Behind the success of businessmen
違う世界を体験することで“本質”を捉えてきた。
ビジネスの世界で結果を出している人物は、どのようにして自分を高めているのだろうか。今回は、“社会のために私たち医師を活用してほしい”という思いを抱き、医療とビジネスを繋ぐ新しい医師像を体現する乾 雅人さんに、その原動力となるものを教えてもらった。
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東京大学医学部アメフト部現役時代のユニフォーム復刻版。試合をしたときに着用していたジャージであり、ここには青春のすべてが詰まっているという
“どうすれば社会への価値貢献を最大化できるのか?”。そんな問いを学生時代から追い求め、銀座で美容皮膚科クリニックを経営する傍ら、大学病院やITシステム会社のコンサルティング、薬剤の研究開発など多方面で活躍している銀座アイグラッドクリニック院長の乾 雅人さん。東京大学医学部を卒業後は胸部外科を専攻し、同大学病院で肺移植領域の臨床に従事。当時から医師にしか気づけない社会問題があると考えており、問題解決の手段として“経営”を意識していたという。
「社会のために医師である我々を有効活用してほしいという思いがあります。自由診療クリニックの経営は、経営者としてのOJTとして必要だと思っていました。裏側のテーマは臓器移植領域に繋がるための薬液を探し求めることでした。ビジネスの本質は問題解決にありますが、医療とビジネスが健全な形で結びつけば、医療の社会問題を解決できると考えています」
現在は、国内の大学や研究機関が所有する知財を4000種類集めたケミテラス社とタッグを組み、老化を克服できる可能性を秘めた5デアザフラビン(TND1128)、世界最強のミトコンドリア活性物質の観察研究を行っている。このように社会への価値貢献に対する強い思いを抱くようになったのは、大学時代にアメフトにのめり込んだことが原体験になっている。
「東大医学部アメフト部の活動は、公的な資金の支援を得ています。だから、税金の担い手である社会になにを還元できるのかを考えるのは当然のことですし、部員もそうした意識を共有していました。一方で私はキャプテンとして、マネジメントの難しさと面白さと徹底的に向き合ってもいました。タフネスとガッツを持ち合わせ、弁が立つ部員たちをまとめることは、決して簡単なことではありません。肉体的にも精神的にも様々なものを突きつけられる中で、チームを強くするため、トレーニングにしても食事にしても、データに基づく分析まで、自分が考えられるすべてのことをやりきりました。ただ、そこまでやっても望むような結果が出せなかったことも。この体験は、自分の想像を超えたところに活路があることを知るきっかけになり、アメフト以外のスポーツやビジネスの世界に結果を出すためのヒントを追い求めました。要は、努力の方法を模索するなら“自分がいる世界や業界の外にあるものから学ぼう”と。学生時代に培われたこの考え方は、私のスタイルの軸になり、今、医療とビジネスを繋ぐという、医師にしかできない社会問題の解決に力を注いでいます。もちろん仕事を通じてしか会得できないことは多数ありますが、今思えば、私はアメフト部時代に自然と基盤作りができていたのでしょう」
アメフト部時代の同期や後輩は卒業後、臨床現場や医療周辺ビジネス、それぞれの分野の最先端を担っている。乾氏は現在、当時の自分たちの理想に恥じない、新しい医師の在り方を追い求め続けている。
ビジネスやスポーツの一流といわれる人の書籍も愛読するが、一流のものに触れる原体験に勝るものはないという考えから、オペラや歌舞伎、バレエなども観劇する
老化克服の可能性を秘めたミトコンドリア活性剤"iG1128(アイジー1128)"臨床用試薬として処方している。昨今話題のNMNの数十倍強力と特許承認済み
乾 雅人さん
2010年、東京大学医学部卒業。同附属病院で初期臨床研修、外科専門研修修了。2020年、銀座アイグラッドクリニックを開業。医療業界のプロ経営者として、事業共創に積極的に取り組んでいる。
『Urban Safari』Vol.31 P37掲載
photo:Kouki Marueki(BOIL) text:Takumi Endo