『ブラッド・ダイヤモンド』
製作年/2006年 製作・監督/エドワード・ズウィック 脚本/チャールズ・リーヴィット 出演/レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・コネリー、ジャイモン・フンスー
ダイヤモンド業界の暗部に迫る!
きらびやかな世界、大儲けする会社。そこには必ずと言ってもいいほど“影”の部分が存在する……。そんな業界の闇は、映画にも最高の題材。闇が暴かれることで観る者には、ある種のカタルシスがもたらされるからだ。ダイヤモンド業界の暗部を扱った本作も、このパターン。実際に映画がヒットすることによって、社会的論議にもつながった。内戦が長引いていたアフリカのシエラレオネでは、ダイヤモンド採掘場での強制労働が続く。採掘されたダイヤは、武装組織の資金源となり、それがブラッド・ダイヤモンド、つまり“血塗られた”紛争のためのダイヤということ。その実態から、宝石業界での不法取引も明らかになっていく。
社会派テーマの本作だが、主演はレオナルド・ディカプリオ、監督は『ラスト サムライ』のエドワード・ズウィックなので、アクションエンタメとして引き込むのがポイント。ディカプリオはダイヤ密輸に関わる元傭兵の役で、漁師のソロモンが採掘場で見つけた超貴重な“ピンク・ダイヤ”を巡り、ソロモン、アメリカ人ジャーナリストとともに怒涛の運命に巻き込まれていく。クライマックスのディカプリオの演技はあまりに凄絶で、彼は本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネート。一人の男の改心と世界規模の闇が重なり、骨太な感動を届ける。
『クイズ・ショウ』
製作年/1994年 監督/ロバート・レッドフォード 脚本/ポール・アタナシオ 出演/ジョン・タトゥーロ、レイフ・ファインズ、ロブ・モロー
米テレビ史で最大のスキャンダル!
TVのバラエティ番組は、とんでもないことが起こっても“段取り”どおりであることが多い。それも含めて演出で、見方を変えれば“やらせ”も含まれているのは、もはや誰もが知っている。しかしTVが人々に大きな影響を与えていた時代、誰もが真実と受け止めていたことが、やらせだと発覚したら……。そんなTV界の闇を再現したのが『クイズ・ショウ』だ。1956年、アメリカで国民的人気を誇っていたクイズ番組で、無敵を誇った出場者ハービーが、若くハンサムな大学講師のチャールズに敗退。チャールズは一躍、時の人になるが、そこに驚くべき疑惑が浮上する。
アメリカのTVの歴史でも最大のスキャンダルといわれるこの事件。オーディションや番組前の打ち合わせで何が起こっていたのか。本番中のハービーとチャールズの表情は何を意味していたのか。番組の視聴率が急上昇するのに合わせて、作品自体もどんどん熱気を帯びてくる。ロバート・レッドフォードの監督の手腕に“乗せられる”のが、本作の持ち味だ。スポンサーとTV局の深い関係など、現在もくすぶる問題を投げかけているので、30年前の作品なのにまったく古さを感じさせない。日本の人気ドラマ『古畑任三郎』で、本作をヒントにしたエピソードが作られたのも有名。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
製作年/2022年 監督/マリア・シュラーダー 脚本/レベッカ・レンキェビチ 出演/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン
告発が絶えない映画業界のセクハラ問題!
ここ数年、芸能界のセクハラが次々と明るみになり、世界レベルでの社会問題となった。そのきっかけを作ったのが、映画業界のハーヴェイ・ワインスタインだ。アカデミー賞作品も次々と送り出してきた、ハリウッドを代表するプロデューサー。しかしその陰では長年にわたって女優や女性スタッフに性暴力、性的虐待を行なっていたことが発覚。#MeToo運動も後押しになり、次々と被害者が名乗り出た。ワインスタインは有罪で収監される。“業界の闇”だったこの事件を世に知らしめたのが、ニューヨーク・タイムズの2人の女性ジャーナリスト。その実態に迫ったのが、この映画だ。
なぜワインスタインの横暴が長年、放置されてきたのか。事件が事件だけに証拠を集めるのが難しいうえ、被害者は示談と引き換えに口封じされてきた。そもそも今後のキャリアなどを心配し、口をつぐむ女性も多数。こうした高いハードルを乗り越える主人公2人の取材ドラマは共感を誘うし、最終的に新聞社がスクープ記事を出すかどうかのギリギリの選択が超スリリングに描かれ、“仕事現場ムービー”としての見どころも満点だ。実際に被害に遭った女優、アシュレイ・ジャッドが本人役で登場。ワインスタインも雰囲気が似ている俳優によって後ろ姿で出てくるなど、リアリティにもこだわっている。
『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』
製作年/2019年 製作・出演/マーク・ラファロ 監督/トッド・ヘインズ 脚本/マリオ・コレア、マシュー・マイケル・カーナハン 出演/アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・キャンプ
巨大企業が利益を求めて一線を越える
利益優先で、他のことを置き去りにする。ネガティブな面に目をつぶり続けた結果、取り返しのつかない事態になる……。これはどんな業界にも潜む“闇”だ。本作がフォーカスするのは、化学メーカー。かつてアメリカの三代財閥のひとつとされたこともあるデュポン社が、化学物質を川や土壌に流出していた疑惑が持ち上がる。農場経営者から相談を受けた弁護士が、その事実を追求し、訴訟を起こすまでを描いた社会派サスペンス。
巨大企業を相手に孤高の闘いを挑む弁護士のロブを演じたのは、『アベンジャーズ』などのハルク役でおなじみのマーク・ラファロ。そして彼の最大の理解者である妻を、アン・ハサウェイ。2人の熱演によって、人間ドラマとしてもエモーショナルな味わいを誘うのも魅力。国を代表する巨大企業vs.一人の弁護士という構図は、当然のように熱い共感をもたらすし、不屈のスピリットと冷静な調査で立ち向かうロブの姿に、多くの人が生きる勇気をもらえるはず。そして企業の実名をそのまま出して、汚点を映画で伝えるというところに、ハリウッドの正義を感じる人も多いのでは?
『ウォール・ストリート』
製作年/2010年 監督/オリヴァー・ストーン 出演/マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、ジョシュ・ブローリン、キャリー・マリガン
金融の闇が生々しく伝わってくる!
“業界の闇”がなぜ生まれるのか? 多くの場合、裏で大金が動くからだろう。その意味で、マネー=金そのものを取り扱う金融業界で、闇が多発するのは当然かも。金融の闇を描いた映画が多く作られるなかで、その代表例と言っていいのが『ウォール・ストリート』だ。1987年に作られた『ウォール街』の23年ぶりの続編だが、2008年が舞台のこちらの方が現代に近いので金融の闇がより生々しく伝わってくる。監督は2作ともオリヴァー・ストーン。前作の主人公で、インサイダー取引で投獄されたカリスマ投資家のゴードン・ゲッコーが、続編では金融の世界に警鐘を鳴らす役どころ。彼の娘と交際する若き銀行マン、ジェイコブの運命とともに、業界の暗部が浮き彫りになっていく。
本作で“闇”の象徴となるのは、投資銀行経営者のブレトンというキャラクター。特定の株を急落させるために偽情報を流したり、取引の情報を漏洩させるなど、長年にわたって金融市場を裏で操ってきた。ブレトン役のジョシュ・ブローリンの不敵な演技もあり、現実にもこのような人物が跋扈(ばっこ)していると背筋を凍らせる。そうした闇の部分が存在することを教えつつ、投資や証券の運用などのヒントをあれこれ学ぶことができるのも本作の特徴。マイケル・ダグラス演じるゴードンと、シャイア・ラブーフのジェイコブの屈折した関係には、家族ドラマとしての見ごたえも備わっている。
●こちらの記事もオススメ!
恐ろしくて面白い! 韓国バイオレンス映画5選!
『ビバリーヒルズ・コップ』が映画界に残したものとは?【前編】
【まとめ】絶対に泣ける感動映画57本!
Photo by AFLO