【Profile】ノーマン・リーダス/1969年1月6日生まれ、米フロリダ州出身/『ミミック』(1997年)でスクリーンデビュー。1999年の『処刑人』で注目を集めたのち、2010年から放送されたテレビドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズでダリル・ディクソン役を演じ、世界的スターとなる。
大人気ゾンビドラマ『ウォーキング・デッド』のダリル・ディクソン役で、日本にも大勢のファンを持つノーマン・リーダス。そんな彼が精魂込めて演じ、今やシリーズ屈指の人気キャラクターとなったダリルの活躍は、フランスに漂流した彼が新たな脅威に立ち向かうスピンオフ『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』でも見られる。Safari Onlineでは、大阪コミコン2024のために来日したノーマンにインタビュー。長い時間を共にしてきたダリル役やスピンオフ、そして自身について語ってもらった。
――日本にはいつ着いたのですか?
「一昨日だよ。でも、実は1カ月ほど前にも日本に来たばかりでね。その後、ブダペストで『ジョン・ウィック』のスピンオフ映画、『バレリーナ(原題)』の追加撮影をし、フランスでル・マン24時間耐久ロードレースを観戦した。それから別の撮影をしたり、オフを取ったりしてミラノ、アトランタ、ニューヨークに3日間くらいずつ滞在してから日本に戻ってきたってわけ。あちこちを飛び回っているよ」
――大忙しですね!
「滞在先でゆっくりできないのは嫌だけど、1カ月ほど前に来た日本では5歳の娘と一緒にディズニーランドに行ったんだ。ちょっとした春休みだったね」
――さて、“ダリル・ディクソン”について聞かせてください。この役を演じて約15年が経ちましたが、ダリルはあなたにとってどんな存在ですか?
「『ウォーキング・デッド』に初めて登場した時のダリルと、最終回を迎えた頃のダリルは違う。彼は物語の中ですごく成長したし、僕自身もシリーズを通していろいろなことを学んだ。“TVドラマとは?”を学び、自分の製作会社を立ち上げるまでに至って。何せ約15年だから、ダリルも僕も年齢を重ねた。そういった意味でも、彼を演じてきたのはすごくパーソナルな体験になっていると思う」
――そして、『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』ではさらに成長したダリルが見られるわけですね。
「僕は『ウォーキング・デッド』の中で、ダリルがシーズンごとに変化し、成長するよう演じた。彼は命を落とした仲間から学び、行動や考え方に反映させていくんだ。“こんな時、リックはどうする? ハーシェルなら、この問題をどう解決する?”といったようにね。そもそも、『ウォーキング・デッド』の世界の背景にはアポカリプスがあり、すべての者が協力し合わなければいけない。でも、当初のダリルは差別主義者でドラッグもやる悪い男だった。その後、ネガティブな過去を捨て、自分の殻を破り、誇れる存在になる機会が与えられるのだけど、そんなダリルの現在の成長を描いているのが『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』だと思う」
――イザベルやローランなど、ダリルがフランスで出会う人々との関係が面白いです。
「イザベルともローランとも最初は特に“関係”と呼べるものすらなく、ダリルにとって彼らはアメリカに帰るための手段に過ぎなかった。でも、物語が進むにつれて多くの血が流れ、協力関係を結ばざるを得なくなる。きっと、ダリルには(多くの血が流れたことに対する)罪悪感もあったんじゃないかな。それに、ローランは“特別な子”で、少なくともイザベルたちはそう思っているのだけど、そんな彼すら守ってくれる人がいなければ生き残れない現実をダリルは知っている。だから、守らなきゃという気持ちが徐々に芽生え、家族のような絆が生まれていくんだ」
――シーズン2では、フランス語が上手くなるダリルを見られますか?
「(日本語で)ちょっと! ほんの少しだよ。シーズン1の面白さは、ダリルがフランス語を全く話せなかったところにもあったと思う。ジェスチャーで会話をすることもあったし、状況がどれほど深刻かを理解できないこともあった。でも、シーズン2では少し学ぶよ。実際、面白いフランス語のセリフを言うシーンもいくつかある」
――日本によく来てくれるから、日本語も上手になっていますよね。
「ノー! 『(日本語で)トイレはどこですか?』くらいしか言えないし。フランス語もまだ酷いものだよ」
――フランスでのロケはいかがですか?
「(『ウォーキング・デッド』の主な撮影地である)ジョージアでは1台のカメラごとにスタッフがいて、常に3〜4台のカメラをフル稼働させるシステムが出来上がっていた。血糊を塗りまくって1台目のカメラの前に立ち、血糊を洗い流した後に2台目の前に立ち、3台目の前でクルマを運転し……という感じでね。でも、フランスでの撮影は勝手が違い、1テイクを撮った後、スタッフがコーヒーを飲んだり、タバコを吸ったりしながらおしゃべりするんだ。1シーンじゃなく、1テイクの後にね。だから、僕は『今は何の時間だ?』と言った。でも、彼らの会話を訳してもらったところ、それはカメラの動きについての議論で。僕らの物語を語るためにはどう撮るべきかを考え、真のアートを追求するために時間をかけていたんだ。“いつまでも話してくれ!”と思ったね」
――フランスでの撮影には最初から前向きでしたか?
「すごく興味があったし、アメリカとは違う画が撮れる期待もあった。でも、フランスの観光ガイド的なドラマにはしたくなかったんだ。ベレー帽をかぶり、バゲットをかじり、ボーダー柄を着て……。そんなの最悪すぎるだろう? だから、フランスの脚本家、監督、スタッフを招いて。おかげで、脚本にはフランス人にしか馴染みのない表現も入っている。シーズン1に『ブライアンはどこにいる?』『ブライアンはキッチンにいる』というセリフがあるのだけど、それはフランスの子供たちが授業で最初に習う英文で、教科書にも載っているものなんだ」
――撮影中はずっとパリに?
「基本的には、1年間ずっとパリにいた。でも、『ザ・バイクライダーズ(原題)』の撮影も同時期にあったから、オハイオとパリを行ったり来たりして。『バレリーナ(原題)』の撮影のためにプラハとパリを行き来する時期もあったね」
――大変そうです……。
「でも、やらない選択肢はなかった。僕はいろいろな人と働き、いろいろ学びたい。小島秀夫とのゲーム制作も学びだし、ジェフ・ニコルズ(『ザ・バイクライダーズ(原題)』の監督)の映画に出演することも。カンヌでジェフに会った時、彼は『僕の映画に出てくれる?』と言い、僕は“待ってくれ。君はあの『MUD -マッド-』の監督だよね!?”となった。要するに、僕は誰と一緒に働くかを大事にしている。実際、大勢の素晴らしい監督、ウィレム・デフォーをはじめとする素晴らしい俳優たちと仕事をしてきたしね。確かに、ダリルを演じている最中に違う作品にも取り組むのは大変だけど、スマートでクリエイティブな人たちと仕事をする機会を逃したくはないし、それが自分の成長に繋がると思う」
――先ほど、『バレリーナ(原題)』の追加撮影をなさったと言っていましたね。
「撮影自体は1年前に終わっているけど、追加撮影のために呼ばれたんだ。それで、銃をバンバン撃ったり、ちょちょっと戦ったりもして。でも、全部終わったよ!」
――ジェフ・ニコルズや『バレリーナ(原題)』のレン・ワイズマン以外に、一緒に仕事をしたい人や出演したい作品は?
「『メディア王~華麗なる一族~』(U-NEXTにて見放題で独占配信中)に出たい! だって、僕は森で泥まみれになりながら蛇を殺したり、それを食べたりしているのに、彼らはいつもキャビアを食べたり、ゴージャスなヨットに乗ったり、プライベートジェットで旅をしたりして。不公平じゃないか」
――最終回まで見ました?
「見たよ。すごくいいドラマだった。でも、キャビアとプライベートジェットとシャンパンが頭から離れない。大嫌いだ、奴らなんて(笑)」
――では、あなた自身の人生のモットーは? キャビアとは一線を引く?(笑)
「その通りだね! 常に地に足をつけて、常に感謝を忘れず、調子に乗りすぎない。そんな感じかな」
――実践できていますか?
「できていると思う。お金のためだけに仕事をしたことはないし、贈り物にケチをつけた(感謝を忘れた)こともない。一生懸命働き、何か面白いことはないかと常に探している。そして、娘と一緒にテイラー・スウィフトを聴くんだ。あと、僕らは最近飼いはじめたハムスターのシャーロットとも遊んでいる。態度の悪い生意気なハムスターだけどね」
『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』U-NEXT にて独占配信中
製作総指揮・出演/ノーマン・リーダス 製作総指揮/デヴィッド・ザベル、グレッグ・ニコテロ 監督/ダニエル・パーシヴァル、ティム・ソーサム 脚本/デヴィッド・ザベル、ジェイソン・リッチマン 出演/クレマンス・ポエジー、ルイ・ピュエシュ・シグリウッツ、ライカ・ブラン=フランカール、ロメイン・リーバイ
【あらすじ】
コモンウェルスを離れたダリルは、目が覚めるとマルセイユの港に漂着していた。“飢えし者”と呼ばれるウォーカーがはびこるフランスでは、人類再生を信じ慈善活動を行う『希望連合』と、武力で全土を制圧する『生者の力』、2つの勢力が台頭していた。ダリルは『希望連合』の修道女・イザベルに出会い看病を受けるが、彼女は"救世主"として育てられた少年・ローランを連合本部へ護送するようダリルに協力を求める。一方、『生者の力』幹部のコドロンは、ある目的でダリルの行方を追っており……。
●こちらの記事もオススメ!
クリス・ヘムズワースが語る『マッドマックス』との縁「1作目のスタントマンは父親の知り合い」
撮影=三橋優美子 photo:Yumiko Mitsuhashi
©2023 Stalwart Productions LLC.