価値あるダウンの見極めに、
知っておくべき“フィルパワー”の意味!
冬の寒さが本格化すると、頼りになるのはやっぱりダウン。軽くて暖かいのがダウンの魅力だが、その暖かさの基準となる数値を知っているだろうか? その名も“フィルパワー”。キン肉マンの超人パワーみたいに、いかにも強そうな名前だ。で、その数値が高ければ高いほど、ハイパフォーマンスなダウンジャケットと言え……ない! 実はそんな単純な話じゃない。自分の着用環境に合ったダウンを手に入れるなら、まずはフィルパワーがなんたるかを知っておこう。
そもそもダウンってなんなんだって話だが、手持ちのダウンジャケットの品質表示タグを見てほしい。ダウン90%、フェザー10%といったように、ダウン以外にも入っていることがわかるはず。ダウンとは水鳥の胸部に密生し、羽軸がないフワフワとした毛のこと。たとえるなら、タンポポの綿毛のようなものだ。一方フェザーは、その名のとおり羽根のこと。硬い羽軸が真ん中にあり、その両サイドにやわらかい毛が生えている。実はダウン100%だと、やわらかすぎて片寄りができやすい。フェザーと組み合わせることで、保形性を確保しているのだ。
で、話を戻すと、ダウンジャケットやベストを紹介される際に使われる、600フィルパワーや800フィルパワーという数値。確かに超人パワーのように聞こえるが、これはダウンのかさ高を示すもの。たとえば600フィルパワーの場合、約30gのダウンを2.54cm立方の筒に入れた際、600立方インチの体積に膨らんでいることになる。より膨らむダウンほど空気の層が多く確保でき保温力が高まるので、数値が大きいほど優れたダウン=暖かいダウンというわけだ。
しかしながら、話はそう単純じゃない。前述の“数値が大きいほど暖かい”というのは、量や組み合わせる生地といった条件が同じ場合。ダウンはあくまで内包材であり、表生地や裏生地、はたまた機能素材との組み合わせによって、同じ数値のダウンを使用していてもジャケットとしてのスペックはまるで異なってくる。また、ダウンの量によっても暖かさは変わり、数値の低いダウンを使用していても使われる量が増えれば保温力は高まる。つまり、フィルパワーはあくまで単体のダウンの質を評価するものであり、製品になった場合のスペックの高さや保温力を担保するものではないってことだ。
[カナダグース]
CANADA GOOSE
“フィルパワー625”
“ウィンダムパーカ” 12万7600円(カナダグース)
このモデルこそ、まさにその証明!
800や1000フィルパワーのダウンもある中、625フィルパワーは一般的。と思いきや、耐久撥水、防風、耐摩耗、保温といった高機能を備える生地アークティック・テックとの組み合わせにより、ハイパフォーマンスを実現。それは、コヨーテファー然り、マイナス15℃にも対応するほど。起毛トリコット生地をチンガードに配するなど、細部のスペックも高い。
“アームストロングフーディー” 9万7900円(カナダグース )
意外にもタウンユース視点!
マイナス15℃まで対応する、750フィルパワーのホワイトダックダウンを採用したこちら。上質なダウンに加え、摩擦が生じやすい部分にコーデュラナイロンを配するなど、そのスペックはかなり実用的。それでいて、耐久撥水や防風性を備えつつ非常に軽いフェザーライト リップストップ生地は、シンプルなデザインとともに街着として活躍してくれる。
“ハイブリッジCWジャケット” 10万5600円(カナダグース )
スタイリッシュなシルエット!
今回の3着の中で、最もハイフィルパワーなのがこれ。じゃあ、最も暖かくて極寒地もへっちゃらなのかというと、そうじゃない。上質なダウンを採用しつつも厚みは抑えられ、全体的なシルエットは実に都会的。もちろん、マイナス15℃まで対応し、さらに3層構造素材のTRI-デュランスが、耐久撥水、防水、透湿、耐摩耗、ストレッチと、高機能を実現している。
ダウンだけでなく様々な要素との組み合わせで、パフォーマンスは激変するダウンジャケット。とはいえ数値の高いダウンを使用していることは、ダウンジャケットとしてのクオリティをより追求したアイテムだということはいえる。ポイントは、その数値だけに頼らず、目的に応じて総合的に判断することが肝心ってこと!
カナダグース
TEL:03-6758-1789
photo : Tomoo Syoju(BOIL) styling : Takumi Tagawa(remix) text : Masafumi Yasuoka