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CULTURE カルチャー

2024.03.23


ハリウッド女優たちがプロデューサーを務める理由とは?(1)


『ブルックリンでオペラを』(2024年)

アン・ハサウェイが最新作で
願いを叶える
その人が出ているだけで、映画を観たくなる。これはスターの証明だが、ハリウッドの中でも長年、そんな存在をキープしている一人が、アン・ハサウェイだ。2024年2月の全米映画俳優組合賞(SAG)の授賞式では、メリル・ストリープ、エミリー・ブラントとともに『プラダを着た悪魔』(2006年)の3人の再会が実現。メディアでも大きく取り上げられた。18年前の同作では、レジェンドのストリープを前に、まだまだ“ヒヨッコ”に見えた2人が、実力も実績も積んで貫禄たっぷりに成長した姿は感慨深かった。
 

  

 

アン・ハサウェイ

1982年、NYブルックリン生まれのアン・ハサウェイは、母親が舞台俳優だったこともあって同じ道に進み、2001年の『プリティ・プリンセス』で大ブレイクする。何をやってもパッとしない女子高生が、ヨーロッパの王国の末裔だと知らされ、プリンセス修行をはじめるこの物語は、ハサウェイの映画界でのサクセスストーリーと見事にシンクロ。目鼻立ちのはっきりした顔立ちと、キュートな笑顔で一躍、世界中の人気を得た。その後、『ブロークバック・マウンテン』(2005年)などで演技力も評価され、『プラダを着た悪魔』(2006年)では、文字どおり悪魔のような上司の下で苦闘するヒロイン役での熱演が共感を誘い、トップスターの地位を確立。その後、アカデミー賞の司会者を務め(ジェームズ・フランコとペア)、『レ・ミゼラブル』(2012年)ではアカデミー賞助演女優賞を受賞。そのアカデミー賞では、ヒュー・ジャックマンが司会の回で、彼が客席のハサウェイを呼び込んでステージで一緒に踊るという演出も話題に。『オッペンハイマー』(2024年)でオスカー監督となったクリストファー・ノーラン作品には『ダークナイト ライジング』(2012年)、『インターステラー』(2014年)の2本に出演するなど、すっかりハリウッドの“顔”になった。ファッションリーダーで、2人の子供の母親でもあるアン・ハサウェイは、俳優という枠を超えて注目される存在である。
 

  

 

『プラダを着た悪魔』(2006年)

そんなハサウェイの新作『ブルックリンでオペラを』(2023年)は、これまでのキャリアの中でも、彼女の素顔が色濃く重なる役だ。精神科医のパトリシアは、現代オペラの作曲家である夫スティーヴンと5年前に再婚。前夫との息子で高校生のジュリアンとともにNYのブルックリンに暮らしている。スティーヴンとの出会いは、作曲でスランプに陥った彼を、担当医となったパトリシアが助けたことがきっかけ。ジュリアンとガールフレンドの関係、さらにスティーヴンの気の迷いから生じた浮気などで、パトリシアも自分を見つめ直すドラマが展開していく。
 

 
アン・ハサウェイが高校生の母親役というのも、ちょっとサプライズだが、彼女もすでに40代。こうした役を等身大で演じられるようになったわけだ。パトリシアの家族がブルックリンに住んでいるという設定も、ブルックリン生まれのハサウェイにぴったり。パトリシアは近所の教会での慈善活動に熱心で、修道女へのあこがれを表明するのだが、ハサウェイが子供の頃になりたかったのが修道女という話は有名。両親がカトリックという環境で成長したからだが、兄がゲイであると知り、それを認めないカトリックから家族で離脱したことで、その夢はストップされた。こんな風に演じたパトリシアと、ハサウェイにはいくつもの共通点を見つけることができる。彼女の素顔を見ているようで、ファンにはうれしい一作だ。
 
 
自分に近い役ということで、演じたかったのかもしれない。『ブルックリンでオペラを』の監督はレベッカ・ミラー。『セールスマンの死』などで知られ、ピュリッツァー賞なども受賞した劇作家、アーサー・ミラーの娘だ。レベッカ・ミラーをリスペクトするハサウェイは、20年前に彼女の作品のオーディションを受けたが、役を得られず、今回は満を持してのタッグだという。ミラーが書き上げた本作の脚本に惚れ込んだハサウェイは、パトリシア役だけでなくプロデューサーも買って出ることになった。監督のミラーとともに、1年間かけて意見を出し合い、パトリシアというキャラクターを作り上げたというハサウェイ。プロデューサーだからこそ、アイデアをたくさん出せたわけで、自身に近い役が完成されたのかもしれない。
 
 
ハリウッド作品では、メインキャストのスターが、プロデューサーに名前を入れるパターンをよく目にする。作品の資金集めだったり、ヒットした際の売り上げを分配するためだったりと、その目的はさまざま。しかしプロデューサーに名を連ねれば、クリエイティブにも深く関わることができ、より良い作品にすべく貢献することも可能。『ブルックリンでオペラを』における、プロデューサー、アン・ハサウェイの役割は大きかったようだ。
 
 
ハサウェイがプロデューサーを務めるのは、今回が初めてではない。これまでも2014年の『ブルックリンの恋人たち』や、2016年の『シンクロナイズドモンスター』といった主演作でプロデューサーを兼任(後者はエグゼクティブ・プロデューサーという肩書き)。5月2日にAmazonプライムで配信される最新主演作『アイデア・オブ・ユー〜大人の愛が叶うまで〜』(2024年)でもプロデューサーを務めるなど、今後も製作に精力的なスタンスが見てとれる。近年はスター女優がプロデューサーとして参加する傾向が高くなってきているが、ハサウェイもその一人。“作りたい”映画、“演じたい”役を自ら立ち上げ、実現させる。ハリウッドのトップ女優の間でその動きが活発になることで、思わぬ成功作が誕生することもあるのだ。

ハリウッド女優たちがプロデューサーを務める理由とは?(2に続く
 
  

 

 
文/斉藤博昭  text:Hiroaki Saito
Photo by AFLO
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