シャングリ・ラ ホテル 東京 総支配人――マティアス Y. スッター
2019年9月にシャングリ・ラ ホテル 東京の総支配人に着任したスッター。家族とともに東京での生活をはじめるための引っ越し、その際にこの3本の時計を選んで持参してきた。
- SERIES:
- ビジネスセレブの「時を紡いで」 vol.11
●今月のビジネスセレブ
シャングリ・ラ ホテル 東京 総支配人
マティアス Y. スッター[Matthias Y. Sutter]
Profile
スイス出身。スイスのホテルマネジメントスクールを卒業後、大学院でビジネスを学ぶ。アメリカ・シカゴのザ・ペニンシュラホテルシカゴでホテリエとしてのキャリアをスタート。その後はアジアを中心に世界7カ国のホテルで、主に料飲部門の要職や総支配人として経験を積む。2019年9月より現職に。
アイ・ダブリュー・シー
ポートフィノ・ハンドワインド・エイトデイズ
●愛用歴/約3年
●使用頻度/週2~3
●参考価格/99万5000円
ポートフィノのクラシカルなデザイン美が際立つフラッグシップモデル。現在も直営ブティックや百貨店、時計専門店等で入手可能。
「ラグジュアリーなのに、決して華美になりすぎない知的な雰囲気と、シンプルなデザイン。文字盤の深いブルーの色みも絶妙ですし、ローマ数字とバーを組み合わせたインデックスの対比がはっきりしているので視認性が高いのも魅力です」
ガーミン[GARMIN]
fénix 5X Sapphire〈右〉
健康に対する意識が高く、日常的にエクササイズを欠かさないビジネスセレブの間でも愛用率が高い〈ガーミン〉。フルカラー登山地形図搭載、マルチスポーツ対応のこのモデルはディスコンになり、現在はfenix 5 X Sapphireの基本スペックに加え、音楽再生や電子マネーの決済可能とさらに進化した後継機種fenix 6 XSapphire Black DLCに。
ロレックス [ROLEX]
オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ〈中央〉
存在感のあるこちらは〈ロレックス〉の中でも、長年、世界的に人気を得ているSSケース&ブレスレットのコスモグラフ デイトナ。マティアス Y.スッターが所有するこのモデルはディスコンとなっており、現在はキャリバー4130を搭載し、ブラックのセラミック製ベゼルを備えたホワイトまたはブラックダイヤルの後継モデルが発売されている。
アイ・ダブリュー・シー[IWC]
ポートフィノ・ハンドワインド・エイトデイズ〈左〉
〈IWC〉の人気コレクションのひとつであるポートフィノ。ケース径は45㎜と比較的グラマラスながら、シンプル&クールなデザインによってエレガントな雰囲気を漂わせる。搭載されているのは自社製手巻きキャリバーの59210。名前のとおり、8日間(約192時間)ものロングパワーリザーブを誇る。瀟洒なブルーのダイヤルと、サントーニ社製アリゲーターストラップのブラックの対比も美しい。
「ほかにも何本か気に入っているものはあるのですが、必要最低限と申しますか、とりあえず、〈ロレックス〉〈IWC〉〈ガーミン〉の3本さえあれば、と」
いわば、スッターの時計コレクションの一軍。選りすぐった選抜メンバーは、それぞれ異なった個性が光る顔触れだ。
「〈ロレックス〉はオフのカジュアルにも、そしてオンのスーツにもなんにでも合わせやすいので、使用頻度としては一番高いかもしれません。〈IWC〉は、デイトナよりもう少しエレガントなので、シックなスーツに合わせることが多いですね。〈ガーミン〉はエクササイズするときには欠かせないツール。シーンやファッションによって、この3本を使い分けています。私は決して時計コレクターというわけではありませんが、時計好きということは否定できませんね(笑)」
そんなスッターの時計遍歴のスタートは早く、はじめて腕時計を手にしたのは、なんと7歳のときだった。
「私の父は忙しいビジネスマンで、あまり家で一緒にゆっくり時間を過ごすことはなかったのですが、ある朝、"腕時計が欲しい"と珍しくねだったら、その晩には買ってきてくれたんです。もちろん子供ですからそんな高価な時計ではなかったけれど、少し大人になったような、誇らしいような気がしたし、父の気持ちがとても嬉しかったのを憶えています」
長じてホテリエとなったスッター。若い頃から年相応の時計を自分の目で選び、そして購入もしてきたが、年齢を重ねるごとに腕時計に対する意識が変わっていったという。
「本当に時計に興味を持ったのは30歳を過ぎた頃でした。少しずつキャリアを重ねていき、ある程度はお金を稼げるようになって(笑)、そして一流の人や物と触れる機会も多くなるにつれ、自然と"本当に価値のあるもの"を求めるようになりましたね」
実はこの3本のうち、〈ガーミン〉以外は家族からのプレゼント。
「〈ロレックス〉は8年前、結婚3周年の記念に妻からプレゼントされました。そして〈IWC〉は、義理の両親からの3年前のクリスマスプレゼントです。どちらも私にとっては大切な宝物ですし、なによりとても気に入っているので、日本に一緒に連れてきました」
〈ロレックス〉も〈IWC〉も、スッターからリクエストしたわけではないが、素材、色、デザインすべて、自身の趣味と合致する絶妙なセレクト。共通しているのは華やかなゴールド系ではなく、ステンレススチール素材、そしてシンプルなラウンド型ケースという点だ。
「華やかな時計を否定するのではなく、私は主張しすぎないシンプルなものが好きというだけ。また、ピンクやイエローゴールドより、ステンレススチールが自分の肌の色に合うからなんです」
そう微笑むが、もしかしたらそこには、ホテリエとしての自身の立場、第三者の目にどう映るかといった考慮も含まれているのかもしれない。着用して撮影する1本は、3本の中から〈IWC〉を選んだ。
「義理の両親からいただいた大切な物ですし。もちろん妻からプレゼントされた〈ロレックス〉も同様に大切ですが(笑)、〈IWC〉というのはとても、本当にとてもスイスらしいブランド、時計だと思うんです。もちろん〈ロレックス〉も紛うことのないスイスが誇る時計ブランドなのですが、知らない人はいないといっていいくらいメジャーな存在ですよね。それに対して〈IWC〉はもう少し玄人好みというか、いい意味で質実剛健。決して派手さはないけれど、ウォッチメイキングに対する情熱、一流の矜持が確かに宿っていて、そこに共感するし、とても心惹かれます」
時計は靴やネクタイより、その人自身のパーソナリティを語る。よくそういわれているが、スッターも同じ考えだ。
「私がすごく好きなのが、〈パテック フィリップ〉の広告ヴィジュアルに添えられているコピー。"You never actually owna Patek Philippe.You merely look after itfor the next generation"。日本語にすると、〝あなたはパテック フィリップを実際に自分のものにすることはできない。あなたができるのは、次の世代のためにその時計を大切に使うことだけである〞というニュアンスでしょうか。時計とは本当にそういうものだと思うのです」
シンプルなラウンド型ケースの時計が好きなスッター。では次の1本は〈パテック フィリップ〉の名作時計カラトラバだろうか?
「そうなったら非常に素晴らしいですけれど(笑)、この時計たちで今は満足していますので。子供たちへ受け継げるように、大切に使っていくつもりです」
Company Information
心温まるホスピタリティが最高の居心地を作りだす
香港を拠点とするシャングリ・ラホテルズ&リゾーツの、シャングリ・ラ ブランドを冠する日本初のホテルとして2009年3月に開業。「家族を思いやるように温かくお客さまをお迎えする」という最高のホスピタリティには定評があり、東京のラグジュアリーホテルを代表する存在に。開業10周年を迎えた2019年も、一流のホスピタリティを格づけする世界有数のトラベルガイド、"フォーブス・トラベルガイド"で5つ星を獲得するなど、高い評価を得続けている。
雑誌『Safari』2月号 P206・207掲載
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photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Kayo Okamura