観たい映画を選ぶ際は、ある程度、どんな展開になるかを情報で知っておくこともポイントになる。ただし、ストーリーとして予想不能の方向や事態へ連れて行かれる作品は、できるだけ最初の基本だけ知って向き合った方がいい。この『ロスト・フライト』は、そんな一本だ。
旅客機が操縦不能となり、乗客・乗員がサバイバルを強いられるアクション作品。新年を迎え、シンガポール発、東京経由のホノルル行きのトランスブレイザー社119便が飛び立つ。乗客はわずか14人のガラガラ状態。しかし離陸直前に移送中の犯罪者が搭乗することに。その犯罪者と付き添いは最後部に座る。機長のブロディはホノルルで暮らす愛娘に一刻も早く会いたいので定刻のフライトを目指すものの、折からの悪天候のため、フィリピン上空で嵐と落雷に巻き込まれ、飛行機の電気系統は機能不全になってしまう……。この後の展開は、すでに本作の公式サイトのほか、さまざまな記事でも紹介されているものの、できれば情報を遮断し、これ以上先は知らないで観た方が確実にスリルとサプライズを満喫できると断言したい。
まずこの映画、飛行機周りの映像がリアリティ満点。コックピットの雰囲気や、乗員たちの表情や手さばきはもちろん、消息不明事件へのLCC航空会社上層部の対応など細部の表現がしっかり作られた印象だ。だから中盤からの急展開にも説得力がもたらされるし、何より機内での混乱シーンでは、その場にいるような恐怖が伝わってくる。乗客の中に犯罪者がいる点も当然ながら、人々の運命を左右するうえで効果的。そして本作に最大の説得力を与えるのが、ジェラルド・バトラーなのは間違いない。『エンド・オブ・ホワイトハウス』に始まる3部作での大統領警護官が当たり役になったように、戦うと“微妙に強い”主人公の生死ギリギリの奮闘で、他の俳優の追随を許さない存在になったバトラー。今回の機長では、人間味あふれる魅力も含め最高のハマリ役として、われわれ観客を未知のパニックの領域へと連れて行ってくれる!
『ロスト・フライト』11月23日公開
原案・脚本/チャールズ・カミング 製作・出演/ジェラルド・バトラー 監督/ジャン=フランソワ・リシェ 出演/マイク・コルター、ヨーソン・アン、ダニエラ・ピネダ
Photo by AFLO