【映画まとめ】スティーヴン・スピルバーグ監督が手がけた映画作品15選!
『Safari Online』で配信してきたスティーヴン・スピルバーグ監督が手がけた作品をまとめてご紹介!
『激突!』
製作年/1971年 原作・脚本/リチャード・マシスン 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/デニス・ウィーバー、キャリー・ロフティン
究極のあおり運転に恐怖する!
妻との約束がありハイウェイを、急いでクルマを走らせていた男。目の前のタンクローリーを追い抜いたことが、彼の悪夢のはじまりだった。追い抜き返してきたタンクローリーの運転手は執拗に嫌がらせを仕かけ、追突のみならず、踏切に彼のクルマを押し込めようとしてくる。このままでは命が危ないーーそう悟ったとき、男は捨て身の行動に出る……。
ハリウッドを代表するヒットメーカーにして2度のアカデミー賞に輝くスティーヴン・スピルバーグの、記念すべきデビュー作。本作のヴィランは、何よりも真っ黒なタンクローリーだ。巨体もさることながら、運転手の顔をあえて映さず、その不気味さを強調。
まるで生命を持った個体のごとく襲いかかり、追突してくるのだから、あおり運転レベルを超えてゾッとさせられる。ハイウェイやガソリンスタンドで追いつ追われつする、それだけの話を一級のスリラーに仕立て上げたスピルバーグの手腕に注目!
『ジョーズ』
製作年/1975年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス
真っ赤な海とおどろおどろしい音楽
海辺の小さな田舎町で、女性の遺体が打ち上げられた。警察署長のブロディは、その死因がサメの襲撃だと断定。ビーチを遊泳禁止にしようとする。しかし、市長のボーンは観光による収入がなくなることを理由に拒否する。けれども、犠牲者がさらに増えてしまい……。
その姿をなかなか現さないジョーズ。海も静まり返っているのだが、ジョン・ウィリアムズが作曲した例の音楽が流れると恐怖のはじまり。ビーチで遊ぶ若者たちが次々と襲われ、海面は血で真っ赤に染まっていく。襲われるシーンはもちろんだが、この音楽がトラウマ級の恐ろしさ。これまでテレビで繰り返し放送された作品なので、偶然チャンネルを合わせてしまい唖然となった、なんて人もいるだろう。
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』
製作年/1981年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/ハリソン・フォード
痛快アクションでココロをリフレッシュ!
ブルホイップ(牛追いムチ)を武器にナチス軍を相手に勇敢に戦う一方、蛇だけは大の苦手という主人公インディ・ジョーンズが活躍する冒険映画の最高峰。人類の歴史を覆す大秘宝を求め、南米の秘境を皮切りに、米国→ネパール→エジプト→ギリシャのクレタ島と地球をぐるっと一周する大冒険へと繰り出していく。
冒頭の大玉に追いかけられるシーンからはじまる数々の冒険と、ジョン・ウィリアムズの軽快なテーマ曲が日常を忘れさせてくれ、インディとともに冒険の旅へトリップした気分になれること必至。クライマックスでは神と交信できるというユダヤの秘宝“聖櫃(アーク)”の驚きの中身も明かされ、最後までハラハラドキドキの連続。これなら月曜からも、リフレッシュして臨めるはず!
製作は『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカス、監督はスティーヴン・スピルバーグ。少年が夢見る世界を愛してやまない2人の巨匠が最強タッグを組んだ、最上級のエンターテイメント作品。冒険家にして考古学教授である“永遠のヒーロー”インディに扮するのはハリソン・フォード。当時39歳、ダンディさが全身からほとばしっていた時期であり、よれよれのソフト帽とサファリシャツ姿なのだが、それが絶妙でかっこいいのだ。
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』
製作年/1984年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/ハリソン・フォード、ケイト・キャプショー、キー・ホイ・クァン
サルの脳みそシャーベット!
1935年の上海。暗黒街の組織の罠にはめられ、インドの山奥に墜落したインディたち。彼らはそこで出会った村人たちに、邪教集団に奪われた神の石と村の子どもたちを取り返してほしいと頼まれる。それが伝説の秘宝“サンカラ・ストーン”だと知ったインディは、邪教集団の根拠地であるパンコット宮殿へ向かうが……。
パンコット宮殿ではインディらをもてなすために夕食の宴がはじまる。ところが、これがクセもの。悪趣味なメニューが次々と登場するのだ。巨大なヘビの中に詰め込まれた生きたウナギ、丸焼きのカブトムシ、目玉の入ったスープ、締めのデザートはサルの頭をフタにした脳みそのシャーベット! ユーモアたっぷりなシーンなのだ、くれぐれも食事をしながらの鑑賞には気をつけて!
『シンドラーのリスト』
製作年/1993年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/リーアム・ニーソン
他人の命を、命懸けで救うという生き方!
一介のビジネスマンとしてナチスドイツと渡り合い、1200人ものユダヤ人の命を救ったオスカー・シンドラーを主人公にした感動作。一歩間違えれば、自分自身も国家反逆の罪で処刑されるところを、ビジネスの世界で培った交渉術でギリギリの綱渡りを進めていく生き方が、男としてグッとくるポイントだ。
第2次世界大戦中、ドイツ国内では誰も逆らうことができなかったナチスドイツを相手に、ドイツ人実業家のシンドラーは軍需工場の労働力として強制収容所送りになっていたユダヤ人たちを雇い入れる。最初は営利目的で安価なユダヤ人に目をつけたシンドラーだったが、次第にユダヤ人の悲惨な状況を知り、収容所の鬼所長アーモン・ゲートとお互いの腹を探り合いながら人命救助に目覚めていく。
結局ユダヤ人救出によって全財産を使い果たしてしまうも、戦後も多くの人たちからシンドラーは愛され続けることに。権力を濫用し、悪の道に溺れていったアーモン・ゲートとは実に対照的だ。ユダヤ系米国人であるスティーヴン・スピルバーグ監督のクールに抑えた演出もお見事。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
製作年/2002年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス
見かけに騙されてはいけません!
詐欺師というのは、それらしく振舞っている。やはり、見かけに騙されてはいけない! と肝に銘じたくなるのが、こちらの作品。
パイロットや医師、弁護士などになりすましたうえに、小切手詐欺で大金を手に入れた天才詐欺師フランク・アバグネイルJr.が主人公。10代のころから度胸一発だったフランクは、語学が堪能だからといって、フランス語の教師になりすましたり、お金に困って小切手に手を加えてみたり……。やがて彼は、16歳から21歳までの間に400万ドルを稼ぐようになる。
フランクの詐欺の手口においてキーワードとなるのが、“社会では見かけがモノを言う”ということ。社会的地位が高そうな人間は、まわりから信用される。そのセオリーに基づき、彼はパイロットや医師、弁護士になりすます。そうすれば、偽造した小切手を使っても、まず疑われることはない。
もちろん、航空会社に忍びこんでパイロットの制服をゲットしたり、弁護士のスキルを身につけたり(なんと実際に弁護士資格を取得!)、“社会的地位が高そうな人間”をキープするための尽力も並大抵ではない。そんな努力の賜物“見かけ”に、人はついつい騙されてしまうものだ。いくらフライトアテンダントを引き連れ、颯爽と歩いているからといって、操縦桿を任せていいとは限らない!? フランク=ディカプリオがそれを教えてくれる。
『ミュンヘン』
製作年/2005年 監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ
終わりなき憎しみの連鎖を描く!
今年『フェイブルマンズ』で高評価を集めたスピルバーグ と戯曲家トニー・クシュナーが初コラボした一作。時は1972年、ミュンヘン・オリンピックの選手村にアラブ系テロリストが乱入し、11人ものイスラエル人の命が奪われた。これを受けてイスラエル政府は秘密裏に報復を指示。アヴナーをはじめ5人の工作員たちは「祖国と民族のために」と使命感を燃やしターゲットを抹殺していくのだが、彼らも憎しみの連鎖から逃れられなくなり、一人また一人と無残に命を落としていく……。
さすが史実を伝えるときのスピルバーグは一切の妥協と容赦がない。事件の生々しさや工作員が陥る極限の精神状態をむせ返るほどの臨場感で描きつつ、それでいて“home(祖国、家)”という概念を巡って人が優しくも非情にもなれる恐るべき無限地獄を浮かび上がらせていく。世界が9.11テロやイラク戦争を経て”復讐”の終わりのなさを痛感する最中に製作、公開された本作。ラストにそびえるツインタワーが、重く深い意味合いを投げかけている。
『SUPER 8/スーパーエイト』
製作年/2011年 製作/スティーヴン・スピルバーグ 製作・監督・脚本/J・J・エイブラムス 出演/ジョエル・コートニー、エル・ファニング
子供たちがダイナーでワイワイ!
1979年、オハイオ州。8ミリカメラで映画撮影をしていた6人の子供たちのそばで、貨物列車の衝突事故が発生。貨物列車は空軍施設エリア51からある場所へと極秘に移送中だった。その秘密を目撃した子供たちのカメラには、事故の一部始終が記録されていて……。
ダイナーは、古き良きアメリカを象徴する場所。ダイナーで食事をしている場面が登場するだけで、レトロな雰囲気がグッと増してくる。バイオレンスな作品だと、食事中に襲われる、なんて展開もあるが、本作は否。子供たちだけで、ワイワイ言いながらハンバーガーを食べるシーンが、なんとも美味しそうで楽しそう。「アメリカに行ったら、ダイナーで食事しよう!」と思ってしまうほど、魅力にあふれている。
『レディ・プレイヤー1』
製作年/2018年 製作・監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/タイ・シェリダン、オリビア・クック、ベン・メンデルソーン、サイモン・ペッグ
まさかのガンダムVSメカゴジラがハリウッドで実現!”
スティーヴン・スピルバーグ監督といえば、かつて『ジョーズ』でパニック映画を、『E.T.』で宇宙人との交流を、『インディ・ジョーンズ』シリーズで冒険活劇を、そして『ジュラシック・パーク』ではCGによる恐竜を……と、映画のジャンルや映像に革命を起こしてきた。そんな監督のスピリットを久々に感じさせるのが、『レディ・プレイヤー1』だ。VR(ヴァーチャル・リアリティ)で体感する驚きの世界が未知の体験に案内する、“映画”本来の目的を達成している。
専用のゴーグルとグローブを着ければ、世界中の誰もが入りこめる仮想空間“オアシス”。無限のように、様々な光景が広がるオアシス内の映像は、圧巻の一言だ。オアシスの創始者の遺言に従った“宝探し”の冒険は、まず、ニューヨークに似た仮想都市でのカーレースにはじまるのだが、このシーンのスピード感、ドライバー目線の臨場感は、われわれ観客もVRを体感するレベル。一気にオアシスの世界に引きこまれる。テンポ、ダイナミズムとも、アクション娯楽作の見本のようなこのシークエンスは、さすがスピルバーグ!
オアシス内に、’80年代を中心にしたカルチャーネタ(映画・音楽・漫画・人気キャラ)を発見できるのも本作の大きな楽しみで、ガンダムや『AKIRA』のバイクの活躍は日本人にうれしい(ウルトラマンなど、原作に登場しても権利の問題で出てこないキャラもいる)。特にガンダムVSメカゴジラなど日本では絶対にあり得ない対決がハリウッドで実現しているところはオタクならずとも大注目だ。しかし、それらをスルーしても、作品全体に’80年代映画の豪快で、ちょっと懐かしいテイストが充満しており、当時の映画にハマった人はノスタルジーに浸り、そうでない人は逆に新鮮に映るはず。『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』、さらにジョン・ヒューズ監督作のように、’80年代青春ストーリーの味わいも復活している。
『メン・イン・ブラック:インターナショナル』
製作年/2019年 製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ 監督/F・ゲイリー・グレイ 出演/クリス・ヘムズワース、テッサ・トンプソン、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、レベッカ・ファーガソン
予想外の装備が飛び出すガジェットにワクワク!
最高機密機関のMIB。今回はNY本部およびロンドン支部が登場。ほかにもエッフェル塔でのバトルや、モロッコの砂漠でのサバイバル、イタリアの豪邸でのドラマが描かれ、世界規模のスケールを届けてくれる。クリス・ヘムズワースが演じるのはエージェントH。彼はかつて前人未到のミッションを成し遂げた、MIBのヒーロー。しかしオレ様気質でチャラい面もある。そして『アベンジャーズ〜』でヴァルキリーを演じたテッサ・トンプソンが、新米のエージェントM役。こちらは頭脳明晰のエリートタイプ。前シリーズ以上に、好対照キャラのコンビだ。
エイリアンを見た一般市民の記憶を消すニューラライザーなど、ガジェットが魅力でもあるMIB。今作はNYからロンドンへ向かう乗り物や、エージェントHの愛車のサイドミラーやドア、ホイールに装備された武器など、マニアも唸る描写をあちこちに発見! 「こんなところから、あんな武器が出てくるの!?」という、驚きと奇想天外さで楽しませてくれるはずだ。会話やエイリアンのキャラが生むユニークなノリという、MIBらしさも健在なので、シリーズファンも納得の出来栄えだろう。ちなみに、本作は“3Dらしさ”を体感できるビジュアル設計なので、3D版で観ることをオススメしたい。
『ウエスト・サイド・ストーリー』
製作年/2021年 原作/アーサー・ローレンツ 製作・監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/トニー・クシュナー 出演/アンセン・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、デビッド・アルバレス
舞台は1950年代のNY。開発が進むマンハッタンのウエスト・サイドで、プエルトリコ移民のシャークスと、ポーランド系のジェッツという、若者グループの抗争が激化する。シャークス側のマリアと、ジェッツ側のトニーが一瞬で惹かれ合ったことで、彼らは切実な運命をたどることに……。あの『ロミオとジュリエット』を基にしたオリジナルに忠実なドラマが展開していく。
NYの街をスケール感たっぷりにとらえた映像や、ミュージカルシーンの圧倒的な迫力と完璧なカメラワーク、決闘シーンのリアルな壮絶感など、全編、スピルバーグがこれまでのキャリアをつぎこんだような堂々たる演出に引き込まれる。アクション作品と同じく、明らかにこれは大スクリーンで体感すべき映画だ。『トゥナイト』『アメリカ』などオリジナルと同じ名曲は、いま改めて聴いてもまったく古さは感じないから不思議! この新作で特にオススメのナンバーは『クール』で、1961年の映画の同曲は、あのマイケル・ジャクソンにも影響を与えた。タイトルどおり超クールに、カッコよく進化しているので楽しみにしてほしい。主人公2人の純粋ながら過酷なラブストーリー、人種問題で世界の“分断”を問うテーマを、ミュージカルというエンタメとして現代の観客に届けるという、巨匠の魂が込もった力作だ。
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
製作年/2022年 製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー 製作総指揮・監督・脚本/コリン・トレボロウ 出演/クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニール
恐竜パニックの醍醐味が存分に味わえる!
“パーク”から“ワールド”へ名前を変えつつ、基本的に恐竜たちが生息するテーマパークや島がメインだった『ジュラシック』シリーズだが、今回は舞台が世界規模へと広がる。スケールアップという点では異常事態だ。前作での火山爆発をきっかけに恐竜たちは人間社会に放たれてしまい、日々のニュースでも恐竜と人間の遭遇が報じられ、希少な恐竜は闇取引されるようになった。恐竜のDNAを使った研究で世界を動かそうとする企業も現れ、そのバイオシン社が物語の重要ポイントとなる。前2作からの主人公、オーウェンとクレアは、クローンから生まれた14歳の少女メイジーと山奥で生活していたが、恐ろしい陰謀に巻き込まれていく。アメリカ各地や、地中海のマルタ島での攻防は、想像を超えた場所へたどり着き……。
完結編ということで、シリーズの“レジェンド”が再集結。第1作『ジュラシック・パーク』の3人の博士が、同じキャストで再会を果たし、それぞれの知識と経験を使って大活躍。29年ぶりの3ショットにシリーズファンは胸が熱くなるはず。アクションに関しても雪原や大海原、世界遺産の街並みなど、恐竜たちの出現シーンは、過去のどんな映画でも観たことのないビジュアルに結実。CGはもちろんだが、要所ではアニマトロニクス(動くロボットによる実写)も駆使され、第1作から続くスピリットに感動する。そしてこれまで何度か登場の噂があった“最強”といわれる恐竜、ギガノトサウルスが満を持しての大暴れ! その重量級バトルに圧倒されつつ、恐竜キャラクターにも思わぬ感動が用意されている。
『フェイブルマンズ』
製作年/2022年 製作・監督・脚本/スティーヴン・スピルバーグ 出演/ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル
少年スピルバーグが味わう挫折と喜び
主人公はスピルバーグ自身をモデルにした、サミー・フェイブルマン。少年時代、“暗い場所は好きじゃない”と映画館を恐れていた彼が、両親に半ば強引に連れて行かれ、初めて観た映画に心から夢中になってしまう。そんな“原点”が鮮やかに描かれる冒頭から、やがて巨匠になる才能の原風景に、われわれ観客も寄り添っていく演出は、さすがスピルバーグだ。
8㎜カメラでの撮影の虜になったサミーは、10代になると友人と協力して本格的な作品を撮るようになるが、実際にスピルバーグが作った西部劇や戦争映画が当時のままに再現され、その本格的な撮影風景に驚くばかり。しかもこれらの作品が後の大傑作の基礎になっていたりして、スピルバーグ映画を観てきた人には感涙モノである。
サミーの家族も、実際のスピルバーグと近い設定になっており、とくに両親との関係はドラマチックに胸に迫ってくる。子供時代にはわからなかった両親それぞれの複雑な事情や秘密にふれ、大人として成長する主人公に共感せずにはいられない。両親の離婚や学校でのいじめなど、屈折した部分も真っ直ぐ見据えているので、感動も大きくなる。大好きな何かを発見した瞬間の喜び。それを将来の職業にしたいという夢。そして家族や仲間との絆……。
ハリウッドの巨匠の物語ながら、誰もがどこかに自分の人生のターニングポイントを見つけ、重ねられるのも『フェイブルマンズ』の魅力。そしてスピルバーグは、自身の青春ストーリーをどんなエピソードで締めくくったのか? 思わぬ方向から心を揺さぶるクライマックスが待っている。
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
製作年/2023年 製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス 監督/ジェームズ・マンゴールド 出演/ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、マッツ・ミケルセン
ハリソン版インディ最後の勇姿!
15年前の前作(『インディ・ジョーンズとクリスタル・スカルの王国』)は1957年が舞台だったが、今回は1969年。役のインディ、および演じるハリソンとも、年齢に合わせた設定なのがナチュラル。考古学を引退しようと考えていたインディだが、突然目の前に現れた親友の娘、ヘレナの告白によって、冒険心がめざめる。
インディが“運命のダイヤル”と追い求めていた秘宝の手がかりが見つかったのだ。その秘宝を巡って、第二次世界大戦中に因縁のあった相手との激しい争奪戦が繰り広げられる。映画の冒頭は1944年のシーン。そこには今より若いハリソンのインディが! 過去のシリーズの顔の映像が信じられないほど違和感なく合成され、懐かしさとともに物語に没入してしまう。そこから二転三転のアドベンチャーに、映画の王道を実感する人も多いだろう。
列車や飛行機、クルマに馬、トゥクトゥクまで、あらゆる状況が使われ、アクション映画としてのサービス精神も満点。なかでもモロッコでのチェイスは、過去のインディ映画とも違うスピード感と目線で、うれしいサプライズかもしれない。今年81歳になるハリソン・フォードだが、インディ得意のムチさばきは相変わらず名人芸だし、過酷なスタントも衰えぬ身の動きでこなし、さすがの一言。前作『クリスタル・スカルの王国』でも秘宝のパワーがぶっとんでいたが、今回も期待を裏切らない規格外。この豪快さ、大胆さこそ、インディ・ジョーンズ映画の持ち味だった……と納得してしまう!
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』
製作年/2023年 製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ 製作/マイケル・ベイ 監督/スティーブン・ケイプル・Jr. 出演/アンソニー・ラモス、ドミニク・フィッシュバック、ルナ・ローレン・ベレス、ピーター・カレン、ロン・パールマン
信じがたいサイズの強敵に立ち向かう!
タイトルに“ビースト覚醒”とあるように、今回は“ビースト”が登場する。これは1990年代に人気になったアニメシリーズ『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』で活躍した、ゴリラやチーター、サイなど猛獣がロボットにトランスフォームする種族。その一派である“マクシマル”が、おなじみのオプティマスプライム、バンブルビーら“オートボット”と共闘し、信じがたいサイズの強敵に立ち向かう物語。
これまではクルマや飛行機がロボットと化すプロセスだったが、今回は実写で野獣=ビーストの変身が映像化され、そこだけでも大スクリーンで目撃する価値は大。NYのブルックリンではじまるバトルは、ペルーのジャングルや、世界遺産のマチュピチュ遺跡などへ移っていき、スケール感でも圧倒する。
舞台となる時代は1994年。当時のカルチャーも見どころで、オートボットの新キャラ、ミラージュに変身するのがポルシェ911。そのほかにも日産スカイラインGT-Rなど、90年代の車種が印象的に使われ、クルマ好きには必見だ。
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photo by AFLO