まるで聖地巡礼!? 〈マクラーレン〉の故郷MTCを MIYAVIが訪ねる!
英・ヒースロー空港からクルマで約30分の距離にあるMTC(マクラーレン・テクノロジー・センター)。今回その地をアーティストのMIYAVIが訪れた。以前から「自分と〈マクラーレン〉の接点は、その温度感、沸点が近いところ。また、唯一無二の存在、職人気質、やや前のめりなところも、僕が〈マクラーレン〉に憧れる理由です」と語っていたMIYAVI。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使を務めるなど、社会貢献活動にも精力的に取り組む多忙な中で、まさに念願が叶ったこの訪問。果たして彼の目には、“聖地”ともいえる〈マクラーレン〉の故郷はどのように映ったのだろうか?
敷地面積は約150エーカー。湖に囲まれた美しい景観に建つモダンな建物は、まわりの自然とも調和し、まるで現代アートの美術館のよう。ここMTCはスーパーカーの生産にともない2010年に建設され、約7年前からF1レーシングチームの作業場とともに稼働をスタート。現在はマクラーレン・プロダクション・センター(MPC)も加わり、国内外を含めて約3000人が勤務している。つまりここは〈マクラーレン〉の全てが凝縮された場所。センターを囲む湖はサステナブルな意味もあり、室内温度を年間約20度に保つ冷却装置の役目も果たしている。そこに、ミュージシャン、俳優としてもワールドワイドに活躍するMIYAVIが初訪問した。
MTCの敷地は約150エーカー(1エーカーは約1200坪)
ゲートをくぐり、大きな湖を抜けてMTCに入ったMIYAVI。さて、最初にどんな印象を持ったのだろうか?
「異次元ですね。宇宙船の中にいるような感覚? エントランスゲートをくぐって、湖から見る建物は圧巻です。まわり込んで内側に入っていく感じがレースコースやサーキットのよう。まるで時空を超えるような感じで、足を踏み入れた瞬間から気持ちが高まっていく、まさに、“ワォ”ですね」
正面入り口からMTCに入って最初に彼の目に写ったのは、大きな窓に沿って整然と並ぶ伝説のレーシングカーと7台のロードカー。レーシングカーは、もちろんブルース・マクラーレン、ニキ・ラウダ、そしてアイルトン・セナ等が乗っていたF1カーだ。
「ブルースが最初に乗っていたマシンが、ほかのなによりも最初に飾られていて、組織として原点をすごく大切にしているのを感じました。彼(ブルース・マクラーレン)からはじまった“飽くなき挑戦者”というスピリットを、より進化した形で今もなお継承している姿勢が表れているようです」
伝説のF1カーが並ぶエントランス
今回、アーティスト・リレーションシップ担当のクリス・ロートン氏がMTCを案内。MIYAVIのために、短時間で濃厚なツアーを組んでくれた。クルマの展示は時間軸に沿っており、最後には最新のハイブリッドスーパーカー“アルトゥーラ”が並ぶ。展示場を後にして有名なMTCとMPCを繋ぐ渡り廊下に入る前に、MIYAVIは意外な場所に目を向けた。
「数々のトロフィが社員のイートスペース(食堂)の横に飾られていました。社長室とかではなく、彼らが普段使うところや通る場所に歴代のクルマも含め、多くのトロフィが飾られていて、チームみんなで勝ち取ったものなのだということを示す彼らの姿勢が表れていて、すごく素敵ですよね」
多くのトロフィが並ぶ廊下
そしてMTCと製造現場であるMPCを繋ぐ地下トンネルへ。そのモダンで未来的ともいえる渡り廊下は、〈マクラーレン〉ファンにとっては既知の場所。当然MIYAVIも知ってはいたが、そこを実際に歩く。
「(MTCとMPCを繋ぐ)渡り廊下は本当に静寂で、違う惑星に一瞬でワープしたよう。内装もマイケルジャクソンとジャネット・ジャクソンの“スクリーン”っていうMVを彷彿とさせるような……。あと、廊下からマシンを組み立てているところがガラス張りの向こうに見えるのは、すごいオープンだなと。全員がそれぞれの役割を全うしながら組み上げる風景は、まさに圧巻でした」
MTCとMPCを繋ぐ地下の渡り廊下
クルマの製造工程を見学することも可能
施設を巡る中でクリスと話していたMIYAVIだが、彼にとって印象的なエピソードがあるのだとか。
「創業者であるブルース・マクラーレンが事故で亡くなったときのことです。チームを招集し、組織全体を立て直すために一度解散することになったので『当分は会社に来なくてよい。また時期が来たら知らせるから、今日で解散』と告げた次の日、全員会社に来て仕事していたんだそうです。そして、そこから〈マクラーレン〉の新しい時代がはじまった。
熱いですよね。こういう、なんだろう、気持ちで動く瞬間に、なにか物事が動くというか。聞いていて鳥肌が立ちました。みんなブルースの精神を継承し、それぞれが誇りを持って働いている。これが〈マクラーレン〉というクルマを作るチームのすごさであり屋台骨なのだ、と。そこに働く人たちの誇りと気高さ。自分たちは〈マクラーレン〉というクルマとともに歴史を作っているんだ、という自負。もちろんビジネスも大事ですが、それだけではなく、自分たちの誇りのために仕事をしている。
レース中のコックピットでのタイヤ交換も、昔は10秒前後だったのが今は3秒とか4秒レベルですよね。それって技術とチームワーク。レーサーの腕だけじゃない。チームとしての進化。これは音楽にも通じるし、忘れてはいけない。クルマを構築する多数のパーツも、その一個一個に存在意義がある。それはチームにおける人も同じです」
MIYAVI自身も、スタッフを非常に大切にしているミュージシャンである。
「もちろん厳しい部分もあると思います。でも、やっぱりお互いを高めあっていかないと意味がない。クルマも音楽もこれは一緒。彼らは今のクルマを作っているときに、もう次のクルマに必要なものが見えている。僕もアルバムが出来上がるときには、すでにもう次の作品になにが必要かっていうのが見えています。チームの中でも緊張感が必要だし、それによって僕もスタッフも成長するしね。また、僕はその成長をスタッフやリスナーにずっと示し続ける責任がある。だからこそみんながついて来てくれているんだと思うし、〈マクラーレン〉のスタッフも厳しい世界の中で日々切磋琢磨している。そこが、僕が彼らに惹かれる最大の理由のひとつです」
さて、ファクトリー見学で次に現れたのはエラ・ポッドモア氏。〈マクラーレン〉には300人のエンジニアが在籍するが、女性はわずか10人。エラもそのひとりで、マンチェスター大学でカーボンファイバーを学び、新卒で〈マクラーレン〉に入った。現在彼女は、アルトゥーラチームにおり、MIYAVIは彼女にも説明を受けた。
「かっこよかったですね。彼女からも責任感とプライドをひしひしと感じました。まだまだ男ばかりの世界の中で結果を出すというのはすごいことです。カーボンやパーツ、マテリアルに関して説明を受けましたが、大切なのはスピリッツ。女性だけが持つ特別な感性ってあると思うんです。クルマづくりの社会においても、彼女みたいな存在がこれからのスタンダードになると感じています」
アルトゥーラの若き女性エンジニア、エラ・ポッドモア氏
MIYAVIはミュージシャンだということもあり、アルトゥーラのスピーカーを担当する〈バウワース&ウィルキンス〉のエンジニアの解説もツアーに組み込まれていた。
「最初、違う会社の人たちが見学ツアーにきたのかと思っていて(笑)。アルトゥーラに組み込まれているカーステレオの音の感想も聞かれました。僕たちミュージシャンも、マスタリングとかミックスチェックするときに、自宅の音楽用スピーカーやヘッドホン、ケータイに加えて、カーステレオでもチェックします。クルマの中で音楽を聴く時間ってすごく長いし、あの密閉された空間での低音の響きや聞こえ方はほかとは全然違うので。アルトゥーラのスピーカーは12個あって、ふつうスピーカーをいくつか鳴らすと、音の波形同士がぶつかったり、お互いを消し合うこともあるんですが、そこは完璧に調整されていました」
独自の“デュアル-バランス・サブウーファー”コンセプトには、スピーカーの軽量化、中高音の精度の向上、走行に合わせて音を忠実に再現するなどの新技術が搭載されている。
「〈バウワース&ウィルキンス〉の会社も、このMTCから1~2kmの場所にあるらしく、クルマ開発・設計の初期から加われたので、スピーカーの配置場所など綿密に設定できたんだそうです。これはすごく大きいなこと。やはり現場における密でダイレクトなコミュニケーションはものづくりにおいて重要。今回のアルトゥーラにおける音の設計の場でもプライオリティが高められたそうです。実際このスピーカーのクオリティと、外の世界から遮断された場所で聴く音楽は非日常的だし、ドライビングしながら完全に自分だけの音の世界に入っていけるというのは、まさに“ワォ”な音楽体験です」
〈バウワース&ウィルキンス〉のエンジニアにスピーカーについての解説を受けるMIYAVI
そしてMIYAVIは〈マクラーレン〉を現地で運転するという体験も味わった。
「やっぱり本場イギリスで〈マクラーレン〉を運転できるというのは最高ですよね。なんといっても〈マクラーレン〉の故郷ですから。本場の空気を感じながら走れたのは最高でした。チームのレーサーの方が一緒に乗ってくれたのですが、彼も〈マクラーレン〉の、ほかにはない唯一無二感に惹かれて違うチームからやってきた。また、組織のアットホームなところもいいんだと嬉しそうに語っていたのも印象的でした。みんなが同じ温度感で同じ方向を向いているのを彼自身も感じるそうです。街でほかの〈マクラーレン〉にも何台か出合いました。東京でも最近見かけますよね。サーキットだけでなく、街でも快適に乗りこなせそうです」
本場イギリスで〈マクラーレン〉を運転するのは格別
最初に出て来た職人気質、唯一無二の存在、やや前のめりなところなど、MIYAVIと〈マクラーレン〉との共通点が、MTCツアーが進むにつれてより見えてきた。
「孤高を恐れず突き進むという部分は〈マクラーレン〉とハモる部分なのかなと。ほかに今回学んだ大きなことは、自分をおいてあげる環境の大切さ。環境によって自分のクリエイティビティや熱量がやはり影響されるし、変わってくる。それを今回MTCに来たことで、学ばされましたね。やはり優れた環境にいたいなと思いました。そして、改めて〈マクラーレン〉ってかっこいいなと思ったし、本気のものづくりの姿勢に感化されました。なにより、ここを訪問したことで気持ちの波動が上がりました。知識や情報を得たということじゃなく、すばらしい気の流れを感じました。それはスピリチュアルな体験に近い感じ。特に、ブルース・マクラーレンの話はぞくぞくしたし、彼らがそれを次の世代まで受け継ごうとしていると感じる。言葉や文化は違うかもしれませんが、お寺とか神社とか、そういったような聖地を訪れたような感覚というか。やっぱり研ぎ澄まされている場所というのは気持ちがいいですよね。短い時間での訪問でしたが、偉大な精神と時の流れを感じることができた、非常に有意義な旅でした」
湖を望むMTCは夜も幻想的で美しい
ミュージシャン・俳優。1981年9月14日大阪府出身。12/15(木)愛知・名古屋CLUB QUATTRO、12/19(月)大阪・梅田CLUB QUATTRO、12/24日(土)神奈川・Yokohama Bay Hallにて年末クリスマスライブ「Electric Xmas 2022」を開催。また11月11日(金)、日本のロック界を代表するアーティストYOSHIKI氏、HYDE氏、SUGIZO氏と、まさにスーパーバンド『THE LAST ROCKSTARS』を結成。活動の幅を広げている。 URL:http://myv382tokyo.com/
●マクラーレン・オートモーティブ
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