
日本酒『久保田』を手がける朝日酒造が、新たな一歩として蒸留酒の世界へ踏み出したのは2024年のこと。目指したのは、単なるジンの枠を超え、日本の風土そのものを表現することだった。
その象徴が『KUBOTA GIN』。テーマは“自然とのつながり”で、新潟・長岡の里山に息づく空気や水、四季の移ろいを、ボタニカルの重なりで描き出す。日本酒づくりで培った繊細なブレンド技術を背景に、静かでありながら奥行きのある香味を実現しているのが特徴。通年商品として展開されるこの一本は、ブランドの原点とも言える存在かもしれない。
『KUBOTA GIN』700ml、6050円(朝日酒造)
ベースとなるのは、酒造りで培われた技術と哲学。清らかな軟水と向き合い続けてきた蔵ならではのアプローチにより、アルコールの角を感じさせない、驚くほどなめらかな口当たりを実現。ジュニパーベリーをはじめ、コリアンダーシードなど複数のボタニカルを繊細にブレンドすることで、華やかさと静けさが同居する、奥行きのある香りを構築している。面白いのは甘酒を加えているところ。ほんのりとした甘みをあることで、味わいに深みが増している。ひと口ごとに印象が移ろう、そのレイヤー感こそがこのジンの真骨頂だろう。
ストレートではクリアな旨みと柔らかな甘みが際立ち、ソーダで割れば軽やかな清涼感が広がる。いずれのスタイルでも、日本酒ブランドが手がけたジンならではの“和のニュアンス”がそっと余韻を残すはず。通年商品でありながら、その完成度はすでに一つの到達点。『KUBOTA GIN』は、日常に寄り添いながらも、確かな特別感をもたらす一本として位置づけられている。

2000本限定蒸留。『KUBOTA GIN よそふ春』700ml、7150円(朝日酒造)
そして、この『KUBOTA GIN』の世界観をさらに深化させたのが季節限定の蒸留シリーズで、この春に登場したのが『KUBOTA GIN よそふ春』。雪解け水が大地を潤し、草花が芽吹く。冬の静寂から一転、里山がやわらかな色彩をまといはじめる、あの瞬間。その空気をそのまま閉じ込めたかのような一本となっている。
キーボタニカルには、カモミール、ローズマリー、カルダモン、そして柚子の皮を採用。花々を思わせるほのかな甘さに、芽吹きの季節を感じさせるグリーン系の香り、そこへ柑橘の軽やかなニュアンスが重なり合う。計19種のボタニカルが織りなす香りは、まるで春の風が頬を撫でるようにやさしい。
口に含めば、実にスムースで繊細。やわらかな余韻が広がり、冬の重さをふわりとほどいていくよう。まさに“よそふ”という名のとおり、季節をまとうかのような感覚が楽しめる。
おすすめは、ストレートやソーダ割りに加え、ジンと水を1:1で合わせる“トワイスアップ”。香りがふわりと立ち上がり、このジンが持つ繊細なレイヤーをより深く感じることができる。
仕事終わりの夜、あるいは休日のサンセット。グラスの中に広がる春の里山に身を委ねる時間は、ただの一杯を“特別な体験”へと変えてくれるはずだ。わずか2000本のみという希少性も、この一本の価値を高めているだろう。
季節を味わうという贅沢は、その繊細な移ろいに気づける大人にこそふさわしい。
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