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2026.04.29 NEW

映画『サンキュー、チャック』単独インタビュー
トム・ヒドルストン「人生に冒険は必要だよ」

 

 


スティーヴン・キングの短編を映画化した『サンキュー、チャック』は、タイトルが示すように、チャックという人物に多くの人たちが感謝をする物語。世界各地で異変が起こり、ネットやSNSが繋がらなくなるなか、突如として街の看板やラジオ放送に「チャールズ・クランツ、すばらしい39年間にありがとう」という広告が出現する。そのチャールズ=チャックとは何者なのか? チャックの人生をたどりながら、思わぬ感動が届けられる本作で、チャック役を任されたのが、トム・ヒドルストンだ。『アベンジャーズ』シリーズなどマーベル映画のロキ役でおなじみの彼が、39歳で亡くなり、どうやら多くの人に影響を与えたらしい人物で、作品の“顔”となった。しかもスーパー級のダンスも披露している。どんなアプローチでチャック役に向き合ったのか。これまでの俳優人生との関係なども含め、ヒドルストンに単独インタビューで質問をぶつけてみた。

──この『サンキュー、チャック』はチャックが主人公で、メインのビジュアルにもあなたが使われています。しかし登場シーンを合計すると「19分」でした。

「19分とは知らなかった! カウントしてくれてありがとう(笑)。出演シーンが短いとはいえ、タイトルが『The Lifen of Chuck(原題/チャックの人生)』なので、主人公という責任を果たそうという意識は強かったよ。本作は3つの章に分かれていて、僕がメインで登場するのは第2章。ただ、第1章と第3章にもチャックは出てくるので、何らかのイメージで僕の姿が観客の心に刻まれると自覚したんだ。だから第2章に、僕の心と魂、パワーを全力で注ぐつもりで演じたのさ」

──第2章のチャックは39歳です。どのように役にアプローチしたのでしょう。

「ひとつのキャラクターの中に多くの要素があるという意識だった。チャックは中年に差しかかった年代の、優しそうな会計士。同時に、ダンスの才能もあり、優雅に踊ることができる。つまり、いかにも会計士であると見せつつ、本格的なダンサーになりきる必要があった。ブリーフケースを持ち、かっちりとスーツを着たビジネスマンでありながら、その内側には旺盛な好奇心と、若い頃の魂がみなぎっている。地に足のついたキャラクターが、燃え立つハートを秘めているという設定は、演じがいがあったな」

──第2章でのチャックのイメージは、他の章とも繋がっていますよね。

「そう。チャックの幼少期や若い時代を3人の俳優が演じているけれど、映画を観れば、彼ら3人と僕が繋がっていることがわかり、そこは僕自身も気に入ってる。子供時代の経験や満ち溢れたエネルギーが、39歳のチャックにも残っていて、そこが本作の見どころじゃないかな」

──少年時代のチャックは、祖母と懐かしいミュージカル映画でフレッド・アステア、ジーン・ケリーの華麗なダンスを観て、踊りたい情熱に火が点きます。あなたの見事なダンスは、フレッド・アステアを彷彿とさせますね。

「顔立ちがアステアに似てるから、そう見えるんじゃない? でも最高の褒め言葉をありがとう(笑)。ジーン・ケリーは運動能力に優れた人で、アメリカンフットボールのクォーターバックのような体型にもかかわらず、優雅に踊っていた。一方でアステアは、重力に逆らって動いたという点で、歴史上でもトップの才能の持ち主。だから僕もアステアの感覚を目指したんだ。ダンスに限らず、陸上やサッカーにも飛んでいるように見える選手がいるよね? その敏捷性とダイナミックさも理想だった。もちろん僕はフレッド・アステアの足元にも及ばないけど、彼のダンスは人生でずっと憧れていたから、今回のチャレンジはうれしかったよ」



──
ダンスに関しては若い頃、遊びでやった程度だそうですが、それはどんなシチュエーションだったのですか?

「まだ10代の頃の話だね。10代って、親や先生から教えられるものではなく、自分で発見した何かで魔法を起こし、それを生涯、愛し続けたりするんだ。僕の場合、音楽だった。当時はイギリス、あるいはヨーロッパの伝統を受け継いだダンスミュージックが隆盛を誇り、僕も友人たちとそれらをサンプリングしたり、リミックスしたりして楽しんでいた。当然、ダンスミュージックを流せば踊るわけで、それが僕のダンスの原点だ。あくまでも音楽が第一で、ダンスは二次的だったけど。世界中どこの国へ行っても、結婚式などで家族や友人が一緒になって踊るよね? つまり人間は幸せを感じたり、人との繋がりを実感すると、音楽を演奏して踊ってしまう。僕もそんな感じだったよ」

──『サンキュー、チャック』は人生を振り返る物語ですが、あなたのキャリアを振り返った時、どんな瞬間の積み重ねで今があると考えていますか?

「おそらく、すべての出来事や経験が積み重なって今があると思う。振り返ってみると、若い頃、とても決定的な瞬間があったのは事実だね。初めて学校で演劇の公演に参加した時、先生が僕をステージの横に呼んでもし俳優になりたいと思うなら、その夢は叶う。おそらく一生、続けられるはずだよと言ってくれたんだ。先生に言われるまで、俳優になろうなんて考えてもいなかった。その一言が、僕の俳優への旅路のスタートになったわけだ。結果的に25年間のプロの俳優生活を続け、こうして取材を受けているわけだから、先生の言葉には大きな意義があったことになる。『サンキュー、チャック』にも、チャックの人生を変える先生が登場するけど、ちょっと似ているね」

──では最近、人生を大きく変えた出来事は?

「それは何と言っても、父親になったこと。僕の人生でも最高のプレゼントだし、最も深い部分での成長に関わっている。子供を持つと、あの時こうしてたらなんて、人生を巻き戻したいと思わなくなるんだ。これは親になった人すべてに共通する感情じゃないかな」

──あなたが演じたチャックは人々の前で踊った半年後、39歳で亡くなるという設定です。もしあなたの人生があと半年と決まったら、何をやりたいですか?

「いい質問だね。もし余命6ヶ月とわかったら、何か新しいことに取り組むだろうけど、それが何なのかは想像できない。誰かと家族になったり、急に親友になったり、肉体を俊敏にパワフルにしたり……。そんな希望を、6ヶ月で叶えるのは難しい。現在の家族や友人との絆が、6ヶ月でさらに深まることもないだろうけど、おそらく彼らと多くの時間を過ごすことになるかな」

──仮定の質問なので答えは難しいですよね。

「実際、誰も自分の余命は知ることはできないからね。僕らは毎朝、目を開けるたびに人生の不確実性と向き合っている。もしかしたら6ヶ月後、あるいは6年後に人生が終わるかも。いや、それは60年後という可能性もある。不確実だからこそ、毎日、自分のやれるだけのことを全力で……と思えるんじゃない?」

──短い人生だったチャックも、あのダンスの瞬間、やれるだけのことをやりきって、めちゃくちゃ輝いていました。

「チャンスが訪れたら、積極的に冒険しろってことさ。冒険は心も豊かにするからね。いま僕は45歳で、恵まれた環境にいるかもしれないけど、それも困難な冒険、簡単なチャレンジを数多くこなした結果。繰り返すが、人生に冒険は必要だよ!」

『サンキュー、チャック』51日公開
原作/スティーヴン・キング 監督・脚本/マイク・フラナガン 出演/トム・ヒドルストン、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン、マーク・ハミル 配給/ギャガ、松竹


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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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