そのトリック、見破れる?
極上の謎解き映画5選!
映画の醍醐味のひとつが、謎解き。主人公を迷宮へと誘う極上のトリックに、「一体、どうなってるの!?」と困惑し、クライマックスでは「そうだったのか!」と膝を打つ。そんな謎解き映画を5本セレクト。各作品には、オチとトリックのネタバレ解説が付いているので、気になる人はご注意を!
『鑑定士と顔のない依頼人』
製作年/2013年 監督・脚本/ジョゼッぺ・トルナトーレ 出演/ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、ドナルド・サザーランド
若き女性に恋した老鑑定士の行く末とは!?
トリックがある映画と聞くと、見破ろうと身構えてしまいがちだが、観ているこちらも騙される感覚に浸りたい。そんな見本のような1作がコレ。主人公のヴァージルは美術鑑定士だが、隠し部屋に女性の肖像画を集めている。しかもその肖像画の価値は高いものばかり。
そんなヴァージルの元に、死去した両親の美術品をオークションにかけてほしいとの依頼が来る。依頼主のクレアという女性は、“広場恐怖症”ということで一切、屋敷の自室から出ず、ヴァージルとも面会しない……。
何やら怪しい香りが漂う展開だが、ストーリーの基本は、ヴァージルがクレアに興味を抱き、ドア越しに見かけた彼女が若い女性だったことで、激しく恋心を募らせるというもの。孤独な中年の主人公が経験する切ないラブストーリーが、オスカー俳優、ジェフリー・ラッシュの名演もあって、身につまされるのだ。
【ここからオチ&トリック】
ヴァージルが集めていた肖像画がすべて盗まれてしまう。彼の友人、クレア、彼女にプロポーズを勧めた機械職人がすべてグルとなって、盗みを計画していたのだ。トリックは成功するが、あまりに悲しすぎる結末!
『プレステージ』
製作年/2006年 監督・脚本/クリストファー・ノーラン 出演/ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、スカーレット・ヨハンソン
突拍子もないトリックに呆然!
主人公2人はマジシャン。トリックを使うプロである。自慢のマジックの“トリック”はもちろん、映画全体のドラマにも“トリック”が潜んでいる。その意味では今回のテーマに最もふさわしい一作かも!
主演の2人がヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールというのも、今作の魅力。育ちが良く、実直型のアンジャーがヒューで、奇抜な発想の天才型のボーデンがクリスチャンなのも、これまた適役だ。
アンジャーの妻が脱出マジックで命を落とし、その原因がボーデンであったことから、両者の確執と、マジシャンとしてのライバル関係は激化。
しかし、アンジャーの瞬間移動マジックを調べていたボーデンの目の前で、なんとアンジャーは水槽で溺死。ボーデンが殺人容疑で逮捕されてしまう。
【ここからオチ&トリック】
アンジャーの瞬間移動には、電気の技術を使って“自分を複製する”という驚きのテクニックが使われていた。さらにボーデンの死刑執行の日に、アンジャーが何者かに銃撃され、その相手がボーデン……と思ったら、双子の弟だった。ボーデンは双子でマジックをやっていたという、突拍子もないトリックが判明。
『ダ・ヴィンチ・コード』
製作年/2006年 監督/ロン・ハワード 出演/トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン
謎の暗号を、どう読み解く!?
トリックといえば“暗号”も重要なキーワードのひとつ。隠された暗号が壮大な事件に発展する作品といえば、ダン・ブラウン原作のロバート・ラングドン・シリーズだろう。トム・ハンクス主演による最初の映画化『ダ・ヴィンチ・コード』は、社会現象とも呼べるヒットを記録した。
パリのルーヴル美術館の中で館長ソニエールが殺害される。その被害者自身が死の間際に、床に暗号らしきメッセージを残していた。宗教象徴学の権威であるラングドン教授が、ソニエールの孫娘ソフィーとともに、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画に隠された秘密や、キリストの聖杯の謎から、事件の核心に迫っていく。
キリスト教の常識を変えるような衝撃のネタと、カルト的な集団、殺人というセンセーショナルな要素がミックスされ、エンタメ的興奮も備えた謎解き映画だ。
【ここからオチ&トリック】
ソニエールはカトリック教会ではタブーである秘密を受け継いできたために犠牲となった。ダ・ヴィンチの名画“最後の晩餐”でキリストの隣にいるのは使徒ヨハネとされてきたが、実はこれが女性で、2人は子供をもうけ、その血を受け継ぐ者がソフィーだった。
『マッチスティック・メン』
製作年/2003年 製作総指揮/ロバート・ゼメキス 製作・監督/リドリー・スコット 出演/ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル
騙される快感を味わえる!
トリックに騙される快感。それをマックスで味わうとしたら、やはり詐欺師の映画ではないか。主人公は詐欺師のロイ。潔癖症で外出は苦手という変わり者だ。別れた妻との間に生まれ、まだ会ったことのなかった14歳の娘アンジェラと初めて面会したところ、意気投合。アンジェラも父の仕事に興味をもつ。
物語のメインとなるのは、ロイと相棒のフランクによる、大金持ちを標的にしたかつてない詐欺計画。しかしロイは何者かに殴られて気を失い、自身の貸金庫から大金が消えてしまう。
気がつけば、警察から尋問を受けていた……という急展開。リドリー・スコット監督にしては珍しく、軽快なノリの逸品だ。切なくも清々しいラストが印象的。
【ここからオチ&トリック】
すべて相棒のフランクが仕組んだ罠で、アンジェラも彼の仲間。ロイの実娘のフリをしただけで、年齢も14歳ではなく21歳だった。ロイと生活した彼女は、貸金庫の暗証番号も盗み見していた。ロイから悩みを聞いた精神科医もフランクの仲間。
『オリエント急行殺人事件』
製作年/2017年製作 製作・監督・出演/ケネス・ブラナー 出演/ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー
驚愕レベルのオチが待ち受ける!
トリックと聞けば、思い浮かべるジャンルはミステリー。そのミステリーの女王として知られるアガサ・クリスティ作品はトリックの宝庫だ。映画化で有名な今作も、細かいトリックが最後に超ドラマチックな謎解きでひとつになる。カタルシスは満点だ。
大雪のため山の中で停車したオリエント急行で、大富豪のラチェットが殺害される。遺体にはいくつもの刺し傷があった。彼は脅迫状を受け取っており、たまたま列車に乗り合わせていた名探偵エルキュール・ポアロに相談をもちかけていた。
やがて列車のほかの乗客たちとラチェットの関係が明らかになっていき、ポアロが誰の犯行なのかを推理していく。ラチェット役のジョニー・デップほか、オールスターキャストが集結。犯人像にあれこれ想像力がはたらくが、まっさらな知識で観たら、そのオチはかなり驚愕のレベルでは?
【ここからオチ&トリック】
ラチェットは少女誘拐事件の犯人で、その恨みを晴らしたい者たちが集合。乗客12人が“ひと刺し”ずつ復讐を果たした。犯人が逃げたように細工するなど、多くのトリックが仕掛けられたが、列車にポアロが乗ったのは誤算。睡眠薬や声色、ほかの人物の服で廊下を歩くなど追加のトリックも駆使された。
photo by AFLO