難役にも果敢に挑む美しき演技派!
シャーリーズ・セロン映画9選!
最新作『オールド・ガード』がネットフリックスで配信され、話題となっているシャーリーズ・セロン。注目を浴びる存在となったのは『2 days トゥー・デイズ』だが、彼女の真の才能が開花したのは、『モンスター』から。強くて、たくましいイメージが定着し、今では無二の男前女優に。そんな彼女の傑作映画をセレクト!
『モンスター』
製作年/2003年 監督・脚本/パティ・ジェンキンス 共演/クリスティーナ・リッチ
圧巻の演技でオスカーを獲得!
カラダを売って生活する道を歩んできたアイリーンは、バーで出会った女性セルビー(クリスティーナ・リッチ)と惹かれ合う。人生で初めて安らぎを感じたアイリーンはセルビーと生活していくため、再びカラダを売ることに。そんな中、トラブルに見舞われ客の1人を殺してしまい…。
アメリカ犯罪史上初の女性連続殺人犯として、“モンスター”と呼ばれたアイリーン・ウォーノスの実話を映画化。それまでは美人女優として型にはめられがちだったシャーリーズが体重を増量し、特殊メイクの力も借り、切なくも不気味な“モンスター”を熱演。惨めに生きるしかないアイリーンの心の叫びを全身で表現し、アカデミー賞主演女優賞に輝いた。女優シャーリーズ・セロンの演技派ぶりが広く知られた記念すべき1作。
『スタンドアップ』
製作年/2005年 監督/ニキ・カーロ 脚本/マイケル・サイツマン 共演/フランシス・マクドーマンド、ジェレミー・レナー
男社会に立ち向かう姿がかっこいい!
女手ひとつで子供たちを育てるため、故郷の炭鉱で働き始めたシングルマザーのジョージー。だが、男社会の炭鉱は働き手の女性に厳しく、ジョージーは職場の男たちから執拗な嫌がらせを受けるようになる。現状に耐えかねたジョージーは訴訟を起こすが、その道のりは想像以上に険しいものだった…。
1980年代に行われた世界初のセクシャルハラスメント訴訟にまつわる実話をベースに、主人公の苦闘を描いた社会派ヒューマンドラマ。『モンスター』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたシャーリーズが、演技派ぶりを発揮して再び主演女優賞にノミネート。持ち前の華やかなオーラを封印し、炭鉱での仕事と子育て、そして世紀の訴訟に悪戦苦闘するシングルマザーの折れない心を、力強く演じている。
『ヤング≒アダルト』
製作年/2011年 製作・監督/ジェイソン・ライトマン 製作・脚本/ディアブロ・コーディ 共演/パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン
コメディエンヌとしても高評価!
ヤングアダルト(少女向け)小説のゴーストライターとして活動するバツイチの37歳、メイビスのもとに、高校時代の元恋人とその妻から赤ちゃん誕生の知らせが届く。元恋人との復縁を期待してしまったメイビスは、意気揚々と故郷に向かうが…。
『JUNO/ジュノ』で高い評価を受けたジェイソン・ライトマン監督、ディアブロ・コーディ脚本のコメディで、イタすぎる勘違いヒロイン、メイビスをシャーリーズが熱演。なりふり構わず自分本位に周囲を巻き込んでいくヒロイン像は好き嫌いが分かれるところだろうが、大人になりきれない大人の心の奥まで繊細に表現したシャーリーズの女優魂が光る。コメディエンヌとしての評価も高く、ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞にノミネートされた。
『スウィート・ノベンバー』
製作年/2001年 監督/パット・オコナー 共演/キアヌ・リーヴス
美しくロマンティックなシャーリーズが堪能できる!
広告業界のエリートとして仕事優先で生きてきたネルソン(キアヌ・リーヴス)の前に、美しく風変わりな女性サラが現れる。「11月だけ、私の恋人にならない?」というサラの奇妙な提案を受け、2人の期間限定の恋が始まるが……。
自由奔放に生きる女性と彼女を本気で愛するようになる男性が、サンフランシスコの街を舞台に繰り広げるラブストーリー。実は大きな秘密を抱えたヒロイン、サラをシャーリーズがチャーミングに好演。
強くたくましいイメージが定着し、ロマンス映画のヒロインに留まることの少ない現在のシャーリーズ・セロンから考えると、今や少々変わり種となった1本といえる。キアヌ・リーヴスともお似合いで、とにかく美しくロマンティックなシャーリーズを堪能したいならコレ!
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
製作年/2015年 製作・監督・脚本/ジョージ・ミラー 共演/トム・ハーディ、ニコラス・ホルト
強くて美しいシャーリーズ最大のハマり役!
『マッドマックス サンダードーム』以来、30年ぶりとなるシリーズ第4作。妻子を殺された男マックス(トム・ハーディ)が、資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した世界で壮絶な復讐劇を繰り広げる。シャーリーズが演じるのは、荒野をさまようマックスと出会い、やがて共闘していくことになる女戦士フュリオサ。
髪を短く刈り込んだクールな外見に片腕の欠損を感じさせない戦闘能力など、精神的にも肉体的にも強く美しい現シャーリーズ・セロン最大のハマリ役で、彼女にしか演じられない役どころ。邪悪な支配者の打倒を誓うマックスとのカップリングも相性よく、強く美しいシャーリーズを堪能するなら何はなくともコレから。続編はもちろん、フュリオサを主人公にしたスピンオフも熱望されている。
『タリーと私の秘密の時間』
製作年/2018年 製作・監督/ジェイソン・ライトマン 製作・脚本/ディアブロ・コディ 製作・出演/シャーリーズ・セロン 共演/マッケンジー・デイヴィス
18kgの体重増加に挑んだ!
シャーリーズが演じるのは、間もなく3人めの子供を出産するマーロ。自分のことだけで大変なのに、夫は家事も手伝わず、息子は学校で問題を起こしたりして、気が休まるヒマはない。ようやく女の子を出産するも状況は変わらず、マーロは仕方なく夜間のベビーシッターを頼むことに。やって来たタリーという若い女性は、とてもベビーシッターとは思えない“ちゃらい”風貌だったが……という物語。
この映画、とにかく驚くのはシャーリーズ・セロンの外見である。もちろん顔は相変わらず美しいのだが、たとえば出産後、マーロがジョギングするシーンや、ブラジャー姿で料理を出すシーンなどで、ブヨブヨのお腹を惜しげもなく披露。なんと18kgの体重増加に挑んだというからアッパレ!
そして最大の見どころとなるのは、後半の思わぬ展開。人生でなにかに迷ったり、困難に出会ったときの、ちょっとした解決策を提示してくれる部分もあるのだ。“育児あるある”などヒロイン映画の側面も濃厚だが、ラストは性別に関係なく自分の人生と重ね合わせたくなるはずだ。
『ロング・ショット』
製作年/2019年 原案・脚本/ダン・スターリング 監督/ジョナサン・レヴィン 共演/セス・ローゲン
格差を乗り越える恋物語に熱くなる!
“格差”カップルの女性側は、アメリカ政府の国務長官を務め、次期大統領選に出馬するシャーロット。外見もキラキラな美人。対する男性側は、ジャーナリストのフレッド。仕事だけ考えれば、不釣り合いではなさそうだが、フレッドは新聞社を辞めて無職の状態。しかもファッションセンスはゼロで、どう考えてもモテるタイプじゃない。
しかし、ある接点をきっかけにフレッドがシャーロットの大統領選のスピーチ原稿を担当することになる。そこから2人の心は急接近。一見、ありえないような関係も、ホワイトハウスの“裏側”がきっちり描かれて説得力があるため、観ているこちらもスムーズに物語へ入りこんでしまうのだ。
この映画、キャストも最高のハマリ役。シャーロット役のシャーリーズ・セロンは、アメリカ初の女性大統領になってもおかしくない凛々しさに、持ち前の美しさが全開。そしてセス・ローゲンが、ちょっぴりかっこわるいけど、正義感だけは強いフレッド役で男子的共感を誘いまくる。
基本はコメディなので笑えるシーンがたっぷり。思わぬアクションもあったりと、サービス精神旺盛の快作。『ローマの休日』『プリティ・ウーマン』など懐かしの“格差を乗り越える”ラブストーリーを思い出す人も多いかも!
『スキャンダル』
製作年/2019年 製作・監督/ジェイ・ローチ 製作・出演/シャーリーズ・セロン 共演/ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー
ニュースキャスターを熱演!
主演はシャーリーズ・セロンなのだが、いつもの彼女の顔と微妙に違う。モデルとなったのが実在の人物である、FOXニュースのキャスター、メーガン・ケリー。アメリカでは知らない人がいない有名人だ。
そのため、本人の顔にできるだけ近づけるべく、シャーリーズが自らカズ・ヒロ氏を指名。小さなパーツを駆使し、超ナチュラルな仕上げで変身。さらに、シャーリーズの素顔も残した絶妙な加減が、特殊メイクのエキスパートといわれる仕事だ。
2016年、FOXニュースのベテランキャスターが、業界の帝王を訴えた。これきっかけに、深刻なセクハラが明るみに出るのだ。文字どおり“スキャンダル”な実話を映画化。毅然と被害を訴えるキャスターもいれば、昇進のためにセクハラを受け入れてしまう若手も。業界の暗部をこれでもか、これでもかと、あぶり出していく。特にマーゴット・ロビーが演じる新人のケイラの屈辱的なシーンには、誰もが胸を締めつけられるはず。
『オールド・ガード』
製作年/2020年 原作・製作総指揮/グレッグ・ルッカ 監督/ジーナ・プリンス=バイスウッド 共演/キキ・レイン、マーワン・ケンザリ
不死身の肉体を持つ苦悩に、最後は涙!
シャーリーズが演じるアンディは、“不死”の肉体を持って生まれてきたという設定。戦いでケガをしてもすぐに治癒し、命を落とすことはない。何百年も生き続け、人類の歴史に“傭兵”として関与し、重要なミッションをこなしてきた。
“オールド・ガード”と呼ばれる不死身のチームは、新たにメンバー入りした軍兵士のナイルを含めて現在、4人。彼らは“死なない”という特殊な能力を持っているのだが、それ複製しようと、製薬会社が恐るべき陰謀を仕掛けてくる。
一見、スーパーヒーロー映画のようだが、描写は徹底してリアル。アクションとドラマのバランスも絶妙で、グイグイと作品世界に引きこまれる感覚を味わえる。
スリムなボディを生かした、流れるように美しいアクション。そして、男たちも率いて限界に挑むリーダーシップ。シャーリーズの性別を超えたかっこよさは、そのしなやかな動きを観ているだけで惚れぼれする! また新メンバーのナイル(こちらも女性)の無鉄砲な活躍にもテンションがアガるだろう。
そして、オールド・ガードたちの“永遠に生き続ける”という能力を持ったがための苦悩、これに関しても要所要所で語られ、その痛切さもビンビン伝わってくる。メリハリあるストーリー展開は、実に映画然としている。ちなみに、一瞬だけ登場する脇キャラも印象的なので、ご注目を。全体の流れから、シリーズ化の可能性も感じてしまうので、そんな想像力を広げながら楽しむのも一興だ。
photo by AFLO