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CULTURE カルチャー

2023.06.23

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~
『インディ・ジョーンズ』シリーズが映画界に残したものとは? Vol.18【後編】

 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)

『レイダース』の大成功を受け、1984年に作られた第2弾が『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』だ。物語の時系列でいうと、こちらは前作の前日譚に当たる1935年。当時、アジアきっての国際都市として繁栄を極めていた上海の華やかなクラブからはじまり、邪教集団がうごめくインドの山奥まで突入していく。元ネタとなったのは、ルーカスが愛する19世紀のインドを舞台にした冒険活劇の古典『ガンガ・ディン』(1939年/監督:ジョージ・スティーヴンス)だというのは有名な話。 

 
 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)

その中でインディの小さな相棒である戦災孤児、ショート(愛称ショーティ)を演じたのがキー・ホイ・クァンだ。ニューヨーク・ジャイアンツのベースボール・キャップ(1919年モデル)を被った元気いっぱいの少年で、何度もインディの命を助ける凄いヤツ。やんちゃなファイトシーンなどは、いまの目で観ると逆に『エブエブ』のクァンの姿と重なったりするのが面白い。またこの作品では、ヒロイン役のわがままで気の強い歌手ウィリー(ケイト・キャプショー)とインディのコミカルな恋愛要素も大きい。秘境への探検とラヴコメ(スクリューボール・コメディとも言う)の融合は、ハンフリー・ボガートとキャサリン・ヘップバーンが主演した『アフリカの女王』(1951年/監督:ジョン・ヒューストン)あたりが参照先かと考えられる。
 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)

もちろん映画全体としては、さらなる高速のジェットコースターぶりを発揮。インディ、ショーティ、ウィリーの三人が墜落中の飛行機からゴムボートで脱出。そこからソリのように雪山の急な斜面を滑り、崖から落下して、川へボチャン!――という序盤のアクションから圧巻で、“一難去ってまた一難”の展開が続く。”魔宮”の中はまるでお化け屋敷だが、終盤のトロッコなんか完全にジェットコースターそのまんま。そして残酷描写がなかなかエグい。『ジョーズ』(1975年)や『ジュラシック・パーク』(1993年)、『プライベート・ライアン』(1998年)など、ときにスラッシャーばりの切れ味を見せるスピルバーグの裏の本領発揮も確認できる。

主人公がインテリのわりに、ひたすら“面白い”という点だけに集中した頭からっぽにして楽しめるエンタメの代表にして典型例だが、映画史や文化史におけるツメアトにおいて、以上のシリーズ初期2作は極めて重要である。まずはアクション・アドベンチャーの新しい黄金形を提示し、ブレンダン・フレイザー主演の『ハムナプトラ』シリーズ(1999年~2008年)などのフォロワーやパロディーを数々生んだこと。そして何より、ジェットコースター・ムービーのクラシックとしての偉大さ。物語としての深みや整合性より、まずは観客にライドする感覚を味わわせること。この設計思想は映画の枠を超え、ディズニーランドやディズニーシー、USJなどテーマパークのアトラクションや、ゲームなどにも多大な影響を与えている。
 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)

とはいえ、以降のシリーズ続編も充分に観応えあり。筆者が偏愛しているのは第3弾の『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)。これは世間でイメージされている三部作の完結編というより、実際はスペシャル番外編といった趣だ。序盤では10代の頃の若きインディの姿が描かれ、演じているのは23歳で夭折した伝説の俳優、リヴァー・フェニックス(1970年生~1993年没)である。当時18歳のフェニックスは、『スタンド・バイ・ミー』(1986年/監督:ロブ・ライナー)や『旅立ちの時』(1988年/監督:シドニー・ルメット)で青春スターのトップに立った頃で、ハリソン・フォードとは『モスキート・コースト』(1986年/監督:ピーター・ウィアー)で親子役として共演。本作では伝統的な列車アクションをこなしている。
 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)

その回想パートをプロローグとして、1938年を舞台にした本編では、スピルバーグの『007』願望が露骨に炸裂している。なんと初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーが、インディの父親であり同じく考古学者のヘンリー・ジョーンズを演じているのだ。彼とハリソン・フォードの笑える掛け合いを軸に、スペインのタベルナス砂漠からイタリアのヴェニス、ヨルダンのペトラ遺跡など世界を股に掛けたロケーション撮影を敢行。ボンドガールに当たるエルザ(アリソン・ドゥーティ)はそっちのけで、“父親と息子”メインのバディものとして楽しく魅せていく。全編に良い具合の抜け感というか、リラックスした大人の映画の味わいがあり、スピルバーグもこの作品の撮影中は最高の気分だったと語っている。特にショーン・コネリーとハリソン・フォードの絶妙な化学反応は想い出深いものになったそうだ。
 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)

この『最後の聖戦』を持ってシリーズは一旦完結するはずだったが、そもそも配給元のパラマウント・ピクチャーズとは5作公開するという契約を結んでいたらしい。そのせいかABCのテレビシリーズ『インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険』(1992年~1993年)になんとなく延長したものの、そこから歳月は流れ、やがて2008年――。なんと19年ぶりというタイミングで、続編『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』が登場した時は誰もが驚いた。ハリソン・フォードも主演を続投し、監督はスピルバーグ御大自らが手掛けるという“本気の姿勢”も話題を呼んだ。
 

 
インディ・ジョーンズ
『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)

ただし内容的にはこれまでになく賛否が分かれ、特に核実験の場に直面したインディが冷蔵庫に隠れて助かるという安直な描写が物議を醸し出したりもした。しかし、それでも興行収入は全世界で7億8千ドルというシリーズ最高値を記録し、インディ・ジョーンズの人気が現在進行形であることを堂々証明したのだ。

そこからさらに15年ぶりとなる最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』がいよいよ公開。すっかりご長寿キャラとなったインディだが、今回スピルバーグはルーカスと共に製作に回り、監督はジェームズ・マンゴールド(1963年生まれ)に交代。『LOGAN/ローガン』(2017年)や『フォード vs フェラーリ』(2019年)の名手である。果たしてその出来映えはどうなっているのか? 『フォートナイト』のゲームキャラとしてインディを知ったウチの小学生の息子も連れて観に行きたいものである。(前編はこちら) 

 

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』
製作年/1984年 原案・製作総指揮/ジョージ・ルーカス 監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/ウィラード・ハイク、グロリア・カッツ 出演/ハリソン・フォード、ケイト・キャプショー、キー・ホイ・クアン

『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』
製作年/1989年 原案・製作総指揮/ジョージ・ルーカス 監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/ジェフリー・ボーム 出演/ハリソン・フォード、ショーン・コネリー、アリソン・ドゥーディ、リヴァー・フェニックス

『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』
製作年/2008年 原案・製作総指揮/ジョージ・ルーカス 監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/デヴィッド・コープ 出演/ハリソン・フォード、ケイト・ブランシェット、シャイア・ラヴーフ
 

 

 
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文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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