ELEVATE YOURSELF
心の奥にあった劣等感と反骨心を形に変えて前進する力に。
ビジネスの世界で結果を出している人は、自分の興味のあることで精神を高め、それを原動力にしている。今回は、画期的なプラットフォームを構築し、フードロス問題の解決に取り組む三田康博さんに、実現困難なことを成し遂げる力になっているものを語ってもらった。
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日本体育大学バレーボール部時代は、1年次からメンバー入りして活躍。2年次・3年次にインカレ優勝に貢献。最後の年の4年次は惜しくも銅メダルという結果になったが、その悔しさを強さに変えてきた
社会課題となっているフードロス問題を解決するための新しいプラットフォーム、“オズ”を立ち上げた三田康博さん。食に関わる事業者同士が繋がる仕組みを作ることで、食材を有効活用し、フードロスを削減する画期的な試みだ。生産者や飲食店、問屋、スーパーといった食品を扱う人たちが消費者に届ける過程で余ってしまった食材、お酒などを“オズ”をとおして有効活用し合う。さらに一般消費者もそれらを安く購入し、美味しく食べることがフードロス削減に繋がるという。まさに社会貢献性の高いサービスだ。
「前職では主にアミューズメント業を手掛けていたのですが、娯楽以外でなにか人のためになる仕事をつくりたかったのです。その頃、ワイン事業も引き継ぎ、飲食業界に携わることに。そこで食材や食品が廃棄されるフードロスの現状を目の当たりにしました。人間が生きていくうえで不可欠な“衣食住”。なかでも“食”でなにかできないか。そう模索し、仕組み作りにイチから取り組もうと思ったのがきっかけです」
飲食店や問屋、生産者といった食に関わる事業者の横の繋がりを作ることは、決して簡単なことではない。それも全国レベルのサービスとなれば、一朝一夕でというわけにはいかない。それでも、その思いを形にした原動力は、一体どこにあるのだろうか。
「私は、祖父が創業者で父が社長という家庭の中、私が3代目になるという環境で育ちました。だからか、常に社長の息子という存在で見られることに対し、ずっと劣等感のようなものを感じ続けていたのです。そんな私が日本体育大学のバレーボール部時代、優勝が続き3連覇がかかった最後の年のインカレで、銅メダルという結果を出してしまいました。自分の代で優勝を途切れさせる結果になってしまったとなると、『ほら見ろ、今までは先輩の力で上に上がれていたんじゃないか』、という見られ方になるのではないか……。それが自分の中では許せなかった。そのときに感じた、結果を出せなかったことへの悔しい経験から、自分の関わる仕事ではきちんとした結果、成果を出したい。自分の力でいいものを作り出したいという意識を強く持つようになりました。振り返れば、学生のときから心の奥にそんな思いを抱えてきたんだと思います。もちろんまわりから見れば恵まれた家庭環境だった部分もありますので、感謝すべきこともあります。そのうえで、自分になにができるのかという劣等感を覆すような存在意義を出したいと考えています。これは、いい意味での反骨心なのかもしれません」
将来的には、障害福祉施設や高齢者施設の食品ロスをはじめ様々な問題解決などにも、総合的に取り組みたいと話す三田さん。経験してきた劣等感や反骨心が、いい意味で、きっとこれからも前進していく強い力になってくれるに違いない。
“オズ”では、急なキャンセルなどで行き場を失った食材や食品を、ほかの飲食店との繋がりで有効活用できるなど、多岐にわたるサービスを提供
ビジネス書から、自らの力になる言葉を得ることも多いという。最近、心に響いた愛読書は、“聞く力”の大切さを豊富な取材で綴った『リッスン』(ケイト・マーフィ著)
ザ ロイヤル クルー株式会社
代表取締役
三田康博さん
1987年、神奈川県生まれ。三田ホールディングズ・ビーコムグループの取締役として、アミューズメント事業や海外資産運用事業、ワイン事業などに10年間従事して退社。2022年8月にザ ロイヤル クルー設立。
photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Takumi Endo