2020年日本で“WRC”開催!
世界が熱狂する壮絶ラリーは一体なにが面白いのか?
2020年は、東京2020オリンピック・パラリンピック開催など、とにかくスポーツから目が離せない年。そんな中、モータースポーツのジャンルでもビッグなイベントが予定されているってこと、知ってた? それが2020年11月19日~22日に愛知・岐阜エリアで開催される、WRC(世界ラリー選手権)第14戦“ラリー・ジャパン”だ。
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WRCといえばF1同様、その盛り上がりは世界最高峰。だが、日本で10年ぶりの開催が叶うとはいえ、正直何が面白いのかよくわからないという人もいるだろう。そこで今回は、WRCの“にわかファン”になれる(?)、いくつかのポイントをご紹介したい。
1.応援したくなるチームがある!
2.楽しみな日本人ドライバーの参戦!
3.迫力の走りがラリー・ジャパンで体感できる!
4.“フェス感覚”で楽しむ観戦スタイルがいい!
5.WRCの興奮をGRヤリスでも!
2019年は日本でラグビーワールドカップが開催。多くの興奮と感動を巻き起こしたのは記憶に新しいところだが、その中心となったのは日本代表チームの快進撃だった。汗と泥にまみれて、ひたむきに戦い続けた結果は、大会初のベスト8入り。本当に強いからこそ勝利への期待が高まったわけで、いくら日の丸を背負っていても「強国にはまるで歯が立たない」となると、あれほどの盛り上がりには至らなかったかも。
では、WRCはどうかというと、ここにも勝利が期待できる日本のチームがある。それが“TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team”。〈トヨタ〉がWRCを制すべく結成したワークスチームだ。
2019年のラリー・フィンランドで優勝したときのひとコマ
実はこのチームが、長いブランクを経てWRC参戦を再開したのは2017年。翌年にはなんと、マニュファクチャラーズタイトル(チーム年間優勝のこと)を獲得。さっそくポテンシャルの高さを見せつける結果となった。ところが2019年は、ドライバー/コ・ドライバー(助手席でドライバーをナビゲートする役割)のチャンピオンに、ワークスチームの一員であるオィット・タナック選手/マルティン・ヤルヴェオヤ選手が輝いたものの、マニュファクチャラーズタイトルは、〈ヒュンダイ〉にその座を譲り2位に。2020年に雪辱がかかっているのは言うまでもなく、〈トヨタ〉は2020年に向けて全ドライバーを刷新。エースドライバーに2013~2018年までシリーズ6連覇を果たしたセバスチャン・オジェ選手を迎えるなど、勝利に対してすでに鼻息が荒い。
表彰台中央がオィット・タナック選手(右)/マルティン・ヤルヴェオヤ選手(左)
一方、2019年のドライバーズタイトルを獲得したタナック/ヤルヴェオヤ組は、すでに〈ヒュンダイ〉への移籍を発表。これまでチームに勝利をもたらしてきた立役者が、今度は敵にまわるという状況の中で、果たして勝利を手にすることができるのか? 俄然注目が集まっている状況なのだ。
さらに、WRCをフォローする楽しみを高めてくれそうなのが、日本人ドライバー、勝田貴元選手の存在だ。“TOYOTA GAZOO Racing”では、これまで若手のラリードライバー育成プログラムを推進してきたが、勝田選手はその育成ドライバーとして経験を積んできた1人。すでにWRCの最上位クラスデビューは果たしているものの、2020年はラリー・ジャパンを含む8戦に出場を表明。レギュラードライバーの座を勝ち取るべく、新たなチャレンジに挑んでいる。
期待のホープ、勝田貴元選手
かつてF1が日本で人気を博したとき、中嶋悟選手、鈴木亜久里選手、片山右京選手、佐藤琢磨選手、小林可夢偉選手など、日本人選手の活躍に夢を馳せた時代があった。世界のトップドライバーの中に日本人が切り込み、大活躍するシーンを見たいのはWRCでも同じこと。2020年WRCのトップカテゴリーで勝田選手はどのような走りを見せるのか。そこも大きな見どころのひとつだ。
そしてなにより、2020年秋に世界最高峰のラリーが実際に日本で見られるのは楽しい体験となるはず。というのも、『Safari Online』編集部では2019年8月に開催されたラリー・フィンランドを取材。やはり間近で体感するWRCは迫力がケタ違いだったからだ。
ちなみにWRCのひとつの大会開催期間は通常3 〜4日間。レースの総距離は約350kmにも及ぶ。勝敗は、コース上にある複数のSS(スペシャルステージ)と呼ばれるタイムアタック区間での合計タイムで決定される。だが、サーキットとは違い、当然各SSはすべて状況が異なる。舗装路あり、ダートあり。山あり谷あり、林道のような狭い道だってある。もちろん天候によっても、その状況が大きく変わってくる。
そんな中を、ラリーカーは心躍るエンジンサウンドを響かせながら、命知らずと呼べるようなスピードで疾走。これには度肝を抜かれる。
特に観客が沸き上がるのが、なんといってもジャンピングスポットだ。空中を矢のように飛行(!)するラリーカーが見られるチャンスはそうそうないし、誰だって思わず歓声を上げてしまうはず。また、タイトなコーナーを、土埃を巻き上げながら駆け抜ける様も圧巻。ドリフトするかグリップ走行か。そこでは各ドライバーの走りのスタイルが垣間見られるから、次々とやってくるラリーカーを見ているだけでも全く飽きることはない。そして、この興奮が日本で体感できるとなると? そう、もはや観戦に行かない選択肢はない!?
また、ラリー・フィンランドの取材で、迫力たっぷりの走り以外に「いいなあ」と思ったことがある。それは老若男女、観客がそれぞれのスタイルでラリー観戦を楽しんでいるってこと。もちろんそこには、“ラリー好き”とひと目でわかる熱狂的なファンも数多くいる。でも、その一方で、ちょっと遊びに来たような家族連れやカップルも多く、フィンランドの豊かな自然を背景に、折り畳みチェアに座ってコーヒーを飲んでいたり、飲み会を開いていたりする姿もチラホラ。
そんな人たちは、ストイックに戦況を見つめるのではなく、その場の雰囲気や音、まわりの熱狂を楽しんでいる感じ。そう、そんな光景はちょうど日本でもよく開かれる音楽フェスのよう。ラリーの詳しいことはよくわからないけれど、行けばそれなりに楽しい。そんな空気がラリー・フィンランドにはあった。
それにしても、ラリー好きがこんなに多いのかと思ったのも事実。特にラリー・フィンランドでは、“TOYOTA GAZOO Racing”を応援する人が圧倒的だ。で、その理由のひとつに挙げられるのが、“TOYOTA GAZOO Racing”のラリーカーが“ヤリス(元の日本名はヴィッツ)”だってこと。実はフィンランドでは“ヤリス”は特に人気が高いクルマで、販売台数も常にトップクラス。フィンランド人にとってはまさに“毎日の生活の相棒”と呼べるくらい、愛される存在になっているのだ。
そうなると、自分が所有するヤリスがラリーカーとなって活躍する姿をひと目見たくなるのは当然かもしれない。WRCカーは、F1レーシングカーなどと違ってあくまで市販車がベース。このへんも各国でラリーが盛り上がる要因のひとつかもしれない。
さて、欧州で高い人気を誇るヤリスだが、日本では2019年ヴィッツから正式にヤリスに名称変更。新型ヤリスが2020年2月中旬をめどに発売が予定されている。それと同時に、話題をさらっているのが、“TOYOTA GAZOO Racing”がGRブランドとしてスープラに続いてデビューさせる“GRヤリス”だ。
このクルマは、WRCから得たノウハウを存分に投入したモデルで、普通のヤリスとは全く別モノ。すでに2010年1月に開催される東京オートサロンにて、ワールドプレミアをすることが発表されているが、ラリー好きにとっては乗らずにいられないクルマとなるのは必至。
と同時に、日本でヤリス、GRヤリス人気が高まれば、フィンランドのように自然とラリー人気に火がつくことも……。とにかくこのような状況を考えると、2020年は、日本のラリーシーンにとってはエポックメイキングな年になることは間違いない。今のうちからWRCの魅力を知っておくと、なにかと楽しいことが待っているのでは?