〈ノルケイン〉のキーパーソンが、最新作の魅力を熱く語る!
フライバッククロノグラフの開発は、実現困難だからこそ面白い!?
スイス機械式時計文化の継承という使命を掲げ、独立ブランドの強みを生かした革新的なタイムピースを発表している〈ノルケイン〉。そんな同社の独立性と自由な精神を体現する“インディペンデンス”コレクションに、また一つ要注目の新作が仲間入りした。来日した同社副社長のトビアス・カッファーが、気になるその魅力を、時計作りに対する熱い思いとともに語ってくれた。
Tobias Küffer[トビアス・カッファー]
1990年、スイス・ビール/ビエンヌ生まれ 。ノルケイン バイスプレジデント。スイス・ビエンヌで高級時計製造会社を営む一家に生まれ育ち、2013年に〈ルイ・エラール〉で時計業界のキャリアをスタート。いくつかのブランドでセールス部門での実績を積んだ後、2018年3月に兄ベン・カッファーとともに〈ノルケイン〉を創業。2021年5月から現職
〈ノルケイン〉は、スイス時計業界では稀有なスタートアップ企業として2018年に創業。新鋭時計ブランドとしては、異例の急成長を遂げてきた。2020年にはケニッシ社と長期パートナーシップを結び、同社製のマニュファクチュールキャリバーを搭載した時計を発表。さらに、2022年にはスイス時計業界における重要人物の一人であるジャン-クロード・ビバーを取締役会顧問に迎え、革新性を体現する時計ブランドとして存在感を放っている。今回、発表されたのは、そんな同社のフラッグシップコレクションである“インディペンデンス”の新作。新開発のフライバッククロノグラフムーブメントを搭載した“インディペンデンス スケルトン クロノ”が、それだ。
「フライバック機構はみなさんもご存知の通り、リセットと再スタートを瞬時に行う機構のことで、これを搭載したムーブメントの開発には非常に高度な技術が必要とされます。
しかし、そういった実現が困難なものだからこそ、我々が挑戦する価値があるのです。〈ノルケイン〉がゼロからクロノクラフムーブメントを作るのであれば最高峰で、なおかつ簡単には実現できないムーブメントを目指すべきである。そんな思いから、今回のマニュファクチュールキャリバーは、スイスの高級ムーブメントメーカーであるAMT社と共同開発しました。注目してほしいポイントは、この機構以外にもたくさんあります。たとえば、ケースバックから眺めることができるムーブメントの受けに刻印した、“CALIBRE 8K”という文字はその一つ。8K=8000とは、エベレストをはじめとする世界に14座存在する8000m峰の山々を意味するもの。その全ての頂きに立つことができるのは勇敢な登山家たちだけですが、この刻印は〈ノルケイン〉がそんな最高峰のものに挑戦する意志を持つブランドであることを象徴する意匠でもあります。加えて、ブランドのシンボルである山をモチーフとしたオープンワークをローターに施していますし、スケルトン加工を施しているので歯車やレバーのメカニカルな動きを視覚的に楽しむことも。もちろん、スケルトンムーブメント自体にはスポーツウォッチとして十分な耐衝撃性が確保されているので、ランニングや登山といった運動をする際も問題なく着用していただける実用性の高さも、強調しておきたいポイントです」
パープルのアクセントを施したスケルトン仕上げのブラックサテンダイヤルが特徴な“インディペンデンス スケルトン クロノ 42㎜ チタニウム DLC”。30分積算計とスモールセコンドを縦に配したレイアウトで文字盤の余白から、ムーブメントの動きやディテールを楽しむことができる。300本限定。ケース径42㎜、自動巻き、チタンケース、ラバーストラップ、100m防水。123万2000円(ノルケイン/ノルケイン ジャパン)
そんな“インディペンデンス スケルトン クロノ”のラインナップは、チタン製ケースとステンレススティール製ケースの2型。チタン製ケースのモデルは、耐久性と柔軟性に優れるDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングを生かしたパープルカラーが印象的だ。
「時計界にもトレンドカラーというものが存在しますが、当社では“my life, my way(自分の人生は、自分の生き方で)”という精神を大切にしていますので、時計のカラーにもその意志が強烈に現れるような配色を採用しています。このパープルもそうですが、“ワイルドワン”のスケルトンモデルで採用したターコイズを筆頭にビリリアントカラーを多用するのも、そういった個性を放つ時計を作りたいという当社の思いが現れたものでもあるのです。トレンドを追いかけるというよりも独自の道を突き進むことで、むしろトレンドを作り出す存在でありたいとさえ思っています」
ゴールドカラーの配色と夜行マーカーを備えた針とインデックスで、視認性を高めた“インディペンデンス スケルトン クロノ 42㎜ スティール”。写真のラバーストラップのモデルのほか、SSブレスレットのモデルもラインアップしている。ケース径42㎜、自動巻き、SSケース、ラバーストラップ、100m防水。107万8000円※SSブレスモデルは112万2000円(ノルケイン/ノルケイン ジャパン)
〈ノルケイン〉の副社長で、世界の販売網を統括するトビアス・カッファー。マッターホルンの登頂をいつか達成したい目標とする一方、学生時代にサッカー選手として90分間以上走り続けた経験から、今年、出走予定のニューヨークシティマラソンでの完走にも自信を示す
そんな〈ノルケイン〉は、企業姿勢を体現するアクションの一つとして、ブランドシンボルでもある“マッターホルン”で開催されるウルトラクスレースや富士登山競走といった山岳レースのほか、ニューヨークシティマラソンとパートナーシップを締結してオフィシャルタイムキーパーを勤めている。ランニング系スポーツとタッグを組むことが多いことには、はたしてどんな理由があるのだろうか。
「完走という一つの目標を達成しようとする行為もそうですが、マラソン大会の精神性にも共感することが多いのです。たとえばニューヨークシティマラソンでは、2021年大会のときにゴール手前のところで倒れてしまったランナーがいたのですが、それを見た他のランナーたちが足元がおぼつかないそのランナーの身体を支え、順位は二の次で完走を手助けしたのです。そのシーンを見て、ただ勝つのではなく、みんなで助け合ってゴールを目指すというその精神に感動を覚えたのと同時に、〈ノルケイン〉もサプライヤーや小売店はもとより、我々が作ると時計の愛用者の皆さんも一つのチームのように一緒になって、機械式時計というエモーショナルなものの価値を追求していくようなブランドでありたい。そういった精神性の部分で共鳴できることが、パートナーシップを結んでいる大きな理由の一つでもあるのです。ちなみに今年のニューヨークシティマラソンは11月3日に開催されるのですが、今回は兄のベンと一緒にランナーとして出走する予定です。完走したら、フラッグシップモデルの“ワイルドワン”に完走タイムと日時を刻印したものを自分にプレゼントしようと思っています(笑)」
●ノルケイン ジャパン
TEL:03-6864-3876
URL:https://norqain.com/ja-jp/
photo : Mai Hokari(BOIL) text : Takumi Endo