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CULTURE カルチャー

2023.06.10

アメコミ映画界をリードする鬼才!
ポジティブとネガティブが融合する監督ジェームズ・ガンの世界とは!?

 

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

現在公開中の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』で、マーベル・シネマティック・ユニバースの人気シリーズを完結させたジェームズ・ガン監督。今後はマーベルのライバルであるDCスタジオの共同会長兼共同CEOとして、全DCヒーロー映画のクリエイティブ面を統括する立場となり、新作映画『スーパーマン:レガシー』の脚本と監督を務めることも発表されている。
 

 
いわばアメコミヒーロー映画界隈の横綱的な顔役になったわけだが、昔からガンを知るファンは、これほどの立身出世など想像もしてなかっただろう。というのも、脚本家、映画監督として活躍し始めたキャリア初期のガンは、メジャーとは真逆の存在だったのだから。
 

 

『スリザー』のプレミアに出席するジャームズ・ガン(写真右)

ジェームズ・ガンは1970年生まれの52歳。若い頃はB級C級を飛び越えて“Z級”と呼ばれた超低予算のジャンル映画を量産するトロマ・エンターテインメントで修行を積み、1996年の『トロメロ&ジュリエット』で初脚本を手がけている。正式な監督デビューは2006年の『スリザー』で、トロマ出身者のイメージにふさわしい不謹慎かつグロテスクな描写が満載のB級SFホラーコメディだった。
 

 

『スーパー!』(2010年)

さらに監督第二作の『スーパー!』(2010年)は、神の啓示を受けたと信じるヤバい中年男が自分はヒーローだと思い込み、悪党認定した連中をパイプレンチで殴りまくるブラックコメディ。無名時代に脚本と出演を兼ねた『MIS II メン・イン・スパイダー2』(2000年)も、三流ヒーローが集ったポンコツチームのろくでもない日常を描いたパロディ映画で、つまりガンは、正統派のアメコミヒーローに後ろ足で砂をかけるような作品ばかり手がけてきたわけだ。マーベルが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)の監督に大抜擢したことは、限りなく無謀に思えるウルトラC的人事だったのである。
 

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)

そもそもガンは天性の皮肉屋として、人間の暗い側面に注目し、妬みや嫉み、自己嫌悪や破壊衝動に惹きつけられてきた。『スリザー』や『スーパー!』がカルト的な人気を獲得したのは、ユーモアのすき間から心の闇がにじみ出ていたからともいえる。SNSにヘイトに満ちたたちの悪いジョークを書き込んでいた過去を掘り起こされ、(後に撤回されたとはいえ)マーベルから解雇される騒動まで引き起こしたことも、個人的な不遇感やルサンチマンの発露だったと考えると理解しやすい。
 

 

『LolliLove(原題)』(2004年)では、製作総指揮・脚本(クレジット無し)・出演を兼任

初期の『スリザー』と『スーパー!』には、愛する人との関係が築けないという不安感が暗い影を落としている。この両作には、非常に似通ったシーンが描かれているのも興味深い。『スリザー』でマイケル・ルーカーが演じた宇宙生物に寄生される夫も、『スーパー!』でレイン・ウィルソンが扮したうだつのあがらない中年男も、妻にセックスの誘いを拒絶されたことで「愛を失った」と思い込むのだ。

夫婦の間で話し合えば解決するようなささいな行き違いに、極端なほどネガティブに反応をしてしまうのは、ひとえに自己肯定感の低さゆえ。『スリザー』ではその弱さを宇宙生物につけこまれて怪物化し、『スーパー!』では「正義のため」という妄想に憑かれて暴力衝動に身を任せる。表面上だけ見れば『スリザー』の夫は倒すべき“邪悪なモンスター”で、『スーパー!』の主人公は“正義の味方”なのだが、孤独に苛まれて愛情を渇望している点は同じであり、同じコインの裏と表なのである。
 

 

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)

実は卑屈さや自己嫌悪の感情は、ガンが描くほとんどのキャラクターに見て取ることができる。それは初期のダークな作品でも、MCU以降のメジャー大作でも変わらない。ガンには、洗練潔白な善人は極力排除し、善に転ぶか悪に転ぶかわからない人ほど愛でる傾向がある。自分や他人への拭うことのできない不信感は、ガンの映画作家としてのアイデンティティと不可分であり、みっともなさや弱さをさらけ出す姿勢こそが、ガンを“信頼にできる映画作家”足らしめているといえるだろう。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』で感慨深かったのは、ガーディアンズの面々が、自己嫌悪や自己否定から脱却する物語になっていたこと。はみ出し者の寄せ集め集団だったガーディアンズは、しだいに疑似家族的な絆で結ばれていった。ただし、お互いに寄り添って慰め合ったりはしない。誰もがなにかしらの過去を抱えて苦しんでおり、それを解決できるのは当人自身しかいないこともわかっているからだ。だからこそ、必要なときはそばにいるし、自分の意思でそれぞれの道に別れていく決意もする。
 

 

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)

思えば『スーパー!』は、ドラッグディーラーに奪われた妻を取り戻そうとする話でもあるのだが、最終的に、救出した妻は主人公のもとを去っていく。ハリウッド的なハッピーエンドとはほど遠い、喪失も人生の一部として受け入れなければならないという寂寥感は、おそらくガン自身の離婚経験が反映されている。ガンは『スリザー』と『スーパー!』の間に最初の妻と離婚しており、そのせいで監督するはずだった大量殺戮スリラー『サラリーマン・バトルロワイヤル』(2016年)の製作を一旦取りやめるほど落ち込んだという。
 

 
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でも、主人公のクィルが、最愛の人だったガモーラはもう戻っては来ないという苦い現実を受け入れる。MCU/ディズニーの超大作というバカでかいキャンバスを手に入れようとも、決して絵に描いたようなハッピーエンディングにしなかったことは、ガンの誠実さの表れにほかならない。人生は思うようにはいかない、と骨身にしみて思い知った上で、底抜けに陽気なポジティブさにたどり着いてみせたからこそ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は最高の完結編になったのだと思っている。
 

 

 
文=村山章
text:Akira Murayama
(c) Marvel Studios 2023
photo by AFLO
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