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CULTURE カルチャー

2023.06.23

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~
『インディ・ジョーンズ』シリーズが映画界に残したものとは? Vol.18【前編】

 

 
レイダース
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)

ハリソン・フォード(1942年7月13日生まれ)、80歳。しかしいま再び、インディ・ジョーンズが熱い――! こんな時代が来るなんて夢にも思わなかったな。

2023年3月に催された第95回アカデミー賞授賞式は、オスカー7冠獲得の『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)旋風が吹き荒れたことが最大の話題となった。そんな同作で助演男優賞に輝いたのがキー・ホイ・クァン。彼は12歳の時、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年/監督:スティーヴン・スピルバーグ)に準主役級で出演したのが子役としての本格デビューだったのだ。そして彼の感動の受賞のあと、作品賞のプレゼンターとして登壇したのが、なんとインディ・ジョーンズ役のハリソン・フォード。また会場のドルビーシアターには、主要7部門ノミネートの『フェイブルマンズ』を引っ提げた巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督までいる!
 

 
実に39年ぶりとなる『魔宮の伝説』組の再集結は素晴らしく幸福な光景だったのだが、一方で思わず「番宣か?」と邪推してしまったのは筆者だけではあるまい。というのも、久々のシリーズ最新作にして第5弾『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(監督:ジェームズ・マンゴールド)が間近に控えているからだ。同作は今年5月、第76回カンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され(要は昨年第75回カンヌにおける『トップガン:マーヴェリック』枠である)、日本でも全米と同じく6月30日(金)から劇場にて全国ロードショー公開となる。
 

 
レイダース
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)

インディ・ジョーンズというキャラクターについては説明不要だろう。本名はインディアナ・ジョーンズで、愛称がインディ。名門プリンストン大学で教授を務める、やたらかっこいい考古学者にして、命知らずの冒険家。中折れハットにラフなサファリシャツ、ワークブーツやレザージャケットを合わせた独特のスタイルで、鞭使いの達人。ただしヘビが大の苦手。
 

 
『フォートナイト』などゲームのスキン(キャラクターアイテム)としても使用されているので、彼のことは映画版を観たことのない子供でも知っていたりする。E.T.とかグレムリンなどは懐かしキャラ扱いなのに、インディ・ジョーンズの知名度はバリバリ現役だ。まさしく時代もクリーチャーも超えたスーパーアイコンなのである。

そんな彼が初登場したシリーズ第一作は、1981年の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』だ。監督はもちろんスティーヴン・スピルバーグ。製作会社はジョージ・ルーカス率いるルーカスフィルム。ハリウッドの両雄、スピルバーグとルーカスの初タッグとなった一本という意味でも記念碑的な作品である。
 

 
レイダース
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)

ちなみに原案はルーカスと、『ライトスタッフ』(1983年)や『存在の耐えられない軽さ』(1988年)などの監督として知られるフィリップ・カウフマンの共同。脚本は『白いドレスの女』(1981年)や『再会の時』(1983年)などの監督でもあるローレンス・カスダンが手掛けている。いま見ると座組みにはビビるほどのビッグネームが並んでいるのだ。ジョン・ウィリアムズ作曲のおなじみのテーマ曲『レイダース・マーチ』も、もちろんこの作品で誕生した。

内容に関しては、まずルーカスが提案した「自分が少年時代に親しんだB級連続活劇を現代的に再生したい」というコンセプトが基本となった。そしてスピルバーグのほうは、『007』みたいな映画を作りたいという希望があったらしい。そこで冒険家版ジェームズ・ボンドのような考古学者なのにプレイボーイの色男、インディ役に、『スター・ウォーズ』旧三部作(1977年~1983年/監督:ジョージ・ルーカスほか)のハン・ソロ役でブレイク中のハリソン・フォードが抜擢されたという次第。ちなみにフォードとルーカスは『アメリカン・グラフィティ』(1973年)からの長い付き合いで、フォードのほうが2歳年上である。
 

 
レイダース
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)

お話は1936年、第二次世界大戦が始まる数年前の時代設定。大学教授にして凄腕トレジャーハンターのインディと、ナチスドイツの悪い奴らが、ドラゴンボールばりに無敵の力がもたらされるという秘宝“聖櫃”(アーク)をめぐって争奪戦を繰り広げるというもの。

大人が主人公という以外は少年ジャンプみたいな物語なので、とにかく「観れば分かる」明快さ――文字通りの理屈抜きに楽しめる痛快娯楽映画だ。しかも当時のスピルバーグは前作『1941』(1979年)の興行的失敗という負い目もあったため、なにがなんでもバカウケしてやるという、万人に向けた面白さに賭ける気合と意気込みがびんびんに伝わってくる。
 

 
レイダース
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)

本作は2021年の3月に公開40周年企画として4DX版が限定公開されたりもしたが、確かにこれほど臨場感や体感性にポイントを置いた上映形態がふさわしい映画もない。インディが巨大岩に追っかけられたり、馬からトラックへ乗り物を変え、さらにUボートの外側にしがみついたり、数々のデストラップやピンチをぎりぎりクリアしていく怒涛の展開。実際、“ジェットコースター・ムービー”という言葉は、この『レイダース』から使われるようになったというのが定説。ちなみに劇中に登場するドイツ潜水艦Uボートは、西ドイツ映画『U・ボート』(1981年/監督:ウォルフガング・ペーターゼン)の撮影に使われたものを借用したそうだ。(後編に続く) 

 

『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
製作年/1981年 原案・製作総指揮/ジョージ・ルーカス 監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/ローレンス・カスダン 出演/ハリソン・フォード、カレン・アレン、ポール・フリーマン、ジョン・リス=デイビス
 

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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