PROFILE
1968年、イギリス生まれ。『トゥームレイダー』『ロード・トゥ・パーディション』『レイヤー・ケーキ』『ミュンヘン』などへの出演を経て、6代めジェームズ・ボンドに抜擢。『007 カジノ・ロワイヤル』から『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで、計5作で同役を演じる。その他の出演作に、『カウボーイ&エイリアン』『ドラゴン・タトゥーの女』『ローガン・ラッキー』など。2021年9月にイギリス海軍の名誉中佐に任命され、今年10月には聖マイケル・聖ジョージ勲章を授与されている。
ダニエル・クレイグといえば、ジェームズ・ボンド。確かにそのとおりだが、無鉄砲でありながらもスマートなスパイの面影を彼の中に追い求めるのはそろそろやめるべきかもしれない。もちろん、ダニエル・クレイグが6代めジェームズ・ボンドとして長年にわたって活躍し、大勢の映画ファンに愛されたのは、これまでもこれからも決して変わることのない事実。
映画界や演劇界におけるクレイグ自身の功績を称えられ、イギリス王室から聖マイケル・聖ジョージ勲章を授与されたのもつい先日の出来事だ。この勲章はジェームズ・ボンドが物語の中で授与されたことでも知られるもので、やはりファンは「ダニエルがボンドと同じ栄誉に輝いた!」と歓喜。ダニエル・クレイグ=ジェームズ・ボンドがもたらしたものは幸せなことに、あまりに大きかった。
そんな状況ではあるが、当の本人はすでに先へ先へと歩きはじめている。まだジェームズ・ボンドだった2019年、クレイグはミステリー映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』にクセの強い名探偵ブノワ・ブランとして登場。その続編『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』が、まもなくネットフリックスで配信される。クレイグが演じるのはもちろん、前作で強烈なインパクトを放ったブノワ・ブラン。超大物ベストセラー作家死亡事件を見事解決してみせたブランが、今度はギリシャの美しい島で起こる殺人事件の謎解きに挑むことになるという。
「物語に関する情報をできるだけなにも入れず、本編を見てもらうのが僕らにとってはすごく大事なことだと思う。でも、素晴らしいキャストと素晴らしいミステリーが待っていることは保証するよ。前作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』との繋がりはなく、独立したストーリーになっている。ブノワ自身はさほど変わっていないけどね。いや、以前よりもっとうるさくなったかな(笑)。基本的には変わらない調子で新しい事件、新しい容疑者に挑むんだ」
物語はIT業界の大富豪マイルズ・ブロン(エドワード・ノートン)が、所有するギリシャの島に親しい人たちを招待するところからスタート。となれば大方の予想どおり殺人事件が起こるのが世の常で、居合わせたブノワ・ブランが謎を解くことになる。鼻につくキャラで、周囲の妨害や策略を飄々とかわしながら。お馴染みの南部訛りも再び聞くことができるようだ。
「あの口調をまた取り戻すのはすごく大変だった。ボイスコーチと一緒に一生懸命取り組んだよ。彼の独特のアクセントは台本に最初から書かれていたもので、演じるのを楽しみにしていた理由のひとつでもあった。あの声はブノワ・ブランという人物の大きな部分を占めている。彼自身、自分の声の響きを気に入っているしね。言葉を使い、相手の壁を取り払っていくんだ」
監督を務めるのは、前作に続きライアン・ジョンソン。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の監督としても知られる俊英に、クレイグは絶大な信頼を寄せている。そのジョンソン監督によると、“ミステリアスな名探偵”だった前作から一転、『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』ではブランのキャラクターの謎がもう少しだけ明かされるそうだ。視聴者は彼の目をとおし、事件や登場人物を見つめることになるともいう。
「ちょっと謎めいていて、ある意味変わっていて、けれども魅力的。僕はブノワ・ブランのそういうところが好きだし、それはすべてライアン・ジョンソンの天才的な脚本によるもの。もちろん、カメラの前以外でブノワのような人間になるのは避けたいところだけどね(笑)。僕はただライアンの考えた素晴らしい台詞をもとに、その場にいるように心掛けている。そもそも、僕が続編の話に飛びついたのは、彼とまた一緒に仕事ができるチャンスだったから。前作があまりに面白かったからね。参加を決めたのは、僕にとってはごく当然のことだった。ジェームズ・ボンドにせよ、ブノワ・ブランにせよ、役を演じるのは大変な仕事。それを成功させるためには、多くの才能ある人々が必要だと思う。その点、ライアンのような監督がいて、素晴らしいキャストがいれば完璧なのは間違いない」
『ナイブズ・アウト』はシリーズ化が視野に入れられており、第3作の製作も決定している。ひょっとすれば今後、ブノワ・ブランを演じる回数がジェームズ・ボンドを超える可能性も?
「もしかしたら、あり得るかもね。ライアンが脚本と監督を続けるなら、僕は間違いなく参加し続ける。この作品が特別なものになると、僕は最初からわかっていた。もちろん、受け手の反応がすべてだけど。彼は映画が大好きで、映画を作るのも大好き。そんな彼と一緒に映画を作るのが僕は大好きなんだ。とても楽しいよ」
共演はエドワード・ノートンのほか、ケイト・ハドソン、イーサン・ホーク。
億万長者マイルズ・ブロンが、ギリシャの島で開かれる毎年恒例の集いに親しい人間たちを招待。招待客の中には、マイルズの元ビジネスパートナー、コネチカット州の現知事、ファッションデザイナーとそのアシスタントらがいた。しかし、やがて殺人事件が発生。名探偵ブノワ・ブラン(クレイグ)が秘密、嘘、動機を隠し持った面々の中から犯人をあぶり出していくことに……。●12月23日より、ネットフリックスにて独占配信
Netflix映画「ナイブズ・アウト グラス・オニオン」12月23日(金)より独占配信開始
It's also a lot of fun
when you are part of such an amazing cast
and you have a director like Ryan.
その点、ライアンのような監督がいて、
素晴らしいキャストがいれば完璧なのは間違いない。
ダニエル・クレイグ
『Urban Safari』Vol.31 P10~11掲載
photo by AP / AFLO text: Hikaru Watanabe