張り巡らされた伏線に、驚愕の結末!『アンテベラム』
- SERIES:
- 今週末は、この映画に胸アツ!
- TAGS:
- 今週末は、この映画に胸アツ! Culture Cinema 映画5選 撮影風景
映画の魅力を紹介するのは難しい。だいたいの設定を伝えないと興味を持たれないし、かと言ってブレーキをかけずに伝えすぎると、これから観る人の楽しみを奪ってしまう。この『アンテベラム』は、できるだけ前情報を入れないで観た方がベストな作品。基本の基本だけ紹介するので、サプライズを劇場で体験してほしい。
本作の基本は、2つのストーリーが展開するという点。ひとつは、黒人たちが奴隷として働かされているアメリカ南部のプランテーション(農場)。名作『風と共に去りぬ』などでおなじみの光景の中、黒人女性のエデンが、白人に監視されながら厳しい日常を送っている。タイトルの『アンテベラム』は聞き慣れない単語だが、“内戦前”という意味で、アメリカでは“南北戦争以前”というのが一般的。そしてもうひとつは、博士号を持つ社会学者で、ベストセラー作家のヴェロニカが、幸せな家族生活を送りつつ、講演会でアメリカ南部を訪れる物語。なぜ、この2つのパートが展開していくのか……。
エデンとヴェロニカという2人の主人公。これをどちらも、ミュージシャンとしても人気のジャネール・モネイが演じている。そしてどちらのパートも、主人公を含め周囲の人物が時折、怪しげな言動をとったりする。それも、あからさまではなく、ちょっとした違和感として残るだけ。観ているこちらは、映画が張り巡らせる罠に、心地よく陶酔していく感覚だ。ジャンルとしてはスリラー、サスペンスなので、要所で恐怖感がじわじわと迫りつつ、隠された真相にどこで気づくかがポイントとなる。監督のコンビは、本作が初の長編映画ながら、オープニングの長回しから堂々たる演出で引き込み、スリルと謎を加速。結末にたどりついた後、仕掛けられた伏線やヒントを探すために、もう一度観たくなってしまう!
『アンテベラム』
製作・監督・脚本/ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ 出演/ジャネール・モネイ、エリック・ラング、ジェナ・マローン 配給/キノフィルムズ
2020年/アメリカ/上映時間106分
(C)2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.