『レス・ザン・ゼロ』
製作年/1987年 監督/マレク・カニエフスカ 出演/ロバート・ダウニー・Jr.、アンドリュー・マッカーシー、ジェイミー・ガーツ
若手時代の傑作!
ブレット・イーストン・エリスの同名小説を映画化した青春ドラマで、恵まれた家庭に生まれながら、やがて道を踏み外す青年を熱演。80年代の青春映画で活躍した若手俳優たち、通称ブラット・パックの中でも、群を抜いた演技派だったことを示す1作と言える。
ともに高校を卒業した親友クレイ(アンドリュー・マッカーシー)の目線で物語が進む中、ダウニーJr.演じるジュリアンは明るい未来へ向かうはずが、ままならない人生から逃げるようにドラッグまみれの生活へ。挙げ句の果てに、売人に借金を作って男娼へと身を落とす。
刹那的に生きるジュリアンの未熟な美しさは若さゆえでもあるが、どこまでも憎めない雰囲気は今のダウニーJr.にもあるもの。実際にドラッグの問題を抱えていた初期ダウニーJr.の暗い闇の魅力も感じることができる。
『チャーリー』
製作年/1992年 監督/リチャード・アッテンボロー 出演/ロバート・ダウニー・Jr.、アンソニー・ホプキンス
圧巻のなりきり演技!
90年代のダウニーJr.を代表する1作で、ハリウッドに君臨した喜劇王チャーリー・チャップリンに。名匠リチャード・アッテンボローの下、コメディアンとしての才能を開花させる青年時代から、かつて追放されたハリウッドに舞い戻る80代までを特殊メイクの力とともに演じ切っている。
表情、仕草など、瓜二つと言われた外見の役作りもさることながら、順調なキャリアの一方で女性問題を抱え、政治的姿勢を理由にFBIから敵視されたチャップリンの複雑さと悲哀を巧みに表現。27歳にしてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほか、チャップリンの出生地イギリスでは英国アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
近年は特に、自身のパーソナリティをも生かした個性派スターとして認知されるダウニーJr.だが、“なりきり演技”でも魅せてくれる。
『キスキス,バンバン』
製作年/2005年 監督・脚本/シェーン・ブラック 出演/ロバート・ダウニー・Jr.、ヴァル・キルマー、ミシェル・モナハン
運命に翻弄されるトホホな役も上手い!
ドラッグ問題から復活し、“キャリア第2期”を歩む中で主演した犯罪サスペンス。その復活劇に欠かせない現在の妻であり、映画プロデューサーのスーザン・ダウニーが製作総指揮を務めている。ダウニーJr.が演じるのは、ひょんな偶然から映画のオーディションに参加し、探偵役に抜擢されてしまった泥棒ハリー。
あれよあれよとハリウッドに赴いたハリーは私立探偵のペリー(ヴァル・キルマー)に役作りの指導を仰ぐ中、本物の殺人事件に巻き込まれていく。殺人犯にされそうになったり、拷問されたり、命を狙われたり…。翻弄する側の役で印象を放つことの多いダウニーJr.が、巻き込まれ型のトホホな主人公に徹しているのが珍しくも可愛らしい。エンドロールでは、実は優れたシンガーソングライターである彼の楽曲を聴くこともできる。
『グッドナイト&グッドラック』
製作年/2005年 監督/ジョージ・クルーニー 出演/デヴィッド・ストラザーン、ロバート・ダウニー・Jr.
信念が詰まったジョージ・クルーニーの監督作!
ジョージ・クルーニーが『コンフェッション』に続いてメガホン(兼脚本)を執った実話を基にした社会派ドラマ。“赤狩り”の恐怖が横行していた1950年代を舞台に、実在のニュースキャスター、エドワード・R・マローが、真実と正義のためにマッカーシズムに立ち向う姿が描かれる。
当時の雰囲気を再現する美しいモノクロ映像、ジャズをベースにした効果的なサウンドトラックはもとより、静謐な筆致でありながら当時の緊迫感を伝える描写や、ヒシヒシと伝わってくるマローのジャーナリスト魂にアツくなる。
アメリカではセレブが政治的発言をするのは当たり前だけど、クルーニー自身も積極的に発言するタイプで、過去には「俺はリベラルだ」と語ったことも。父ニックがニュースキャスターだったことや、幼い頃よりマローをヒーローだと思っていたということも含め、彼の信念が詰まった渾身の逸品!
『ゾディアック』
製作年/2007年 原作/ロバート・グレイスミス 監督/デヴィッド・フィンチャー 脚本/ジェームズ・バンダービルト 出演/ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.
“容疑者と地下室で二人きり”という恐怖!
1969年の米サンフランシスコで、残虐な殺人事件が続発。現地の新聞社に送られてきた声明文により、正体不明の犯人は“ゾディアック”と呼ばれ、恐れられるようになる。刑事や記者が事件の調査に当たり、容疑者も浮かび上がるが、解決には至らなかった。一方、新聞社の風刺画家グレイスミスは事件に興味を抱き、独自の調査を熱心に続けた結果、ある怪しい人物に行き当たる。
ゾディアック事件として知られる実際に起こった未解決連続殺人事件の謎に、『ゴーン・ガール』のデヴィッド・ファンチャー監督が肉迫。記者や刑事ら、事件に憑かれていくことで疲労を募らせる人々の心理に焦点を絞る。一方で、グレイスミスが容疑者らしき人物と地下室でふたりきりになる場面など、緊張感にあふれた見せ場も。ジェイク・ギレンホールやロバート・ダウニーJr.、マーク・ラファロら演技派俳優たちの競演も見どころだ。
『アイアンマン』
製作年/2008年 監督/ジョン・ファブロー 出演/ロバート・ダウニー・Jr.、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッジス
魅力のすべて詰まっている!
アイアンマンなくして、現在のロバート・ダウニーJr.なし。2008年の『アイアンマン』以降、『アベンジャーズ/エンドゲーム』までの計10作で、マーベルコミックのスーパーヒーロー、アイアンマンを演じている。
『アイアンマン』登場時、巨大軍需企業のCEOだったトニー・スタークは、自社製品の罪を悟って改心。自らパワードスーツを開発し、平和のために戦うアイアンマンと化す。とんでもない金持ちで、とんでもない天才だが、それゆえに傲慢さも顔を出しがちなトニー・スタークは、もはやダウニーJr.以外に演じることなどできないキャラクター。
飄々としていて不遜な態度やスパイシーなユーモア、その内側に見え隠れする繊細さなど、彼のすべてを愛さずにはいられないシリーズファンが世界中に存在する。もちろん、ダウニーJr.の入門書としても最適。
『シャーロック・ホームズ』
製作年/2009年 監督/ガイ・リッチー 出演/ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス
茶目っ気たっぷりな演技に引き込まれる!
アーサー・コナン・ドイルが生んだ名探偵シャーロック・ホームズを演じ、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞。医師のジョン・ワトソン(ジュード・ロウ)を相棒に、世界征服を目論む男の陰謀に立ち向かう。
卓越した観察力、記憶力、推理力、そして格闘能力を持つ天才であると同時に、奇天烈かつ無礼な態度と愛すべき茶目っ気で周囲を翻弄するホームズは、“ザ・ダウニーJr.”なキャラクター。なんだかんだでホームズのことが大好きなバディ、ジュード・ロウとの相性も抜群で、瞳の奥まで生き生きしている。
また、ホームズらしいイギリス英語も好評。ちなみに、台詞回しにおける芸達者ぶりは、“黒人役になりきるオーストラリアの名優”というトリッキーな役柄に挑んだ『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でも実感できる。
『シェフ 三つ星フードトラック始めました』
製作年/2014年 製作・監督・脚本・出演/ジョン・ファブロー 出演/ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jr.
安定した生活を捨て、リスクも覚悟で新たな目標に突き進め!
やりがいのある仕事に就き、しかも優秀な能力を発揮し続ける。見方によっては夢が叶った理想の人生でもあるが、当人にとっては現状維持かもしれない。本作の主人公、キャスパーは、そのパターン。LAの人気レストランの料理長なのだが、メニューに口出しするオーナーと対立。しかもSNSで炎上騒ぎも起こして店を辞めるハメになってしまう。別れた妻の提案で息子とともに故郷のマイアミへ向かった彼は、キューバサンドイッチ(クバーノ)に魅了され、フードトラックでの移動販売を決意するのだった。
安定した生活を捨て、リスクも覚悟で新たに目標を作ること。そして結果的に、人生が輝き始める、という気持ちのいい流れに乗っていける一作。キャスパーのキャラクターが明るいうえに、彼の再起を助ける周囲の人物も温かみに溢れるのが好印象。疎遠だった息子との絆も、主人公のもうひとつの夢として捉えると感慨深い。本作の監督で自らキャスパーを演じるジョン・ファヴローは、『アイアンマン』でロバート・ダウニー・Jr.のキャリアを復活させたが、そのダウニー・Jr.がこの『シェフ』ではキャスパーにフードトラックを譲る役で登場。恩人であるファヴローの作品に、夢をサポートする役割を果たしたわけで、そんな関係も重ねながら観れば、夢を叶える大人たちのドラマは感動倍増だ。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
製作年/2018年 監督/アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ 脚本/クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー 出演/クリス・エヴァンス、ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ヘムズワース、ジェレミー・レナー、スカーレット・ヨハンソン、エリザベス・オルセン、ポール・ベタニー、サミュエル・L・ジャクソン
信じがたいレベルの“オールスター作品”!
これまでMCU作品に現れた敵の中でも、“最強”といえるサノスが暴れまわる本作。今回、最も刺激的な参加となるのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のチーム。とぼけた味わいや軽妙なノリを楽しめるだけでなく、彼らの1人、ガモーラが(血縁ではないが)サノスの娘なので、思いがけないエモーショナルな展開も用意される。その他にも自己犠牲のシーンや、サノスの心の闇に迫る演出があり、ドラマチックな期待にも応えるだろう。ヒーローそれぞれの秘技のオンパレード、性格を反映した会話やドラマなどが次々と繰り出されるので、たしかに観る側にも細部にまで気を配る必要があるため体力が要求される作品ではある。しかしMCU作品の中心として、過剰に高まるファンの期待に応えるという意味で、これは最善の作りであるのは間違いない。クライマックスのインパクトも、はっきり予想を超えたものになっている。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
製作年/2019年 監督/アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ 出演/ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エバンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン
完結編にふさわしい空前の戦い!
最強の敵サノスと戦うために、反目しあっていたアイアンマンとキャプテン・アメリカがついに共闘。完結編にふさわしい、空前の戦いが繰り広げられる。特筆すべきなのは、絶妙な構成。多数いるヒーローたちのドラマを上手に配分、複数の場所で展開するドラマを交錯させるなど飽きのこない工夫がなされている。そのため複雑なシチュエーションになっても、どこで何が起こっているかがわかりやすいし、テンポよくグイグイと引きこまれていくというわけ。さらにキャプテン・マーベルの無敵レベルのパワーや、アントマンがカギを握る一大プロジェクトなど、新メンバーたちの活躍も物語のキーポイントになっているので要注目。
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photo by AFLO