今できることをやり続け、進化していく。
時代の流れを作り出す〈三越伊勢丹〉が目指すこと。
未来を見据えたライフスタイルが注目される中、〈三越伊勢丹〉が2021年4 月からスタートさせた "think good"が話題に。サスティナビリティに関わる様々な社会課題に〈三越伊勢丹〉はどう向き合っていくのか。〈イセタンメンズ〉バイヤーの吉岡 裕さんに、そのヒントを伺いました。
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ただし、かっこよくなくては意味がない"
未来のために〈三越伊勢丹〉がはじめたサスティナビリティ。
〈イセタンメンズ〉の要ともいえる、メンズのラグジュアリーブランドを担当するバイヤー吉岡 裕さんに、"think good"について、その活動の内容を聞いてみた。 「"think good"とは、2021年4月から使用をスタートした〈三越伊勢丹〉のサスティナビリティに対する合言葉です。"地球環境や社会に対して、なにができるのか考えよう"とはじまりました。」
取り組みの中で反響の 大きかった昨年の実績とは。
「〈イセタンメンズ〉の取り組みで反響のあったひとつが〈ジェイエムウエストン〉 です。役目を終えたシューズを下取りし、 フランス・リモージュの自社工場で熟練の職人がリペアを施します。それをニューコレクションとしてリリースするというポップアップイベントでした。予想以上の反響から、一度価値がなくなった物 にもう一度生命を吹きこむという取り組みは、大切だし求められていると実感しました。しかしファッションとしての提供価値を考えたとき、それがかっこ悪くては誰も見向きしてくれません。不要と思われていた物が新しく、かっこよく、そして価値が出たら、これほど素敵なことはないと強く信じています」
ファッションにおけるサスティナビリティの難しさ。
「こうした活動を積極的に進めるという考えのひとつが"think good"です。ただその一方で、いっさい口にせずに粛々と取り組み、実はエコであることを後から知
らせるパターンもあります。私個人は、後者のほうがいいなと。というのも、ファッションが好きな方は、商品の見た目のかっこよさに魅かれて購入されることがほとんどだからです。また、エコを全面に掲げすぎると、気使う部分が増え、お客様に伝えたい本質がボヤけてしまうことがあります。ファッションにおける第一印象は、見た目や肌触りなどクオリティが大切です。『この服はエコだからいいですよ』というお客様へのアプローチは、今の時点では受け入れ難いかと。であれば、お気に召されてから、『実はこちらエコなんです』と添えたほうが、お客様もプラスαで幸せな気持ちになるんじゃないかと」
今年は新たな価値へと再生するデニムやインテリアに注目。
では、今後展開予定の未来志向型キャンペーンはどういったものなのか。 「"デニム de ミライ〜DENIM PROJECT〜"になります。〈ヤマサワプレス〉が所有している〈リーバイス®〉のユーズドストックを活用し、廃材を引き取って、協賛賛同していただいたブランドに商品を作ってもらうという企画です。今までは捨てられてしまっていた引き取り手がいなかったユー ズドストックの生地に、新しい価値を吹きこむというものです。これは、〈三越伊勢丹〉全館でのキャンペーンとして展開していきます。また、建材や家具の製作過程で出る様々な樹種の"木っ端"や伐採された後に残る"根っこ"を利用し、素材の個性を生かしたプロダクトを紹介しよう、 という企画も進行中です。こうした新しい企画やアイデアは、〈三越伊勢丹〉のバイイングチームが、その感性で社会に目を向けることで、様々なカテゴリーで生まれてきます」
日本人ならではのエコへのアプローチ法とは?
「マーケティングの観点から、ミレニアルやZ世代の共感を得るために、デジタルを活用してサスティナビリティをアピールすることはとても大切だと思います。ですが、個人の意見としては、書物『淮南子』に由来がある"陰徳"という感覚が大事だと思っています。特に、上質な物を好むお客様こそ、奥ゆかしさを美徳と感じ ていらっしゃると。"内に秘めつつ、やるべきことはやっている"。そういった私たちの姿勢を感じていただけたら嬉しいですし、お客様に寄り添うことで、信頼を築いていくことが大切だと思っています。 とにかくエコに関しては、いつか100%を目指し、今できることをひとつずつ増やしていく段階だと思っています。ファ ッションとしてかっこよく、その実はちゃんと取り組んでいます="think good"という具合に」
PROFILE
吉岡 裕さん
伊勢丹新宿店 メンズ館 バイヤー
2001年伊勢丹(当時)入社。2013年からメンズ館3階 メンズデザイナーズフロアを担当。 現在は1階から3階のメンズラグジュアリーブランドを幅広く担当している。
〈三越伊勢丹〉が取り組む "think good"とは?
〈三越伊勢丹〉のサスティナビリティ活動の合言葉が"think good"。未来のために今選びたいモノやコトを考え、新しいライフスタイルを提案していく取り組み。ファッションにおいては、今回、〈リーバイス®〉のデニムのリユースなどに力を入れている。この活動は、今後も様々な形で行っていく予定。
photo : Shungo Tanaka(MAETTICO) text & composition : Hiroyuki Horikawa