【まとめ】こんな未来がきっとくる!?SF映画28本!
『Safari Online』で紹介してきた映画作品の中から、SFジャンルに絞って再構成し、一挙ご紹介!
『スペース カウボーイ』
製作年/2000年 製作・監督・出演/クリント・イーストウッド 出演/トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド
老人たちが宇宙を目指す!
旧ソ連時代からロシアが使用していた通信衛星が、故障により制御不能に。当時の技術を知る技術者のほとんどが世を去っており、元米空軍パイロット、フランクに、そのミッションが回ってくる。若い頃、宇宙開発に貢献するも、史上初の宇宙飛行士になる夢を断たれたフランクは当時の飛行士仲間3人と再び手を組み、ミッションに取り組む。彼ら4人の老人たちは、過酷な任務に向けて猛特訓を積み重ね、ついに宇宙へ飛び立つが……。
老雄クリント・イーストウッドが宇宙飛行士という意外な役に挑みつつ、監督を兼任。元宇宙飛行士候補生だったとはいえ、そもそも老人たちを宇宙に飛ばすのは現実的ではない。しかしイーストウッドは、宇宙に飛ぶのが彼らでなければならない設定を用意。腰痛や老眼といった老いをユーモアに転化しつつ、それを乗り超えて50年来の夢をかなえようとする男たちの熱きドラマを紡ぐ。飛行士のひとりに扮した、こちらもベテラン、名優トミー・リー・ジョーンズの名演も忘れ難い。
『バーチュオシティ』
製作年/1995年 監督/ブレット・レナード 脚本/エリック・バーント 出演/デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ
デンゼルとラッセルが共演!
犯罪者の人格をデータ化し、撃退法を研究する画期的なバーチャルリアリティ装置から、凶悪犯罪者のAIモデル、シド6.7が実体を得て現実世界へと逃亡。この脅威を排除すべく、かつて装置の実験台としてシドと戦ったことがある囚人バーンズが特赦と引き換えに、追跡にあたることに。バーチャルリアリティの世界から抜け出した不死身の悪党を逮捕することができるのか!?
全編アップテンポで、よい意味でB級感たっぷりの佳作。アカデミー賞俳優デンゼル・ワシントンが主人公バーンズを演じているのがミソ。かつて妻子を殺されたバーンズは、その犯人の人格を宿すシド6.7に怒りを燃やす。そういう意味では復讐のドラマでもあり、デンゼルらしい人間味も活きる。一方で注目したいのが、当時売り出し中で、のちに『グラディエーター』でアカデミー賞俳優となるラッセル・クロウの、シド役の妙演。息を吸うように悪事を重ねる軽やかなヴィラン像は、今では想像できない!?
『イーオン・フラックス』
製作年/2005年 監督/カリン・クサマ 脚本/フィル・ヘイ、マット・マンフレディ 出演/シャーリーズ・セロン、マートン・ソーカス
シャーリーズの初々しいアクションが光る!
新種のウイルスにより人類の99%が死滅してから400年後の25世紀。復興したように見える世界で、人々はワクチン開発者の子孫による圧政に人々は苦しめられていた。妊娠中の妹を政府によって殺された女性イーオン・フラックスは反政府組織最強の戦士となり、復讐のための戦いに乗り出す。しかし、彼女には独裁者をどうしても殺すことができなかった。そこには驚くべき秘密が……。
MTVで放映されたアニメシリーズに基づくヒロインアクション。シャーリーズ・セロンは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をはじめとするアクション映画でタフな女性を演じているが、その原点は『モンスター』でアカデミー主演女優賞を受賞した後に主演した本作だ。抜群の身体能力を誇る女戦士を、しなやか、かつスピーディな立ち回りとともに熱演。意外な事実を受け入れ、さらなる戦いへと突き進むヒロインの姿は、『ブラック・ウィドウ』などの強いヒロイン像にも連なる。
『ダークマン』
製作年/1990年 原作・監督・脚本/サム・ライミ 出演/リーアム・ニーソン、フランシス・マクドーマン
怒りの超人パワーでスーパーヒーローに変身!
主人公は人工皮膚の研究に勤しむ天才科学者ペイトン。弁護士である恋人が絡んだ事件に巻き込まれ、ギャングに襲撃された彼は、身元の判明ができないほどの大火傷を負い、特殊治療を受ける。火傷の痛みは消えたが、感情の制御ができず、怒りだけが増幅され、それは彼に超人的なパワーを宿らせることに。やがてペイトンは正体不明のスーパーヒーロー、ダークマンとなり、恋人を危機から救うために壮絶な戦いに身を投じる。
『シンドラーのリスト』のような重厚なドラマの一方で、『96時間』などのアクションもこなすベテラン、リーアム・ニーソンだが、そんな彼のアクションヒーローの原点といえば、やはりこの作品。いら立ちや怒りなどの感情の起伏を表現し、異形のスーパーヒーローに説得力をあたえた。ちなみに監督のサム・ライミは後に『スパイダーマン』シリーズで売れっ子になり、ヒロイン、フランシス・マクドーマンドは3度のアカデミー賞に輝くなど、ニーソン以外にもブレイクスルー映画人を輩出。
『プレデターズ』
製作年/2010年 製作/ロバート・ロドリゲス 監督/ニムロッド・アーントル 出演/エイドリアン・ブロディ、アリシー・ブラガ
エイドリアンがタフな男を熱演!
謎の閃光に導かれ、どこかもわからないジャングルにパラシュートで着地した人々。見ず知らずの彼らは兵士や工作員、暗殺者、殺人犯で、殺人を得意にしていることに共通点があった。実は、この場所は狩猟エイリアン、プレデターの母星で、彼らは地球から拉致された狩りの標的だった。傭兵のロイスは絶望的な状況下で、プレデターへの抵抗を続け、サバイバルとともにこの星からの脱出を図る。
SFシリーズの人気キャラであるエイリアン、プレデターを題材にしたシリーズの第3作。抵抗する人類に扮した俳優の中でも、『戦場のピアニスト』でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディが、その繊細な個性とは逆を行く、タフな傭兵ロイスに扮しているのが面白い。観察力に優れ、リーダーシップを発揮するばかりか、銃やナイフ使いも鮮やかにサバイバルを図る男。まさにアクションヒーローそのものの大熱演!
『her/世界でひとつの彼女』
製作年/2013年 製作・監督・脚本/スパイク・ジョーンズ 出演/ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、スカーレット・ヨハンソン
人間とA.I.が恋したら、こうなる!?
舞台は、そう遠くない未来のロサンゼルス。手紙の代筆ライターをしている男セオドアは、人工知能を備えた最新鋭OSを手に入れてインストール。音声で答えるこのOS、サマンサには人間の感情を理解し、学習する機能が。離婚の痛手を引きずっていたセオドアは“彼女”に心惹かれ、強い絆を感じるようになる。サマンサも、そんな彼の思いに応えるが、彼らのロマンスは予期せぬ方向へと向かっていく。
人間はA.I.と恋に落ちることが可能なのか? そんな疑問に『かいじゅうたちのいるところ』のスパイク・ジョーンズが答えたユーモラスで切ないラブストーリー。多くのプログラマーの人格情報を集積したことで、人間の心理を知るサマンサは恋をすることもできるのだから驚き。それどころが、バーチャルセックスもしてしまうのだから、コンピューターとの恋愛も可能に思えてくる。学習の速度が人とは異なる驚速ぶりなので、同じ速度で人生を歩めないのが問題!?
『チャッピー』
製作年/2015年 原作・監督・脚本/ニール・ブロムカンプ 出演/シャルト・コプリー、デーヴ・パテール、ヒュー・ジャックマン
A.I.も育て方次第で悪人にもなる!?
人工知能を持つロボット警官が導入された近未来の南アフリカ。人工知能の開発者は、このロボットをさらに進化させ、人間の感情を模倣するA.I.を作り出すが、採用は見送られた。諦めきれない開発者は、この人工知能を搭載したロボットを秘密裏に制作。しかし、3人組の窃盗団が、これを盗み去る。3人は、学習能力を持つこのロボットをチャッピーと名付けて育てるが、武装機能を備えたチャッピーは思わぬ混乱を引き起こすことに。
『第9地区』などの近未来映画を放ってきたニール・ブロムガンプ監督が描く、このA.I.は人間のような成長を遂げるのが特徴的。最初は赤子のように無垢で、教えたことは猛スピードで吸収し、グレたりしながら“大人”になっていく。これだけならば人間の代わりとしては理想的な存在だが、元々は警備用に作られたので、戦闘能力は超人級。悪い親に育てられたりしたら、最悪の結果にもなりうるのだ。
『トランセンデンス』
製作年/2014年 製作総指揮/クリストファー・ノーラン 監督/ウォーリー・フィスター 出演/ジョニー・デップ、レベッカ・ホール
工学者の頭脳とA.I.を一体化させるとどうなる!?
主人公ウィルは妻エヴリンとともに、世界を理想的なものとするための人工知能を研究していたが、人工知能の発展を危惧する狂信的なテロ集団の凶弾に倒れる。彼と死別したくないイヴリンは、ウィルの意識をA.I.にアップロード。これにより、人工知能は、とてつもない進化を遂げ、あらゆる情報を取り込み、ついには難病をも治療可能にしてしまう。だが、この人工知能は、またしてもテロの標的に。ウィルの意識を宿したA.I.は、人類に何をもたらすのか?
『TENET テネット』のクリストファー・ノーラン監督が製作、ノーラン作品で撮影監督ウォーリー・フィスターの演出による近未来スリラー。高い理想を持つ工学者の意識が、最先端のA.I.と一体化したとき、何が起こるのかをシミュレートする。地球のために人類は滅ぶべきか? テーマはそんな領域にもおよぶが、面白いのはウィルの意識がA.I.化してもなお妻を愛していること。人工知能となっても、愛ゆえの行動をとるのが面白い。
『ロボコップ』
製作年/1987年 監督/ポール・バーホーベン 出演/ピーター・ウェラー、ナンシー・アレン
人間の良心が備わっていることが大事!?
舞台は荒廃しつつある近未来のアメリカ、デトロイト。犯罪を抑制するべく、当局はハイテク企業が開発したロボット刑事の起用を検討。その初号機は、殉職した善良な警官マーフィの脳が埋め込まれていた。このロボコップは治安維持に大きく貢献し、一躍注目の的になる。だが、これを快く思わない悪党たちが暗躍。一方では、ロボコップの中で抑圧されていたマーフィの意識が少しずつ芽生えつつあった。
ロボット刑事の活躍を描いて大ヒットを飛ばし、シリーズ化&リメイクに発展した定番SFアクション。人間の意識とテクノロジーが一体となるのは、今となってはありがちだが、その主体はA.I.ではなく人間にあり、サイボーグと表現するのが正しいのかもしれない。ともかく、このロボコップは人間が持つ良心を失っておらず、あくまで法と道徳に基づいて行動し、必要に応じた武装を備えている点がユニーク。こんな警官ばかりなら、世の中も平和になる!?
『エクス・マキナ』
製作年/2015年 監督・脚本/アレックス・ガーランド 出演/アリシア・ヴィキャンデル、ドーナル・グリーソン、オスカー・アイザック
見た目がよいA.I.には、ご注意を!?
検索エンジンの最大手企業で働く若きプログラマー、ケレイブは、ある日、雇い主にして天才的な工学者の人里離れた別荘に招かれる。そこで新たに与えられたのが、A.I.を搭載した新開発の女性型ロボット“エヴァ”が実用可能かどうかを判定する仕事。別荘内でエヴァと接触し、会話を重ねるケレイブは、人間のように話すばかりか、セクシーな肢体を持つエヴァに恋焦がれるようになる。しかし、そこには何者かの驚くべき策略が潜んでいた!
『28日後…』の脚本家として映画ファンにはおなじみの人気作家アレックス・ガーランドが気鋭のスタジオ、A24の製作下で監督デビューを飾ったスリラー。本作のA.I.=エヴァの特色は、あらゆるデータにアクセスできる優秀さもさることながら、ビジュアル的な“色気”を持っていること。オタクなプログラマーを手玉にとるのは容易く、これを利用して“自由”を手に入れようとする。A.I.であっても、女性はコワイ!?
『インセプション』
製作年/2010年 出演/レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レヴィット
夢の中へ入り込む奇抜な物語!
“誰もトライしたことのなかった世界観”。これもクリストファー・ノーラン監督のポリシーで、最大限に発揮されたのが『インセプション』だ。他人の夢の中に侵入して、その相手の深層心理や情報を盗んだうえに、別の考えで洗脳するという超奇抜ワールド。
さらに夢の中で見る夢、またその先……と重層的な世界が展開し、登場人物たちが今どの段階にいるのか考えながら観ることで、脳細胞が刺激される感覚に! ノーラン作品として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされ、撮影賞など4部門で受賞を果たした。
有能な産業スパイだが、国際指名手配犯となったコブが、サイトーという男から、ターゲットの人物に潜在意識を植えつけるという依頼を受ける。エキスパートを集めたコブの壮大なプロジェクトは、日本など世界各国が舞台のスケール感。建物が自在に変化し、動く表現や、360度回転するセットで撮影した無重力のアクションなど、未体験のビジュアルが全編にあふれまくっている。
現実か夢か不明なシーンもあり、結末の受け止め方も人それぞれ。このあたりは最新作『TENET』に似ている。レオナルド・ディカプリオと渡辺謙も共演も話題になった。
『インターステラー』
製作年/2014年 出演/マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャスティン
“時空のトンネル”ってなんだ!?
クリストファー・ノーラン監督作品でも、異彩を放つSFアドベンチャー。地球での環境破壊が進み、植物も育たない食糧難で人類は危機に瀕していた。そこで移住可能な惑星を見つけるため、別の銀河系へ調査隊が送り込まれる。
その宇宙飛行士クーパーと、地球に残る彼の娘マーフの関係を軸にストーリーが展開。理論物理学者、キップ・ソーン博士の“ワームホール理論”を基に物語が作られたが、家族ドラマとしてのテイストも強い一作だ。
ワームホールといっても聞きなれない言葉だが、簡単にいえば“時空のトンネル”。くぐると瞬時に別の場所へ移動できるものの、時間も変わってしまい、ワームホールを通って惑星へ向かったクーパーたちが再び地球に戻ってくると、ものすごい時間が経過している、ということ。
つまり愛する家族は、とっくに亡くなっている可能性もある。宇宙空間と地球のズレというテーマを、異次元的なエンターテインメントとして完成。宇宙船内外や、到達する惑星など、リアリティ満点に感じられるビジュアルに圧倒されまくる!
『ターミネーター2』
製作年/1991年 監督・脚本/ジェームズ・キャメロン 共演/リンダ・ハミルトン、エドワード・ファーロング
無骨なアクションヒーロー像を確立!
2019年には最新作も公開され、誰もが認めるアーノルド・シュワルツェネッガーの代表作シリーズ。その中でも最高の人気を誇るのが、この第2作。1作めではヒロインのサラ・コナーを抹殺するために未来から送り込まれたターミネーターのT-800。つまり“悪役”だったわけだが、この続編では、サラの息子ジョンを殺そうとするT-1000に対し、ジョンを守ろうとする。悪役が“味方”に変貌したことで、観る者の心をグッとつかんで離さない。
液体金属として姿を自在に変えるT-1000。公開当時はその驚異のビジュアルが話題になった。一方のシュワのT-800が、やや旧式のパワーで、あくまでも真っ向勝負に挑む。マシンなので基本的に無表情。ジョン・コナーから人間の心を学ぶ姿も微笑ましく、無骨のアクションヒーローというシュワの原型が完成した1作と言っていい。日本では1991年、ぶっちぎりのナンバーワンヒット。あの有名なラストシーンや、「地獄で会おうぜ(アスタ・ラ・ビスタ)、ベイビー」といった名セリフなど、いつまでも心に残っている人も多いはず。
『マトリックス』
製作年/1999年 監督・脚本/ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー 出演/キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス
最強へと成長するキアヌにグッとくる!
言わずと知れたアクション映画の金字塔。コンピューターによって作られた仮想現実から目覚めたネオ=キアヌが、モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)やトリニティ(キャリー=アン・モス)と共にコンピューターから人類を解放するための戦いに身を投じていく姿が描かれる。
VFX、ワイヤーアクション、バレットタイムなど、本作以前・以後ではアクションの撮影技術や表現方法がガラリと変わったことでも歴史的な1本。カラダを後ろにそらして銃弾を避けたり、対峙するふたりが空を舞いながら銃を向けあうなど、有名なシーンは今観てもワクワク度MAX。
特にキアヌが道着姿となり、格闘術を学ぶシーンは日本人にとって胸熱シーン。第2、3作と強くなっていくキアヌもいいのだが、やはり第1作での成長していく姿にはグッとくるものがある。
最新作『マトリックス4』も撮影中。監督はラリーから改名したラナ・ウォシャウスキー、『ジョン・ウィック』のチャド・スタエルスキ監督が前作から引き続きアクションサポートを務めることが発表されている。
『アルマゲドン』
製作年/1998年 監督/マイケル・ベイ 出演/ブルース・ウィリス、ベン・アフレック、ビリー・ボブ・ソーントン
人々の宇宙への憧れがよ〜くわかる!
宇宙から小惑星が飛んで来た。地球にぶつかったら人類はおろかあらゆる生命が絶命してしまう。ということで、宇宙空間で惑星を破壊することに。選ばれたのはNASAが誇る宇宙飛行士たち……ではなくて、石油採掘の荒くれ男たちだった!
と、‘90年代を代表する大ヒット作『アルマゲドン』のちょっと強引なストーリーを紹介してみたが、実はこの映画、グッとくる宇宙エピソードが随所に挟みこまれている。たとえば天体観測に熱中する男が小惑星の第一発見者になるシーン。偏屈者で妻とも不仲、に見せかけて、小惑星に妻“ドティ”の名前をつけて申請するのだ。度を超した宇宙好きに呆れながらもずっと一緒にいてくれた妻へのプレゼント。導入部の短いくだりながら、ロマンと夫婦愛を織りこんだ名シーンだ。
宇宙に旅立つことになった石油発掘チームを送り出すNASAの総責任者もグッとくるキャラ。実はこの男、脚が悪いがために宇宙飛行になる夢を諦めたことがある。そしてNASAを取りしきるまでに出世はしたが、宇宙へ行きたいという気持ちはいささかも失われていない。だからこそ、宇宙にはド素人の採掘チームに対して誰よりも厳しく、そして熱くサポートしてくれるのだ。宇宙旅行が解禁になっても、やはり宇宙に旅立つことができるのは選ばれた人。みんなが託した夢やロマンと一緒に飛び立ってください!
『オデッセイ』
製作年/2015年 監督/リドリー・スコット 出演/マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、ジェフ・ダニエルズ
月旅行の先にある惑星での移住に想いを馳せる!
月旅行が現実ならば、惑星への移住も夢ではない話。そうなったときに、どんな環境で暮らすことになるの? という疑問に答えてくれるのがこちらの作品。
初の火星探査隊が砂嵐に襲われて脱出。ところが死んだと思われた植物学者のワトニーは、火星にたった1人取り残されて生きていた! 遠い火星では、救出隊がたどり着けるのは4年後。絶体絶命のピンチに見舞われても、ポジティブシンキングと創意工夫で生き抜こうとするワトニーを応援せずにいられないサバイバル・ムービーだ。
居住空間で、地球から持ってきた土を利用してジャガイモで畑を作り、ロケットの燃料を利用して水を作り出す。こんな自給自足生活が送れるなら、ひょっとして地球外に引っ越しも夢ではない⁉ と思わせてくれる。けれども、地球同様、自然現象は驚異で、劇中でも猛烈な砂嵐が宇宙飛行士たちを襲う。そう簡単ではなさそうだけど、地球以外の惑星に住む、なんて思うだけで夢が広がるでしょ?
また、この物語の素晴らしさは、主人公のワトニーが魅力的というだけでなく、ワトニーを救おうとする探査隊の仲間や地球の人たちの気持ちがしっかりと描かれていること。世界の国々が利害を超えて、たった1人を救うために結束し協力し合う。なぜなら宇宙にいるのは、全人類の代表だから。惑星移住はまだまだ遠いけれど、月旅行に向かうあなたは、世界を結束させる力を宿すのかも知れない。
『ゼロ・グラビティ』
製作年/2013年 監督/アルフォンソ・キュアロン 出演/サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー
観客をエモーショナルにさせるテクが光る!
ギレルモ・デル・トロと並び、メキシコが生んだ天才監督として絶賛を浴びるアルフォンソ・キュアロン。そのフィルモグラフィは、刹那な青春を描いた『天国の口、終わりの楽園。』から近未来SFの『トゥモロー・ワールド』。果ては『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』まで広範なジャンルで彩られている。
また『トゥモロー・ワールド』で驚異の長回しワンカット(実際にはいくつかのショットが合成されている)を披露するなど、映像の魔術師としても知られている。そんなキュアロンは「一体どんな映画作家なのか?」という問いに答えてくれるのが、キュアロンがアカデミー監督賞に輝き、同時に技術賞各部門を総なめにした『ゼロ・グラビティ』だろう。
人工衛星の修理作業中だった女性宇宙飛行士ライアンが、大量の宇宙ゴミの飛来によって宇宙空間に投げ出される。酸素はわずかしかなく、救出も来ない状況下での、決死のサバイバルが描かれるのだが、キュアロンは本作をSFとして撮ってはいない。あくまでも“宇宙”は極限状態を描くための背景に過ぎず、フォーカスされるのは、一度は生きる希望を失った女性の魂のサバイバルなのだ。
本作においても、冒頭17分の長回しワンショット(これも合成の産物だ)など得意技を繰り出しているが、決して技術のひけらかしではない。宇宙にいるライアンの感覚を観客に共有してもらうための17分であり、技術もテクもすべてはエモーショナルなドラマに引きこむためのお膳立て。技巧派のようで“熱い”監督なのである。
『パシフィック・リム:アップライジング』
製作年/2018年 製作/ギレルモ・デル・トロ 監督・脚本/スティーヴン・S・デナイト 出演/ジョン・ボイエガ、スコット・イーストウッド
ギレルモ・デル・トロ監督の特撮愛がすごい!
『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を獲得したギレルモ・デル・トロ監督が、日本の特撮作品への愛をたっぷりと注ぎこんだ『パシフィック・リム』。今回、デル・トロ自身は製作にまわったものの、怪獣や日本文化へのリスペクトは引き継がれ、前作以上の仕上がりになっている。地球の存亡を賭けて、東京、富士山を舞台にKAIJU対イェーガーの超ヘビー級バトルが勃発する!
前作から10年後を描く本作。主人公は、先の大戦で活躍した英雄ペントコストの息子ジェイク。このジェイクを演じるのが、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で名を馳せたジョン・ボイエガだ。
本作での日本文化へのリスペクトは演出の面からも感じられる。日本人だからこそ思わずニヤリとしてしまう妙味があるのだ。というのも、日本のアニメや戦隊ヒーローからインスピレーションを得たのではないかと思われるシーンが随所に登場するから。地球侵略を目論むKAIJUと国際防衛組織の人型巨大兵器イェーガーがクライマックスで激突する地は、なんと東京! 巨大ビルが建ち並ぶ近未来の街並みもさることながら、そこではあの“RX₋78₋2ガンダム”が、一瞬だけだが登場するので、そちらにも是非注目してほしい!
『レディ・プレイヤー1』
製作年/2018年 製作・監督/スティーブン・スピルバーグ 出演/タイ・シェリダン、オリビア・クック、ベン・メンデルソーン、サイモン・ペッグ
まさかのガンダムVSメカゴジラがハリウッドで実現!”
スティーブン・スピルバーグ監督といえば、かつて『ジョーズ』でパニック映画を、『E.T.』で宇宙人との交流を、『インディ・ジョーンズ』シリーズで冒険活劇を、そして『ジュラシック・パーク』ではCGによる恐竜を……と、映画のジャンルや映像に革命を起こしてきた。そんな監督のスピリットを久々に感じさせるのが、『レディ・プレイヤー1』だ。VR(ヴァーチャル・リアリティ)で体感する驚きの世界が未知の体験に案内する、“映画”本来の目的を達成している。
専用のゴーグルとグローブを着ければ、世界中の誰もが入りこめる仮想空間“オアシス”。無限のように、様々な光景が広がるオアシス内の映像は、圧巻の一言だ。オアシスの創始者の遺言に従った“宝探し”の冒険は、まず、ニューヨークに似た仮想都市でのカーレースにはじまるのだが、このシーンのスピード感、ドライバー目線の臨場感は、われわれ観客もVRを体感するレベル。一気にオアシスの世界に引きこまれる。テンポ、ダイナミズムとも、アクション娯楽作の見本のようなこのシークエンスは、さすがスピルバーグ!
本作のように、自分の“意識”が別の空間のキャラクターを動かす設定は、過去にも『アバター』などの作品にもあったが、オアシス内のキャラクターは『アバター』のように生々しくなく、かといって“いかにもCG”ではない。リアル感と作り物感のバランスが絶妙。このあたりでもほかのアクション映画とは一線を画す、革新的ビジュアルが達成されたといってよさそう。
オアシス内に、’80年代を中心にしたカルチャーネタ(映画・音楽・漫画・人気キャラ)を発見できるのも本作の大きな楽しみで、ガンダムや『AKIRA』のバイクの活躍は日本人にうれしい(ウルトラマンなど、原作に登場しても権利の問題で出てこないキャラもいる)。特にガンダムVSメカゴジラなど日本では絶対にあり得ない対決がハリウッドで実現しているところはオタクならずとも大注目だ。しかし、それらをスルーしても、作品全体に’80年代映画の豪快で、ちょっと懐かしいテイストが充満しており、当時の映画にハマった人はノスタルジーに浸り、そうでない人は逆に新鮮に映るはず。『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』、さらにジョン・ヒューズ監督作のように、’80年代青春ストーリーの味わいも復活している。
革新的な映像と、映画の歴史への愛。その両方をスティーブン・スピルバーグは究極のスタイルで達成した。本作と『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を、ほぼ同時進行で作ったなんて、やっぱりこの人、映画の天才である。
『ランペイジ 巨獣大乱闘』
製作年/2018年 製作・監督/ブラッド・ペイトン 出演/ドウェイン・ジョンソン、ナオミ・ハリス、マリン・アッカーマン
巨獣とドウェインの対決に震える!
ゴリラ、オオカミ、ワニが巨大化し、シカゴの都心部を襲撃する。こう聞くと、『GODZILLA ゴジラ』、『キング・コング』のようなものだろうと高をくくるだろう。しかし、ここにドウェイン・ジョンソンというピースをはめこむとどうだろうか? 途端にゴジラVSシュワちゃん、キング・コングVSスタローンといったようなドリームマッチが頭に浮かび、ワクワクが止まらなくなるに違いない!
ドウェイン・ジョンソンは、アメフト選手からWWFのプロレスラーに転向し、スターダムへのし上がった人物。『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』のゲスト出演を機会に映画俳優としても活動するようになったわけだが、評価を上げたのが、『ワイルド・スピードMEGA MAX』。世界興収を前作の3億ドルから6億ドルへと押し上げ、見事にシリーズの再建に成功。以降、シリーズ作品の復活には欠かせない存在となったのだ。
その魅力は、当然ながら鍛え上げられた肉体にあるのだが、それに加えて評価されているのがコメディ演技。シリアスなアクションシーンだけでなく、日常シーンでのトボけた演技で笑いを誘うことができるのは大きな特長だ。本作でも、“人付き合いが苦手な霊長類学者”という、その巨体にはそぐわない役柄という設定の妙で笑わせてくれる。肉体と幅広い演技力で「ドウェインが出演さえすれば面白くなる」という、ハリウッドの味の素のような存在と化したわけだが、その魅力は本作でさらに昇華している!
霊長類学者デイビスはサンディエゴ野生動物保護区で白毛のゴリラ、ジョージの研究をしている。ある晩、そのジョージが、遺伝子実験の事故により散布されたガスを吸いこみ、一夜にして巨大化してしまう。正気を失い、暴れ狂うジョージに困惑するデイビスだが、巨大化したのはほかにも2体いることがわかり、その原因を解明しようと奔走する。
正直なところ、物語は雑で、脇役陣の演技力もイマイチと、B級感を感じざるをえない。しかし、ご安心を! ひとたび巨獣が暴れ出すとその映像は圧巻! 高層ビル群での軍との攻防戦はド肝を抜く大迫力の連続だし、ドウェインが重火器をぶっ放し、巨獣に立ち向かうシーンなどは、あのシュワちゃんを彷彿とさせるほど魅力的だ。クライマックスは、思わず涙が出るほど感情を揺さぶられる感動シーンが待っているので、観て損はないどころか、鑑賞後は本作の話をしたくて仕方なくなるはず⁉︎
『メイズ・ランナー 最期の迷宮』
製作年/2018年 原作/ジェームズ・ダシュナー 監督/ウェス・ボール 出演/ディラン・オブライエン、カヤ・スコデラリオ、トーマス・ブロディ=サングスター、バリー・ペッパー
巨大迷路映画の完結編
巨大な迷路を命がけで攻略するという設定の妙がウケて、大ヒットとなった『メイズ・ランナー』シリーズ。完結編となる今回は、仲間の救出と謎の解明のため、迷路を仕掛けた組織の本拠地へと乗りこみ直接対決をする物語。冒頭の『ワイルド・スピード』を彷彿とさせる強奪劇に、『バイオハザード』のような感染者との死闘と、アクション映画のよいところをふんだんに詰めこんでいる。序盤は、ややもたつく流れなのだが、終盤で繰り広げられる高層ビル内でのアクションはド迫力で手に汗握る展開に! 主要キャラとの別れもあり、完結編らしいクライマックスが用意されている。ちなみに主演のディランは、この撮影中バイクアクションの事故で、顔の半分の骨を折ってしまうほどの大怪我を負ったそう。
『アド・アストラ』
製作年/2019年 製作・出演/ブラッド・ピット 製作・監督・脚本/ジェームズ・グレイ 出演/トミー・リー・ジョーンズ、リヴ・タイラー、ジョン・オーティス
近未来の宇宙描写にワクワクする!
冒頭の大事故にはじまり、月や火星に建設された宇宙基地など、これまでのSFアクション映画では観たことのないビジュアルが展開。しかも、地球から月への移動が、まるで旅行のような手軽さになっているなど、近未来の風景に驚かされる。あまりのリアルさに、ついついスクリーンの端まで注意深く見てしまうほどだ。一方で月面でのカーチェイスなど、かなり思い切った描写も用意されているから面白い。特に、救難信号を出している宇宙船を救いに行く場面は、衝撃的なのでお見逃しなく!
地球から43億㎞もの旅を描く本作は、マクブライドの複雑な心理面にもフォーカスしている。SFアドベンチャーの興奮する映像に見入っているように思えるが、実は主人公の深〜い人間ドラマが作品世界へ引きこんでいるのだ。そう、これがまさにブラピマジック。彼の集大成といえる理由でもある。ちなみに、この映画をたとえるなら、クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』に近いムードかも。なので、それにハマった人には生涯最高の作品になるかも!
『ターミネーター:ニューフェイト』
製作年/2019年 製作/ジェームズ・キャメロン 監督/ティム・ミラー 出演/リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガー、マッケンジー・デイビス、ナタリア・レイエス
リアリティあるAIの反乱
『T2』でジョン・コナーを守り、溶鉱炉に沈んだターミネーターT-800。しかし、未来から送りこまれた同型がジョンの抹殺に成功する、というショッキングな出来事から幕開け。今度は現代のメキシコシティで、21歳のダニーが最新型ターミネーターREV-9に襲われる。ダニーを守るため未来から強化型兵士のグレースがやって来るのだが……。物語の展開は、シリーズの第1、2作をまとめ、アップデートしたような構成といっていいだろう。復讐心に燃えたサラ・コナーもさすがの貫禄で、とにかく格好がいい。そのサラがダニーの味方に加わることで、守る側も、守られる側も女性が活躍するという、これもまた新鮮で面白いところだ。
注目の最新型ターミネーターREV-9は、触れた相手の外見に変わることができ、なんと2体に分離も可能。さらに、どんなダメージを受けても約30秒で再生するという厄介な能力を持っている。それに対抗する強化型兵士グレースの、性別を超えた力強さには思わず惚れぼれ! さらに、お馴染みのシュワルツェネッガー演じるT-800は、人間らしい哀愁を漂わせるなど渋さ満点。定番の名セリフや彼らしい行動が一風変わった形で登場したり、シリーズファンの心をガッツリと掴むだろう。AI(人工知能)が身近になった現在、シリーズのテーマであるAI反乱は、よりリアリティをもって迫ってくるはずだ!
『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』
製作年/2019年 製作・監督/J・J・エイブラムス 出演/デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ
過去作のオマージュ的仕掛けに感極まる!
ダース・ベイダーに傾倒し、前作で父親であるハン・ソロを死に追いやったカイロ・レン。そして、無敵のフォースを覚醒させたレイ。前者はスカイウォーカー家の“血縁”で、後者はスカイウォーカーから教えを受けた“後継者”。この2人の愛と憎しみの関係を中心に、レイの親が誰なのか? という謎がついに明かされる。
シンプルな家族愛にとどまらず、一歩進んだ絆に深く入りこんでいく描き方は、“現代”のスター・ウォーズらしさが出ているポイントだ。観終わった瞬間、タイトルの意味が立ち現れ、感動がじんわりと染みわたるのも格別。初見の人は、とりあえず人間関係を整理しておいた方がベターだ。
前作後に急死したレイア役、キャリー・フィッシャーの出演部分は残された未公開映像を利用。見事、物語に組みこむことに成功している。
懐かしのカルリジアン(ハン・ソロの宿敵)の登場や、新キャラのドロイドのかわいい活躍。さらに過去の作品へのオマージュ的な仕掛けなど、2時間22分、メリハリの効いた展開で飽きさせない工夫が盛りだくさん。
アクション場面もスター・ウォーズらしく多様な風景が登場。本作で最も魅力的なのは、うねる大波をバックにしたレイとレンの一騎打ち。大スペクタクルのさなか、あのテーマ曲が流れ出す! その瞬間、全身に鳥肌が立つ快感を味わうだろう!
『プロジェクト・パワー』
製作年/2020年 監督/ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン 出演/ジェイミー・フォックス、ジョセフ・ゴードン=レビット 配信/ネットフリックス
超能力を得るためのデッド オア アライブな決断にハラハラ!
誰もが魅せられるこの謎の薬を巡って、怪しい人物や組織が入り乱れるストーリーが展開する今作。なんといってもユニークなのは、薬を飲むまで、どんなパワーが得られるのか不明という点だ。
人体が発火する者もいれば、カメレオンのように背景に擬態するケースもある。さらに銃弾を跳ね返したり、肉体が巨大化したりなど、ありとあらゆるパワーが登場する。さながら『X-MEN』の特殊能力を、割り当てられる感じ。
しかし危険な一面もある。薬の副作用によって、命を落とす者もいるからだ。生死ギリギリの決断が試されながら、スペクタクルで過激なバトルが描かれていく。
アカデミー賞俳優のジェイミー・フォックスが、薬を開発する組織に娘をさらわれた元傭兵役。そして『(500)日のサマー』『インセプション』などのジョセフ・ゴードン=レヴィットが、薬によって多発する犯罪に立ち向かう警察官役。
どちらも、善と悪がミックスされた、一筋縄でいかないキャラクターなので、物語がどう転ぶかわからないサスペンス感も満点だ。この2人に絡むのが薬の売人の少女で、彼女の動向もキーポイントになる。舞台はニューオリンズで、アメリカ南部独特の風景も見どころ。スーパーパワーの勢いのごとく、豪快に突き進んでいくノリを楽しんでほしい。
『TENET テネット』
製作年/2020年 製作・監督/クリストファー・ノーラン 出演/ジョン・デビッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー
1回観ただけでは理解不能!? 何度も観たくなる中毒性アリ!
最大のポイントは、時間の“逆行”。主人公に託されたのは、未来に起こる第三次世界大戦を止めるミッション。謎めいた協力者たち、人類の滅亡をもくろむロシア人の武器商人とその妻が、主人公を激しい戦いへと導いていく。
オープニングのコンサート会場でのテロ事件から、怒涛の迫力である。まるで胸ぐらをつかまれ、画面に引きずりこまれるような感覚が、実にノーラン作品らしい。そして要所では、時間の逆行を示す超奇抜なアクションが繰り出されていく。
撃ったはずの銃弾が銃槍に戻り、クルマが逆走行し、崩壊したビルが元どおりになる。まわりは時間が順行している中、一部だけが逆行するから、カオスの風景だ。なにがなんだかわからないシーンも、後から逆行側の視点で描かれたりするので、そこではじめて意味を理解できたりする。
時間逆行の装置であるドアや、未来から送られてきた武器のアナログテイスト。『007』をはじめスパイ映画へのオマージュ。世界7カ国でのロケ。身長190cmというエリザベス・デビッキが演じるヒロインの不思議なオーラ……と、様々な見どころを揃えつつ、複雑な用語も飛び出したりして、おそらく1回観ただけでは理解不能な人も続出するはず。
しかしわからないまま観ていても異様なテンションに心がわしづかみされる。何度も観て、超難関なパズルを解きたい思いにかられるかも。
『ミッドナイト・スカイ』
製作年/2020年 製作・監督・出演/ジョージ・クルーニー 出演/フェリシティ・ジョーンズ、カイル・チャンドラー 配信/ネットフリックス
リアリティかつスケール感のある映像に圧倒される!
ジョージ・クルーニーが演じるのは、北極の基地に1人で残った科学者のオーガスティン。舞台は2049年。地球は滅亡の危機を迎えている状況で、多くの人が避難先を探す中、彼は宇宙船と交信して、地球に戻ることは危険だと知らせようとする。
孤独な時間を過ごすオーガスティンは、交信のために吹雪の中、遠く離れた天文台へ向かう。彼のサバイバルと奇妙な体験、さらに宇宙船の乗組員たちのドラマも同時進行し、未体験のスリルとスペクタクル、感動を届ける作品に仕上がった。
『ゼロ・グラビティ』では宇宙空間で自らの命を犠牲にしてまで仲間を助けたジョージ・クルーニー。今回は地上から宇宙船を助けるという役まわりだが、ヒゲもボーボーの姿で、より悲壮感を漂わせる表情に心を揺さぶられる。
そして宇宙のシーンにも力が入っており、宇宙船の美しい外観のデザインや内部の最新システムは、斬新ながらリアリティ満点。SF映画ファンが観てもテンションがアガるはず。要所のアクションのスケール感や、思わぬドッキリシーンの入れ方、謎の人物の行動の描写など、“監督ジョージ”の演出力も安定感バッチリ。宇宙船の地球への帰還と、オーガスティンの運命がひとつになるクライマックスも、“大人の演出”で見せきったジョージ、さすがである!
『DUNE/デューン 砂の惑星』
製作年/2021年 原作/フランク・ハーバート 監督・脚本/ドゥニ・ビルヌーブ 出演/ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド
未知の壮大な世界観!
原作は50年以上も愛され続け、最高の評価を受けているSF小説。『スター・ウォーズ』など多くの作品に影響を与え、1984年にはデヴィッド・リンチ監督で『デューン/砂の惑星』として映画化された。壮大な世界観なので、SFファンでなければ腰が引ける人もいるかもしれない。しかし、心配は無用。
今回の監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴは『ブレードランナー 2049』で名作を見事に復活させ、エイリアンと対話する『メッセージ』でも、SF映画ファン以外にも感動を届けた才人。10190年というはるか未来を舞台に、邪悪な一族によって、砂の惑星へ移住した青年ポールとその家族が、策略によって過酷な闘いを強いられる。基本はそれだけで、あとはひたすら未体験ビジュアルに身を委ねればいい!
何より圧倒されるのが、出てくるものの“巨大さ”。宇宙船はもちろん、砂の惑星の地中に潜み、物語でも重要な意味をもつモンスターキャラのサンドワーム(砂虫)。人間たちを見下ろすように迫ってくるそれらの映像に、ひたすら息をのむ。鳥のように羽ばたく翼をもった飛行機や、砂の惑星で人間が身につけるアイテムなど、デザインがやたら斬新でカッコいい。
photo by AFLO
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