Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2021.05.22

パクリは深い愛情とリスペクト!
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~Vol.2『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編

クエンティン・タランティーノの衝撃の監督デビュー作『レザボア・ドッグス』の影響力は、1992年の公開以来、30年近くずーっと衰えずに続いている。もはや後遺症とでも呼んだほうが正確か。

 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『レザボア・ドッグス』(1991年)

例えばダイナーでの与太話のあと、黒いスーツに身を包んだ6人のギャングたち(+2人)が歩いてくる鮮烈なオープニングシーン。この露骨なパロディだけでも、『スウィンガーズ』(1996年/監督:ダグ・リーマン)といった初期のフォロワーから、今年4月に劇場版が公開されたテレビ東京系の深夜ドラマシリーズ『バイプレイヤーズ』(2017年~2021年/メイン監督:松居大悟)まで、枚挙にいとまがない。 

 
 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『レザボア・ドッグス』(1991年)

またそのシーンで流れていた楽曲、ジョージ・ベイカー・セレクションの『リトル・グリーン・バッグ』は、キリンビール“本麒麟”のCMでもおなじみ。また密室メインで銃撃戦が展開し、三つ巴で拳銃を突きつけ合うシーンが登場したら、その映画は確実に“レザボアの子供”である。

そして『レザボア・ドッグス』と双璧の影響力を持つタランティーノ作品が、1994年の第2作『パルプ・フィクション』だ。 

 
 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『パルプ・フィクション』(1994年)

これ以降、「時制をシャッフルしながら饒舌な与太話を交えて笑いと暴力を描く」という作風をなぞった映画の数は計り知れない。オープニング使用曲のディック・デイル&デルトーンズの『ミザルー』は、リュック・ベッソン製作の『TAXi』シリーズ(1998年~2018年)のテーマ曲にそのままスライド。 

 
 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『パルプ・フィクション』(1994年)

有名なジョン・トラボルタ&ユマ・サーマンのダンスシーン(曲はチャック・ベリーの『ユー・ネバー・キャン・テル』)は、つい最近も『パーム・スプリングス』(2020年/監督:マックス・バーバコウ)に類似場面が登場していた。『レザボア・ドッグス』も『パルプ・フィクション』も、まるで気合の入ったタトゥーのように消えない現代映画史のツメアトである。 

 
 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『パルプ・フィクション』撮影時のクエンティン・タランティーノ監督

しかしなぜ、タランティーノの映画はこれほどカジュアルに真似されるのか。パクリたくなるほどかっこいいから、という単純な理由も当然あるが、ほかならぬタランティーノ自身が“パクリ”という態度を肯定的に広めた張本人だから、との点も見逃せない。

『レザボア・ドッグス』が登場したとき、ほとんどのシーンに“元ネタ”が存在することが映画マニアの間で話題になった。例えば先述した「三つ巴で拳銃を突きつけ合うシーン」などは、チョウ・ユンファ主演の香港ノワール映画『友は風の彼方に』(1987年/監督:リンゴ・ラム)のパクリだ。近い時期でいうと、小沢健二の『ラブリー』のイントロがベティ・ライトの『クリーン・アップ・ウーマン』にそっくりなんだけど……みたいなノリである。

しかしタランティーノはそこで誤魔化すのではなく、むしろ自分から喧伝した。俺はフカサク(深作欣二監督)やサニー千葉(千葉真一)やジョン・ウーが大好きなんだよ!と“元ネタ”のすべてを嬉しそうにバラしていったのだ。“映画愛”の熱烈な表明として。

パクリという言葉は少々品がないので、よく世間ではオマージュと言い換えられたりもするが、若かりしのタランティーノは「偉大なアーティストは『盗む』もんだ。オマージュを捧げたりはしない」(英『エンパイア』誌1994年11月号)と豪語していたので身も蓋もない。だが彼のパクリは深い愛情とリスペクトを前提とした引用であり、“サンプリング”という言い方が最もふさわしいのではないかと思う。

言うならば、タランティーノはDJのような発想で映画を組み立てている。そして彼の場合はつなぎ方――ネタとネタの組み合わせ(編集)が抜群にクールなのだ。例えば先述した『パルプ・フィクション』のダンスシーンも、ジョン・トラボルタ主演のディスコ映画『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年/監督:ジョン・バダム)をベースに、アート映画の金字塔『8 1/2』(1963年/監督:フェデリコ・フェリーニ)のワンシーンを模倣したものだ。そこにチャック・ベリーのグッド・オールド・ロックンロールを乗っけるなんて、「もはやオリジナル」としか言いようがない。

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)
 

 
こんな芸当が可能になったのは、おそらくタランティーノが映画学校のようなアカデミアではなく、レンタルビデオ店(カリフォルニアのマンハッタンビーチにあった“ビデオ・アーカイブス”)でバイトしながら映画を大量摂取したからではないか。独学の人だからこそ、既成の文脈に囚われない、“俺基準”で好きなものを自由につないでいく凄腕DJとしての映画監督が登場したわけだ。
 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『キル・ビル』(2003年)
 

 
ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~『レザボア・ドッグス』&『パルプ・フィクション』編
『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007年)

その後も『キル・ビル』(2003年)や『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007年)など、ありとあらゆるジャンルの“元ネタ”を膨大な知識量をもとにつないでいく、そのセンスは唯一無二だ。彼はかねてから「長編映画を10本撮ったら引退する」と公言しているが(現在、2019年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で9本め)、30年選手となった今も絶対王者として君臨し、観客席やビデオルームといったフロアを沸かせているのである。

『レザボア・ドッグス』
製作年/1991年 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 出演/ハーベイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、スティーブ・ブシェミ

『パルプ・フィクション』
製作年/1994年 原案・監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 出演/ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、ブルース・ウィリス
 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタントエレガントな時間を、手元に宿す。
SPONSORED
2025.11.28

Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタント
エレガントな時間を、手元に宿す。

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!
SPONSORED
2025.12.01

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!
大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!

1950年にはじまった〈ゴールドウイン〉のヒストリー。その新作スキーウエアコレクションの名前は、創業地にちなんだ“オヤベ”だ。歴史の深みを感じさせ、エイジレスなスタンダードデザインでありながら、機能は最新鋭。素材はもちろん、ひとつひとつの…

TAGS:   Fashion
初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!
SPONSORED
2025.11.25

初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!
カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!

一流は一流を引き寄せるとは、よくいわれること。ロックアーティストHYDEがまとったのは“キング・オブ・ダイヤモンド”として名高い、世界最高峰のジュエリー&ウォッチブランド〈ハリー・ウィンストン〉。常に最高を求め続ける両者が出会うと、どんな…

TAGS:   Fashion Watches
〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!さりげに違い出しできる大人の冬アウター
SPONSORED
2025.11.25

〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!
さりげに違い出しできる大人の冬アウター

冬カジュアルの主役であるアウターは、さりげなく違いが出せる1着を選びたい。そこで注目すべきなのが、大人のための上質な冬アウターに定評のある〈タトラス〉。定番ベースのシンプルなデザインを基本としつつ、街ゆく人をハッとさせるさりげない“違い”…

TAGS:   Fashion
〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!大人の革小物はさりげなロゴ使いで!
SPONSORED
2025.11.25

〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!
大人の革小物はさりげなロゴ使いで!

普段、バッグや靴ほど目立たないが、意外とセンスを問われるのが財布などの革小物。大人ならシンプルながらも品があって、さりげない上質感のあるものが狙いめだ。となれば〈サンローラン〉の革小物を。小ぶりなアイコンロゴがピリッと効いた財布やカードケ…

TAGS:   Fashion
俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!
SPONSORED
2025.11.25

俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!
“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!

航空計器から着想を得た革新的なデザインが人気の〈ベル&ロス〉から、2本の限定モデルが登場した。情熱的な輝きを放つダイヤルの赤と闇夜にクールに浮かび上がる蓄光の緑。異なる魅力を宿す2本のパワーウォッチがファッションシーンでも注目を集める俳優…

TAGS:   Fashion Watches
大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!冬カジュアルに効く品格バッグ!
SPONSORED
2025.11.25

大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!
冬カジュアルに効く品格バッグ!

大人の冬カジュアルに欠かせない名脇役がバッグ。どんな着こなしにも似合う上質なバッグがあれば、気分よく外出できるというもの。そこでおすすめしたいのが、〈フルラ〉の新作として登場した“アーバン バックパック”。コートなら背負って、短丈ブルゾン…

TAGS:   Fashion
機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?
SPONSORED
2025.11.25

機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!
こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?

男のカジュアルウエアは、ワークやミリタリーをモチーフにしたタフで骨太なアイテムが定番。それは服だけでなく、足元も同じだ。とはいえ往年のワークブーツなどでは、履き心地やスペック的に現代の暮らしにフィットしない!? ならば、〈アシックス〉のワ…

TAGS:   Fashion
“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!“上質”を贈りたい 大人のギフト!
SPONSORED
2025.11.25

“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!
“上質”を贈りたい 大人のギフト!

クリスマスに忘年会、そしてニューイヤー……年末年始は、特別なギフトシーズン。頑張った自分へのご褒美に、大切な人に感謝を込めて、“とっておきの上質”を贈りたい。自分の身と心を一新させるようなワザありの逸品から、相手の顔が思わずほころぶ名品ま…

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。
SPONSORED
2025.11.18

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。
ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。

上質なレザーのしなやかな感触と使い勝手の良さで支持を集めている〈アニアリ〉のバッグ。ミニマルで洗練されたデザインは、装いを自然に洗練されたものへと導いてくれる。また、確かな日本の職人技に裏打ちされた使いやすさと安心感が、使うほどに深まる風…

TAGS:   Urban Safari Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ