『天国と地獄 Highest 2 Lowest』 黒澤明の名作を新解釈したサスペンス!
- SERIES:
- 今週末は、この映画に胸アツ!
- TAGS:
- 今週末は、この映画に胸アツ! Culture Cinema
ここ数年、日本映画がグローバルな人気を獲得しているが、映画の歴史の中で世界中からのリスペクトが絶えない巨匠が、黒澤明。その傑作群から影響を受けたクリエイターは数多く、ゆえにリメイクの企画の“宝庫”でもある。スパイク・リー監督が、5度目のタッグとなる盟友デンゼル・ワシントンを起用して挑んだのが、1961年、エド・マクベインの小説を黒澤が映画化した『天国と地獄』だ。
2022年にも黒澤明の代表作『生きる』が、舞台をイギリスに変えて『生きる LIVING』として再生された。今回はリー監督の本拠であるニューヨークで、黒澤の名作が甦る。リー監督によると“リメイクではなく新解釈”とのこと。黒澤版では靴会社の常務の息子が誘拐犯に狙われ、間違って常務の運転手の息子がさらわれた。本作でターゲットになるのは、スタンキンヒッツ・レコードの創始者で、グラミー賞を50回受賞したという音楽界のレジェンド、デヴィッド・キング。息子のトロイを誘拐したという相手から連絡を受け、1750万ドル(約26億円)の身代金を要求される。ただし誘拐されたのは、キングの下で働くポールの息子だった。基本のストーリーは同じながら、時代や場所、人物のキャラによって、ここまでイメージが変わるとは……と驚く仕上がり。名作を“新解釈”した意味がひしひしと伝わってくる。
黒澤版で重要なシーンとして使われたのが特急の“こだま”(東海道本線の当時の特急)。今回はNYということで、地下鉄がその役割を果たす。しかもNYヤンキースのゲームや、音楽フェスティバルとも重ねられ、映画的ダイナミズムに溢れたテンションで展開。この辺り、リー監督のセンスが冴え渡る。キングの自宅が、ブルックリン橋を望む超高級タワーマンションというのも、黒澤版と同じく作品のテーマを象徴している。そして音楽業界が背景ということで、人気ラッパーのエイサップ・ロッキーも重要な役で出演。キング役のデンゼルと堂々と渡り合うシーンは、本作でも最大の見どころかも。ロッキーはサウンドトラックにも参加。そうした音楽の新鮮さに加え、GPSによる捜査、SNSの炎上など現代ならではのアップデートが施されつつ、面白いドラマは時代を経ても色褪せないと実感させるのが、この“新解釈版”だろう。
Apple Original Films『天国と地獄 Highest 2 Lowest』9月5日より配信
製作総指揮・監督/スパイク・リー 脚本/アラン・フォックス 出演/デンゼル・ワシントン、ジェフリー・ライト、エイサップ・ロッキー、イルフェネシュ・ハデラ 配信/Apple TV+
2025年/アメリカ/視聴時間133分
Apple TV+にて9月5日(金)より配信開始!
画像・映像提供 Apple