映像の美しさと人生の哀歓に酔う映画『エンパイア・オブ・ライト』は大人だからこそ胸に響く感動作!
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一本の映画を観て、その記憶として残るのは何だろう? 心に引っかかった物語やテーマ、観た後の興奮……などいろいろ挙げられるが、ひとつのシーンがまるで“一枚の絵”のように脳裏にやきつくことがある。この『エンパイア・オブ・ライト』は、まさにそんな一本になるのではないか。
舞台となるのは、1980年代、イギリスの海沿いにある町。地元住民に愛され続けてきた老舗の映画館、エンパイア劇場に、新たなスタッフとしてスティーヴンが加わる。長年その劇場で働いていたヒラリーは、若さに溢れ、性格も前向きなスティーヴンにゆっくりと心を開いていく。ヒューマンなタッチでつづられる温かく繊細なストーリー。ポイントとなるシーンで、映像のあまりの美しさに陶酔させるのが本作の魅力だ。
大晦日の夜に、ヒラリーとスティーヴンがエンパイア劇場の屋上で見上げる花火。真っ暗な映画館の中に灯るオレンジ色の照明。長く使われなかった部屋に差し込む優しい光……。本作も含めてアカデミー賞ノミネート、なんと16回(うち受賞は2回)という、映画界最高峰のカメラマン、ロジャー・ディーキンスにとっても、これはトップレベルの仕事だと断言したい。
ため息モノの映像とともに、ヒラリーとスティーヴンの恋が進行するのだが、2人は年齢差があり、人種も違うので、やるせない状況もたっぷり。しかもヒラリーは過去のトラウマを抱え、エンパイア劇場の支配人にセクハラ的な行為を強いられるなど、過酷なシーンも用意される。さらに80年代イギリスでの人種差別も、黒人のスティーヴンにのしかかっていく。
そんなシビアな展開に、タイトルどおり光(ライト)を差し込むのが“映画”だ。エンパイア劇場にやって来る客たちの顔だけで、観ているこちらも幸せな気分になるはず。そして80年代の名作の数々が登場し、中でもイギリス映画でアカデミー賞作品賞に輝いた『炎のランナー』のエピソードは胸アツだ。映画の秘めた力や、「人生は心の在り方」など散りばめられた名セリフで感動がじわじわ高まっていく。
『エンパイア・オブ・ライト』2月23日公開
製作・監督・脚本/サム・メンデス 出演/オリヴィア・コールマン、マイケル・ウォード、トビー・ジョーンズ、コリン・ファース 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
2022年/イギリス・アメリカ/上映時間115分
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