【まとめ】人生に迷ったら観たい!
大人の生き方を教えてくれる映画10選!
大人といえども人生には迷うもの。そんなときに参考にしたいのが、映画の中の主人公たち。彼らの生き方に心動かされたら、きっとその先が見えてくるはず!
『グラン・トリノ』
製作年/2008年 監督・出演/クリント・イーストウッド 出演/ビー・ヴァン、アーニー・ハー
大人としてどうあるべきか、そのすべてが詰まっている!
頑固一徹、いぶし銀のような魅力を放つクリント・イーストウッドの主演作。大人のダンディズムと日常におけるこだわりが全編にちりばめてある。まずかっこいいのが日課。自動車工を定年まで勤め上げた主人公コワルスキーは、毎日ヴィンテージカーのグラン・トリノをピカピカに磨き上げている。亡くなった妻のことも一途に愛していたなど、本物と認めたものを愛し抜く性分は大人として見習っておきたいところだ。
物語はコワルスキーと隣に引っ越してきたアジア系移民一家の少年タオとの交流がメイン。未熟な少年に、人生のイロハを教えるところも生き方として惹かれるのだが、1番はクライマックス。コワルスキーがタオ一家とトラブルを起こすギャングに業を煮やし愛用のライフルを持って立ち向かう場面だ。
老人VSギャング集団。どう見ても劣勢なのだが、立ち上がらずにはいられないという、この魂にとにかく心打たれる。当然、本人も承知のうえで、ヒゲを剃り、頑なに行かなかった教会へ赴き懺悔するのだ。この先は本編を観てほしいのだが、このコワルスキーが長年にわたってハリウッドを生き抜いてきたイーストウッド自身と重なって見えることもあり、イーストウッドによる人生指南書ともいえる作品なのだ。
『レスラー』
製作年/2008年 監督/ダーレン・アロノフスキー 出演/ミッキー・ローク、 マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド
ボロボロになっても立ち上がる姿に感動!
主人公の姿にミッキー・ロークの人生を重ね合わせずにはいられない作品で、かっこ悪さをさらけ出した姿が胸を打つ人間ドラマ。主人公ランディは、かつてメジャー団体で活躍したが、今はステロイド剤の射ちすぎでボロボロになった中年プロレスラー。若手レスラーやプロレスファンからリスペクトされる一方、普段はスーパーマーケットで働かざるをえないほど落ち目になっている。
心臓の手術を受け引退を決意するが、どうしてもリング上で感じた高揚感を忘れることができない。そのうえ、不器用な生き方しかできないため、大好きな娘の約束をすっぽかしては嫌われ、勤務中のスーパーマーケットではファンに見つかり、恥ずかしさから店をグシャグシャにしてしまう。そんなつもりじゃないのに、同じ過ちを繰り返してしまう。誰しも、こんなときがあるだけに、ランディの気持ちが痛いほど伝わってくるはずだ。
ラスト、ランディはボロボロのカラダながら命懸けでリングに上がる。そこには天職に巡り合ってしまった人間の喜びと哀しみが見てとれる。‘80年代にフェロモン系俳優として一世を風靡したミッキーだが、その後は低迷。破産、離婚、整形手術の失敗……と辛酸を舐めわけだが、本作でベネチア映画祭金獅子賞を受賞しカムバックする。まさにミッキー自身のセミドキュメンタリーを観ているかのようでもある。
『フレンチ・コネクション』
製作年/1971年 監督/ウィリアム・フリードキン 出演/ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ
鬼気迫る捜査ぶりに惚れる!
麻薬犯罪の撲滅に執念を燃やす刑事たちを主人公にした実録アクション映画。NY市警の薬物対策課所属のベテラン刑事ポパイが麻薬組織を追い詰めていく姿がとにかく圧巻!すべてを麻薬組織壊滅に注ぐポパイの生き方は、働き方改革がうたわれる昨今では時代錯誤かもしれないが、そこまで熱狂できる職を見つけられたという点では羨ましく思えるはず。
ジーン・ハックマン演じるポパイはひたすらNYを走り回り、容疑者たちを次々と検挙していく。なかでも麻薬組織が放った殺し屋とポパイとが地下鉄とクルマとでチェイスを繰り広げるシーンは、映画史に残る名場面だ。ポパイの鬼気迫る捜査ぶりに、刑事という職業に対するプライドがビンビンと伝わってくるだろう。
これと決めたものにすべてを捧げるポパイの生き様に憧れるわけだが、続編『フレンチ・コネクション2』では、それに加え大人の意地を見せつけてくれる。組織の手に落ちたポパイが麻薬漬けになってしまうのだが、そこから立ち直ろうと懸命になる。この姿も、また胸が熱くなる名シーンだ。
『シンドラーのリスト』
製作年/1993年 監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/リーアム・ニーソン、ベン・キングズレー、レイフ・ファインズ
他人を命懸けで救うという生き方!
一介のビジネスマンとしてナチスドイツと渡り合い、1200人ものユダヤ人の命を救ったオスカー・シンドラーを主人公にした感動作。一歩間違えれば、自分自身も国家反逆の罪で処刑されるところを、ビジネスの世界で培った交渉術でギリギリの綱渡りを進めていく生き方が、大人としてグッとくるポイントだ。
第2次世界大戦中、ドイツ国内では誰も逆らうことができなかったナチスドイツを相手に、ドイツ人実業家のシンドラーは軍需工場の労働力として強制収容所送りになっていたユダヤ人たちを雇い入れる。最初は営利目的で安価なユダヤ人に目をつけたシンドラーだったが、次第にユダヤ人の悲惨な状況を知り、収容所の鬼所長アーモン・ゲートとお互いの腹を探り合いながら人命救助に目覚めていく。
結局ユダヤ人救出によって全財産を使い果たしてしまうも、戦後も多くの人たちからシンドラーは愛され続けることに。権力を濫用し、悪の道に溺れていったアーモン・ゲートとは実に対照的だ。ユダヤ系米国人であるスティーヴン・スピルバーグ監督のクールに抑えた演出もお見事。
『フィールド・オブ・ドリームス』
製作年/1989年 監督/フィル・アルデン・ロビンソン 出演/ケヴィン・コスナー、エイミー・マディガン、レイ・リオッタ、バート・ランカスター
ロマンと信念を持って生きる、それが大人!
人生の途中で道に迷ったときに観直したいのがコチラ。主人公はトウモロコシ畑を営む平凡な中年男レイ。ある日、レイは畑の中で「それを造れば、彼は来る」という不思議な声を耳にし、畑の真ん中に野球場を造ることを思い立つ。周囲から変人扱いされるも、レイは人生の折り返し点にいることを自覚し、心の声に従うことを決意する。
完成した野球場に現れた戦前の名選手シューレス・ジョーは「ここは天国かい?」とレイに尋ねる。まさに夕暮れの日差しを浴びたグランドは天国のように美しいのだ。亡くなった父と不仲だったことを気にしていたレイだが、野球場を造ったことで父が憧れていた世界に触れ、夢を見ることの大切さに気づく。大人ならば流行やまわりの声に流されず、生き方も自分流を貫くべき。そんなことを教えてくれる作品だ。「直感は大事にしたほうがいいわ」とレイを励ます妻アニーのセリフも実に印象的だ。
『はじまりは5つ星ホテルから』
製作年/2013年 監督/マリア・ソーレ・トニャッツィ 出演/マルゲリータ・ブイ、ステファノ・アコルシ
自分の価値観を持ってこそ大人!
5つ星ホテルに泊まったことがある人はどのくらいいるだろうか。本作の主人公イレーネは、ホテルの格付け覆面調査員。世界中の5つ星ホテルに一般客として宿泊し、清掃、ベッドメイキング、ポーターやフロントの対応、レストラン、ルームサービスなど様々なことをチェックする。
アルプスの絶景を望むスイスのリゾート、グシュタード・パレスホテル、ドイツ・ベルリンのホテル アドロン ケンピンスキー、モロッコ・マラケッシュのパレ・ナマスカ、中国・上海のザ・プリ・ホテル・アンド・スパ……。登場するホテルはすべて実在の高級ホテルなので、贅沢空間は眼福でワクワク! ああ、こんな素敵なホテルに泊まる優雅な旅をしてみたい!
さて、そんな羨ましい(?)ライフスタイルのイレーネは、仕事に誇りを持ち、休日には溜まったマイレージで気ままにひとり旅し、自分でも満足していた。けれどもアラフォーにして結婚もしていないことを家族に本気で心配される。さらに、一番の親友の元婚約者には新しい家族ができてしまう。そんな周囲の出来事をきっかけに人生について見つめ直すイレーネ。けれど価値観は人それぞれ。自由で自立している彼女は最高にカッコイイ!
『食べて、祈って、恋をして』
製作年/2010年 監督/ライアン・マーフィ 出演/ジュリア・ロバーツ、ハビエル・バルデム
主人公とともに心のモヤモヤを浄化して!
人は人生に迷うと自分探しの旅に出たくなるのだと思う。“ここじゃない何処かへ”。というわけでリズ(ジュリア・ロバーツ)は離婚して、1年間のモラトリアムをもうけて世界を旅することに。まずイタリアで美味しいイタリアンとワインに舌鼓みを打ち、陽気で情熱的なイタリア人に囲まれ日常を謳歌。次はヨガの導師を訪ねてインドへ行ってチャクラを開くべく祈り続けるも煩悩は消えないと悟り、最後は以前、リズに“予言”を与えてくれたバリの薬師のもとを再訪する。
食、癒し、恋。旅の醍醐味と、イタリア、インド、バリというそれぞれ雰囲気が全く異なる“異国情緒”を約2時間20分ちょっとの間にたっぷり味わえるのが本作。各地でリズは何を見つけ、どう変化するのか。旅によって心のモヤモヤが浄化され、いい表情になっていくリズに注目。世界には不思議な縁で結ばれている、まだ出会っていない人がいるのかもしれない。そんなことを思わせてくれる旅映画だ。
『しあわせはどこにある』
製作年/2014年 監督/ピーター・チェルソム 出演/サイモン・ペグ、ロザムンド・パイク
”しあわせ”とは何か?
本作は自分探しならぬ、幸せ探しの旅に出る精神科医・ヘクター(サイモン・ペグ)の物語。恋人クララ(ロザムンド・パイク)と何不自由なく暮らしているヘクターは、患者の話を聞くうちに幸せとは何かという疑問を持ちはじめ、答えを求めて世界をまわることに。飛行機で隣になった銀行家と上海のきらびやかな夜を楽しみ、チベットで思わぬ親切と思わぬ進歩に接し、アフリカでは犯罪に巻き込まれ、LAでは元カノに会う。
旅の途中で気づいたことを書きとめるヘクターの言葉やセリフは名言ばかり。「比較すると幸せは台無しになる」「不幸を避けるのが幸福への道ではない」「話を聞くことは愛を示すこと」「過去は懐かしいけど戻らない」などなど。普段、何げなく過ごしていると気づかないことも旅という非日常の中でなら実感できる。世界中の様々な人の“しあわせ”を本作で感じてみて。
『アバウト・シュミット』
製作年/2002年 監督・脚本/アレクサンダー・ペイン 出演/ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ、ホープ・デイヴィス
その後の人生を楽しむヒントがここにある!
多くの人にとって“引き際”を感じるのは、定年退職を迎えるときかもしれない。今作の主人公、ウォーレン・シュミットも長年、地道に勤務していた保険会社を66歳で定年退職。しかし、そこから波乱万丈の運命が待っていた。妻が急死して途方に暮れ、娘が連れてきた婚約者も気に入らない。ジャック・ニコルソンの熱演&怪演もあって、第2の人生に振り回される男の哀感に、気づけば感情移入してしまう巧妙な1作だ。
この映画が描くのは“引き際”を経験した後の生き方。人間というものは、それまで生き甲斐だったなにかを失ったとき、ストレスが膨れ上がったり、ガックリ落ちこんだりするもの。今作のシュミットの場合、運命も感情の起伏も劇的なのだが、引き際の後の人生にどう対処するべきか、多くのヒントが隠されていたりする。アレクサンダー・ペイン監督は、黒澤明の名作『生きる』を参考にして脚本を書いたとのこと。笑いと感動のブレンドも絶妙だ。
『カンパニー・メン』
製作年/2010年 製作・監督・脚本/ジョン・ウェルズ 出演/ベン・アフレック、ケヴィン・コスナー、クリス・クーパー、トミー・リー・ジョーンズ
まわりが差し伸べる手を、どう受け入れる?
人生経験を重ね尽くしたり、自分の限界をわかっていれば、引き際も受け入れやすい。ところが、まだこれからという時期に突然の引き際を突きつけられると、苦悩して迷走する可能性も高い。今作でベン・アフレックが演じるボビーは、リーマンショックの影響下、要職にあった大企業でまさかのリストラ。再就職に奔走するのだが、以前の年収にこだわり、なかなか新たな仕事が見つからない。看護士として家計を支えようとする妻とも、高級車を手放すかどうかで口論する。余計なプライドと未練で、現実に向き合えない大人だ。
そんなボビーは妻の兄の大工仕事を手伝うことになり、かつては見下していた、しかも慣れない肉体労働にいそしむことになる。思わぬ引き際に直面した人に、まわりが差し伸べる手。それを本人がどう受け入れ、今後の人生に対処するべきかを、今作は教えてくれる。生きていれば納得できない引き際も訪れる。しかしその後も希望を忘れてはいけないのだ。
text:Tatsuji Nagano、Mayuko Kumagai、Hiroaki Saito
photo by AFLO