あまり前評判や話題性を気にせずに、何気なく観たら面白かったーー。それも映画の大きな魅力で、そうした“発掘”は、むしろ予想以上の喜びとなる。『炎のデス・ポリス』は、この系統の一作だろう。
日本公開タイトルに“デス・ポリス”とあるとおり、本作は警察が舞台。アメリカの砂漠地帯にポツンと建つ警察署で、衝撃と壮絶を極めた一夜が描かれる。メインの登場人物は4人。暴力事件を起こして連行されてきた、前科22犯の詐欺師テディ。泥酔してクルマで事故を起こしかけ、留置所に入れられた殺し屋のボブ。警察署でただ一人の女性である新人警官のヴァレリー。そして風船を持って現れる怪しい中年男のアンソニーだ。この4人が警察署内でどんな攻防を繰り広げるのか。そこはできるだけ予備知識を入れないで観るのがオススメ。思わぬ人間関係や、サプライズのシチュエーション、そして度肝を抜くアクションが、この映画の持ち味だからだ。
監督を務めたのはジョー・カーナハン。『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』や『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』で知られる彼が、クセ者キャラたちの腹の探り合い、それぞれの得意技で相手を打ち負かす演出で冴え渡る。前半の伏線を後半で回収する手際もばっちり。タランティーノ作品に近いテイストも漂いつつ、マニアックには走らないので、痛快で観やすいのではないか。キャストでトップにクレジットされているのは、ジェラルド・バトラー。『エンド・オブ・ホワイトハウス』シリーズなど、空前の危機に孤高で闘う主人公を得意としてきた彼が、今回はいい意味で予想を裏切る怪演もみせてくれる。ほかのキャストも強烈な個性を発散しまくるが、紅一点のヴァレリー役、アレクシス・ラウダーの小気味いい活躍や、男たちを向こうに回したしなやかな動きに、アクションヒロインの未来を予感してしまうはず。
『炎のデス・ポリス』7月15日公開
監督・脚本/ジョー・カーナハン 脚本/クルト・マクラウド 出演/ジェラルド・バトラー、フランク・グリロ、アレクシス・ラウダー、トビー・ハス2021年/アメリカ/上映時間107分
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