デザイナーの世界観を表すヴィンテージ感のある空間
築45年のヴィンテージマンションの1室。ここは、建築デザインを手掛けるデザイナーのお宅。これまで集めてきたインテリアや染付の器、趣味のレコードなど、国籍も年代も問わず好きなものだけを無造作に置いているのになぜかしっとりと落ち着ける。オーナーのこだわりにあふれ、心の贅沢が感じられる空間はどうやって作られているのだろうか。
- SERIES:
- 西海岸的なハッピー・ルーム! vol.62
細田邸/1LDK+S/100㎡
壁にはリブを張り、上部は天井と同じピンクの塗り壁にした。壁中央に掛けられたアートは、高野夕輝の作品“音楽の島”。オーディオルームにふさわしいタイトル
大きなアールの開口越しに見えるのは、イームズのラウンジチェアやスペイン製のフロアスタンド。埋め込みで造作した棚にはレコードや書籍、イタリア人デザイナーのオブジェなどが並ぶ。暮らしてまだ半年ほどというのに、国境を越えたモノたちが、まるで生まれたときからそこにいたかのように馴染んでいる。ここは〈ハウストラッド〉のデザイナーの自邸。
「もともと、ときを経て味わいを増したものが好きで、少しずつ買い集めていました。“好きなもの”と“したい暮らし”のイメージを実現できる物件にようやく出会えて、築45年のマンションをフルリノベーションしました」
こだわったのは広さと構造だ。マンションには“ラーメン構造”と“壁式構造”の2種類があり、柱や梁のフレームで建物を支えるラーメン構造に対し、壁式構造は耐力壁や天井などの面で支える。耐力壁は撤去できないが、室内に柱や梁の凹凸がなく、家具の配置などの自由度が高い。探していたのはこの壁式構造。取り払えない壁を残しながら、ドアを設けずアーチ型の垂れ壁で廊下と居室を繋いだ。どの場所から見ても景色がやわらかく切り取られ、音楽が静かに流れてくる。外せない壁のために、洗面室・浴室の広さは変えられないが、洗濯機を廊下の壁面収納内に配置するなどの工夫で狭さを解消した。
ヴィンテージマンションの持つ重厚感を生かした居室には、1950 年代、1960年代の名作家具や照明を自在に配置。柳宗理のバタフライスツールと、フランスのピエール・ガーリッシュのアムステルダムチェアは、全く異なるデザインながら、ともに’50年代に曲げ合板の技術で作られた美しいフォルムが共鳴し合う。「誕生した背景を知り、歴史を遡るほど面白さが増して」というオーナーの審美眼を通して集められたモノたちが、その世界観を体現している。
01 扉を設けずワンルームの繋がる空間に
床はオフホワイトの磁器質タイルで統一し、扉で仕切らず繋がる空間に。キッチンとダイニングの間に設けたフリースペースには、〈カッシーナ〉のマラルンガや、ブラジルの家具デザイナー、パーシヴァル・レイファーのソファなどを置き、思い思いの場所でくつろげる場に。照明はフィンランドのパーヴォ・ティネルのデザイン。
02 アールの開口で景色を切り取る
アールにした開口が、洞窟から光の世界に向かうようなドラマチックな明暗をつくる。奥にあるのは〈バウマン〉社の木製パーテーションで自在な角度に配置できる。
03 ベッドルームには機能美が際立つ北欧の名作家具
寝室の壁沿いに配置したのは“ウェグナー”のRY 100。ヘッドボードとしてぴったり収まった。ベッドサイドはヘレナ・フラントヴァによるテーブルライトを壁掛けでアレンジ。
04 鏡への映り込みで広さを演出
ウォッシュルームとバスルームはグリーンのモザイクタイル仕上げ。内装を統一し鏡への映り込み効果でコンパクトさを感じさせない。
真空管アンプで好きな音楽に浸る
オーディオルームに置いているのは初期の〈マッキントッシュ〉のアンプ240。275が有名だが、「よく聴く音楽と同年代のアンプで、日本の家のサイズにちょうどいい」とのこと。温かみのあるルックスも好きで、フルレストアしてもらった。オーバーホール済みの〈トーレンス〉のプレイヤーとともに、用の美を備えたアイテムだ。
「朝起きるとレコードをかけて1日がはじまります。夜は食事をしながら好きなワインを飲んで、食後はソファに座って音楽を聴きながら本を眺める、そんな日常が楽しいですね。家族もみなインテリアが好きなので、それぞれ好きな場所で心地よく寛いでいます」
この記事を読んで、自宅、会社のリノベーション、戸建てに興味を持たれた方は、是非下記アドレスにご連絡ください。『Safari』が、インテリアデザイン会社〈HOUSETRAD〉と一緒に、あなたのライフスタイルに合った住空間をご提案させていただきます。物件探しなどもお気軽にご相談ください。
info_house@hinode.co.jp
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●ハウストラッド
TEL:03-6412-7406
URL:www.housetrad.com
雑誌『Safari』2月号 P184〜185掲載
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photo : Takafumi Matsumura text : Kuniko Nakajo