『リディームチーム:王座奪還への道』
製作年/2022年 製作総指揮・監督/ジョン・ワインバック 出演/レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、コービー・ブライアント
屈辱の米バスケ代表をコービー・ブライアントが立て直す!
バスケットボールといえば、アメリカのお家芸。当然のごとくオリンピックでも金メダルが“常識”とされていたが、2004年のアテネ大会で、NBAのスターも出場したにもかかわらず、アメリカは銅メダルに甘んじた。相手を見くびっていた結果で、国内では大バッシングを受ける事態となる。そこから4年後の北京大会へ向けて、バスケット男子アメリカ代表チームがどのように欠点を克服したのか、そのプロセスを克明に見つめていく。
大学チームの名コーチを迎え、プライドやエゴを捨て、チームプレイに徹しようとする。そんな苦闘を、レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイドら一流プレイヤーたちが振り返るのだが、チームの要となったコービー・ブライアントは2020年に事故死したため、当時の映像のみの登場。北京での彼への熱狂など、いま改めて観ると胸が締めつけられる。過去にさかのぼって、1972年ミュンヘン大会の決勝戦の映像はかなり衝撃的。この作品、とにかくテンポが良く、挫折からの復活、クライマックスの怒涛の盛り上がり……と、ハリウッドのエンタメ大作のような構成が鮮やか。
『リターン・トゥ・スペース』
製作年/2022年 製作・監督/エリザベス・チャイ・バサルへリィ、ジミー・チン 出演/イーロン・マスク
イーロン・マスクが実現する宇宙への夢とは?
何かと話題がとぎれない、イーロン・マスク。彼がこだわり続けるのが民間人による宇宙旅行で、その宇宙開発のために立ち上げた企業が“スペースX”だ。これは、新たなテクノロジーで実験を繰り返し、ロケットを作る同社の壮大なプロジェクトを追った作品。命綱なしで断崖の登頂に挑む『フリーソロ』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、タイ洞窟の救出事件に迫った『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』を手がけた監督コンビなので、ドキュメンタリーとしての見せ方が絶妙な一本になっている。
NASAが2011年のスペースシャトル以来の国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行を模索するなか、スペースXのエンジニアたちも協力。2020年、スペースXが打ち上げたカプセル型宇宙船“クルードラゴン”が宇宙飛行士をISSまで運ぶことに成功するなど、アメリカの宇宙開発復活への道が、ドラマチックに展開。飛行士の家族の思いや、名作『アポロ13』も甦る地球帰還のプロセスなど、何度か心を揺さぶられる瞬間が用意される。人間の宇宙への夢に、素直に感動してしまう人も多いはずだが、イーロン・マスクの野望の深層心理は観ているわれわれに委ねられ、そこも本作の面白さだろう。
『Tinder詐欺師:恋愛は大金を生む』
製作年/2022年 監督・脚本/フェリシティ・モリス
マッチングアプリ詐欺の被害者が犯人を追う!
“Tinder”は人気のマッチングアプリ。多くの人は真剣に、そして純粋に恋愛の相手を探すために使っているのだが、その中には罠も潜んでいる。夢中になってしまった相手に、いつの間にか多額のお金をつぎこんでしまい、借金地獄に陥ってしまい……。そんな女性たちが素顔をさらけ出しての告白で、恋愛詐欺の実態を浮き彫りにする衝撃のドキュメンタリー。実際に送られて来たメッセージや音声、映像に、生々しい再現ドラマも加え、一瞬も飽きさせない作りに観ているこちらは引き込まれる。
相手から騙し取った大金を利用して、富豪のフリをして次の獲物を引っ掛ける。それが詐欺師、サイモンの手口。高級ホテルでのデートや、自家用機による出張同行の誘いなどで、めくるめくセレブ生活と真剣な恋愛を一瞬だけリアルに信じこませる上級テクニックに目を疑うが、ターゲットとなった女性たちも騙された時間を夢心地で回想したりする。事件そのものがセンセーショナルなうえに、人間の複雑な心理に背筋が凍ったりも!? 事件が発覚し、逮捕されたサイモンはどうなったのか。その“現在”を想像させるパートもかなりエグい!
『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』
製作年/2019年 製作・監督・脚本/クリス・スミス
大失敗となった音楽フェスの舞台裏を暴く!
個人が所有するバハマの無人島で世紀の音楽フェス“ファイアー・フェスティバル”が開催されることが発表。スーパーモデルたちが宣伝に使われ、インフルエンサーは報酬をもらってプロモーションに協力。SNSではバズり、あっという間にチケットは完売する。企画したのは、アーティストと彼らのクライアントをつなぐマッチングアプリ“FYRE(ファイアー)”を立ち上げたビリー・マクファーランド。しかし会場となる島には、来場者を迎える十分な設備は存在しない。フェス開催なんて当然、無理! しかしマクファーランドは“やるやる詐欺”で嘘をつきまくり、投資家も騙してしまう。その一部始終を描いたのが本作だ。
まったく準備もできていないのに、バハマにやって来た数百人の客たち。食事やトイレもままならず、彼らは混乱の極地に陥ってしまう。その風景はショッキングを通り越して、コメディ映画を観せられているかのよう。フェスの舞台裏以上に驚くのは、マクファーランド本人。社員たちが語るのは、想像を超える彼の実像だ。思わず周囲がついて行きたくなるカリスマ性や会話の才能を持ち、めちゃくちゃ承認欲求が高い。まさに映画の題材にふさわしいキャラクターで、呆れつつも最後は感服してしまうはず。
『イカロス』
製作年/2017年 製作・監督・脚本・出演/ブライアン・フォーゲル
自ら禁止薬物を摂取してドーピング検査を通過できるか実験する!
配信先行の作品として、アカデミー賞で初の長編ドキュメンタリー賞に輝いた、記念すべき一作。タイトルのイカロスは、太陽の光で翼が溶けて海に落ちたギリシャ神話の登場人物。かつてドーピングが発覚し、人生が失墜した自転車ロードレースのスター、ランス・アームストロングを、そのイカロスに重ねて本作を撮ったブライアン・フォーゲル監督。アマチュアのロードレーサーでもある彼が、自らの肉体を実験台にして撮影。つまり禁止薬物を摂取しつつ、ドーピング検査をパスして大会に出場しようとする。その設定だけで驚愕レベルだ。
監督に協力するのは、ロシアの反ドーピング機関の所長。しかもその所長は、ドイツのTV番組で告発されたことで、ロシア政府から目をつけられ、アメリカへ逃亡。フォーゲル監督にかくまわれる身となる。このあたりは監督も映画を撮る前は予期しなかった事態で、並みのドキュメンタリーでは味わえない超スリリングなムードへ突入。やがて所長の数奇な半生も明かされていく。ドーピングを巡るアスリートたちの実態や、国家ぐるみの計画など「こんな事実を明らかにしていいの?」というエピソードの連続で、スポーツに興味のない人も惹きつけるパワーが充満する力作。
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