。そんなグレンの複雑さを存分に堪能できるのが、主演最新作『大富豪になるための正しい殺し方』だ。
演じるのは、大富豪一族の血を引く青年ベケット・レッドフェロー。当主の娘である母親は未婚のままベケットを妊娠したことで絶縁され、彼は母親とともに慎ましい人生を送ることに。ときが流れる中で母を亡くし、いまや高級スーツ店のしがない販売員となったベケットは、絶縁状態にある一族の資産を相続する権利が自分にもあることを知る。その総額は280億ドル。だが、資産を手に入れるには、自分の前に立ちはだかる7人の後継者候補を排除しなくてはならない。莫大な資産を手に入れる未来を想像しはじめたベケットは、親族を1人、また1人と事故に見せかけて殺害していく。
監督を務めたのは、長編デビュー作の『エミリー・ザ・クリミナル』が高く評価されたジョン・パットン・フォード。次なる新作に注目が集まる中、フォード監督は1949年の犯罪喜劇映画『カインド・ハート』に着想を得た脚本と出会い、現代の物語としてブラッシュアップしていったという。そんな出発点によるところもあってか、現代のニューヨークが舞台でありながらも映像の質感はレトロで、古きよきサスペンス映画のような味わいに。ちなみに、『エミリー・ザ・クリミナル』も主人公があれよあれよと犯罪の世界に足を踏み入れていく物語だったのだが、『大富豪になるための正しい殺し方』では『カインド・ハート』同様、ブラックユーモアが作品のスパイスになっている。最も顕著なのは殺人を犯すシーンで、映画がはじまって間もなく、ベケットは鼻持ちならない従兄弟を殺害。不慮の事故に見せかけ、自分の痕跡を現場から消す。この第一の殺人があまりにもあっさりしていて、笑えてしまうほど。ちゃっかりと殺人マシーン化していくベケットの運命を、とぼけたユーモアとともに物語るシーンになっている。
となれば、グレン・パウエルにとっては独壇場が用意されたようなものだろう。ヒロインと丁々発止のやり取りを見せた『恋するプリテンダー』や偽物の殺し屋役で無双した『ヒットマン』などからもわかるように、そもそもコメディセンスは抜群。やっていることは醜悪だが、殺人をうっかり成功させる様も、一転してジタバタする様もどこかおかしみがあって憎む気を削がれる。しかも、彼の殺人計画に勘づいているような、いないような素振りを見せる初恋の女性ジュリア(マーガレット・クアリー)や、殺害相手の恋人だったルース(ジェシカ・ヘンウィック)とのロマンスが香り立ちはじめる展開も。憎めないどころか、周囲の心さえ奪う男になっていくのがさすがだ。グレン自身は撮影にあたり、ダイエットを敢行して大幅に減量。そこには、ベケット・レッドフェローを筋骨隆々で、誰からも愛されるスーパーヒーローにはしない意図があったという。また、減量による飢餓感が、手に入れたいものを手に入れようとする不遇のアンダードッグの渇望にも繋がっているようだ。
もちろんネタバレはしないが、ラストには「なるほど」とも、「そんな……」とも言いたくなる展開が待ち受けている。ベケット・レッドフェロー=グレン・パウエルの受け取り方次第で、印象は分かれるところだろう。それもきっと、ブレイクスルー以降様々な役柄に挑戦し、作品を成功に導きもした男の作戦かもしれない。正しきヒーローでもなければ、翻弄される弱者でもない"闇グレン"が降臨。あの不敵な笑顔には、まだまだ無限の可能性が詰まっている気がする。
大富豪一族から追放された母のもと、貧しく育ったベケットは、遺産を独り占めするため、親族の抹殺計画を企てる。武器となるのは、母仕込みの知性と洗練されたふるまい。次々と巧妙な罠を仕掛けていく彼だったが、幼馴染みのジュリアと再会したことで計画が狂いはじめ……。完ぺきだったはずの計画が辿る予測不能な結末とは?
監督 : ジョン・パットン・フォード
出演 : グレン・パウエル、マーガレット・クアリー
配給 : KADOKAWA
11月13日(金)より全国公開
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※『Safari』10月号178〜179ページ掲載
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