昨年、マーベル作品として日本でも予想外の大ヒットを記録した『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』。しかしこの作品、『アベンジャーズ』などのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)には含まれない。その独自性でMCU以上にファンを獲得しつつある、マーベルのこの系統は『ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)』と呼ばれ、またひとつ新作が現れた。
今度の主人公は、モービウス。マーベル・コミックにはスパイダーマンの宿敵として登場するヴィランだ。その素顔は天才医師のマイケル。幼い頃から血液の難病と闘ってきた彼は、医学の道を志し、人工血液開発の権威となる。しかしマイケルは、さらなる実験のためにコウモリの血清を使用。自らの肉体を実験台にしたところ、驚異の身体能力や感知能力を身につけるが、本能から人間の血液を求めるようになっていく……。人間が別の生物と一体化する『ザ・フライ』のような衝撃、そして何より、他人の血を吸うヴァンパイアの恐怖が全編を支配する、超ダークなアクションムービー。『ヴェノム』2作と同じようなドキドキ感を与えつつ、よりシリアスな方向に突き進んだ印象だ。
設定はダーク&シリアスなのだが、マーベル作品だけあって、アクション演出はド派手。モービウスと化したマイケルの目にも留まらぬスピーディな動きや、スペクタクルな飛行を、コミック世界も意識した斬新なビジュアルで描いていく。マイケルの瞳の変化など、細部もユニーク。少年時代の友人で、マイケルと同じく難病を抱えるマイロとの関係や、人間と“怪人”の狭間でのマイケルの葛藤もドラマチックで、このあたりはオスカー俳優、ジャレッド・レトの実力の見せどころ。ジャレッドはDCコミックの映画『ジャスティス・リーグ』でジョーカーも演じており、変幻自在の才能に改めてアッパレだ。そしてSSUとして、スパイダーマンやヴェノムとのリンクも見え隠れするので、『モービウス』の世界が今後どう広がっていくか期待を高めてほしい。
『モービウス』 4月1日(金)公開
監督/ダニエル・エスピノーサ 脚本/マット・サザマ/バーク・シャープレス 出演/ジャレッド・レト、マット・スミス、アドリア・アルホナ、ジャレッド・ハリス、アル・マドリガル、タイリース・ギブソン 配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2022年/アメリカ/上映時間104分
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photo by AFLO