Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.06.30

『あぶない刑事』『バッドボーイズ』『デッドプール&ウルヴァリン』
なぜバディムービーは人々の共感を呼ぶのか?②



『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(2024年)

『バッドボーイズ』シリーズが成功を収めたのは、バディムービーの“見本”のような作りを徹底したから。主人公のマーカスとマイクは、ともにマイアミ市警の刑事。コンビを組んで事件に立ち向かっている。この関係性だけで、完璧なバディだ。ところが性格、私生活の嗜好はまるっきり正反対。マーティン・ローレンスが演じるマーカスは、基本的に明るい性格で、何かとやることが大雑把。刑事のわりに争い事はあまり好きではなく、家族愛も深い。一方でウィル・スミスのマイクは、刑事としての能力は高いが、突っ走ってトラブルも起こしやすいタイプ。プライベートも(とくにシリーズ初期は)自由奔放。いわば“水と油”のような関係で、もし他の職場だったら気が合わなかったかも。しかし事件解決という面では、この正反対のキャラが大いに役立つ。しかも『バッドボーイズ』シリーズはコメディ要素も濃厚。マーカスとマイクのタイプの違いが笑いに貢献しており、バディムービーと最も相性のいいジャンルである“アクション”と“コメディ”をハイレベルで達成しているのだ。
 

  

 

『リーサル・ウェポン』(1987年)

この『バッドボーイズ』の正反対キャラは、『リーサル・ウェポン』を下敷きにしているのは明らか。同作は、メル・ギブソンの妻を亡くして傷心のマーティン、ダニー・グローヴァーの良き夫であるロジャーという、人種も生活環境も対照的な刑事が、最初は半目し合いつつ固い絆を育むドラマ。1作目はわりとシリアスなのだが、シリーズ化されてコミカルな要素も増幅。バディムービーの王道となっていった。『48時間』での刑事と服役囚の強盗もそうだが、ひとつの事件に立ち向かうために、自分には足りない部分を相手に助けてもらう関係に、バディムービーの真髄を感じられるだろう。この点で映画を超えて有名な例が、名探偵シャーロック・ホームズと医師のワトソンの関係。バディものの原点とも言える2人だが、『シャーロック・ホームズ』(2009年)における、ロバート・ダウニー・Jr.のホームズとジュード・ロウのワトソンでは、前者が直感型、後者が冷静判断型とくっきりキャラ分けされ、難事件に向き合う姿がバディムービーの醍醐味を感じさせた。

映画が描く“難局”は、たとえばスーパーヒーロー的な主人公なら、単独で乗り越えられるだろう。しかし現実には完璧な人間は少ない。誰かの力を借りなければ、クリアできないことも多い。だからこそ、どこか“足りない”部分のあるキャラクターが、そこを誰かに補ってもらい、共闘するバディムービーが共感を呼ぶのかもしれない。
 

  

 

『ショーシャンクの空に』(1995年)

その意味で、バディムービーには感動作も多い。事件の解明のための激闘やアクション、また凸凹コンビの笑いが強調されがちなバディものだが、2人の協力関係がメインテーマとなれば、エモーショナルな展開になりやすい。その代表例を挙げるなら『ショーシャンクの空に』(1995年)。刑務所の中で20年にもわたって友情を育んだ、元銀行員のアンディと古株の囚人レッド。終身刑を受けた2人が、いつの日か外の世界に出ることを夢みて苦難を乗り越えていく。やはりキャラクター的に好対照で、たがいにリスペクトする部分があるなど、バディものの要素をきっちり押さえている。2人が迎える結末は、おそらくバディムービーとしては最高の美しさではないか。同系列としては『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)など、いくつも名作が思い出される。
 

  

 

『レインマン』(1988年)

同じく感動作では、兄弟という関係ながら、バディムービーのムードを感じさせるのが『レインマン』(1988年)。高級車のディーラーで、何不自由なく暮らしていた弟と、父の遺産を受け取ることになった自閉症の兄。そんな2人が旅を通して絆を深めていくのだが、初めておたがいの存在を知ったという関係性や、トム・クルーズ(弟)とダスティン・ホフマン(兄)がパッと見で兄弟っぽくなかったりと、バディものとして引き込まれる仕様。そして彼らの旅がメインとなることで、バディものとロードムービーの相性の良さを実感させてくれる。『明日に向って撃て!』や『イージー・ライダー』といったバディムービーの名作も、2人の男の旅がストーリーのメインを占めていた。

ロードムービーということで、隠れた傑作がドイツの『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997年)。余命わずかと診断された2人の男が、死ぬ前に海を見たいと、盗んだベンツで人生最後の旅に出る。ギャングと警察の両方に追われながらの2人の逃避行は、バディムービーの中でもトップクラスの感動を届け、日本公開時にも映画ファンに愛された。
 

  

 

『テルマ&ルイーズ』(1991年)

このようにバディムービーは多岐に渡る。バディという語感や作品数の多さから、主人公は男同士というイメージが強いが、女性同士でもバディムービーは成立する。有名なのは『テルマ&ルイーズ』(1991年)。主婦のテルマとウェイトレスのルイーズが、ドライブ中に犯罪を起こしてしまい、指名手配されるという展開は、“友情”“逃避行というバディムービーの最強要素2つを備えていた。主人公2人に恋愛が絡まなければバディムービーの枠に入る……と考えれば、男×女でも『ペリカン文書』(1994年)などもリストに入ってきそうだ。
 

  

 

『テッド』(2012年)

また、相棒が人間以外というところまで解釈を広げれば、ダメ男とクマのぬいぐるみが騒動を引き起こすコメディ『テッド』(2012年)や、主人公と地球外生命体が一心同体となるマーベル映画の『ヴェノム』(2018年)などが変化球型のバディムービーとして愛された。人間には“相棒を探し求める”という本能があるから、これだけ多様な作品が生まれるのかもしれない。バディムービーの話をはじめると、こうして次々と作品名が挙がるのである。
なぜバディムービーは人々の共感を呼ぶのか?③に続く

 
文=斉藤博昭  text:Hiroaki Saito
Photo by AFLO
〈フランク ミュラー〉×〈ダナー〉の最新ブーツがお目見え!ワザありデザインが目を引く意外なコラボの1足!
SPONSORED
2025.08.25 NEW

〈フランク ミュラー〉×〈ダナー〉の最新ブーツがお目見え!
ワザありデザインが目を引く意外なコラボの1足!

昨年、驚きとともにユニークな取り組みと評判を呼んだ、〈フランク ミュラー〉と〈ダナー〉のコラボブーツ。早くも登場した第2弾はキャラ立ち必至なデザインはそのままに、カラーやディテールでグレードアップ! 質実剛健なアウトドアブーツを、アートな…

TAGS:   Fashion
俳優・竜星 涼がまとう〈ベル&ロス〉の新作!強く輝きを放つ黒スケルトン!
SPONSORED
2025.08.25 NEW

俳優・竜星 涼がまとう〈ベル&ロス〉の新作!
強く輝きを放つ黒スケルトン!

航空計器からインスパイアされた四角と丸の組み合わせで唯一無二の地位を築き上げている〈ベル&ロス〉。特に現代的なデザインが人気の"BR-05"シリーズに新加入したのが、シャープな輝きと力強さを秘めたセラミック製の黒スケルトンだ。年々深みを増…

TAGS:   Fashion Watches
屈指の“メイド・イン・ジャパン”デニム〈デンハム〉白澤社長もお気に入り!ヴィンテージ感漂う大人のワイドデニム!
SPONSORED
2025.08.25 NEW

屈指の“メイド・イン・ジャパン”デニム〈デンハム〉白澤社長もお気に入り!
ヴィンテージ感漂う大人のワイドデニム!

太めのダメージデニムはストリートなイメージが強く、若者が穿くものと思っている人も意外と多いのでは!? そこでおすすめしたいのが、〈デンハム〉のワイドデニム“ジャンボ”。膝に入った適度なクラッシュや、腿に施された絶妙なバランスのヒゲなど、ま…

TAGS:   Fashion Denim
遊びも食も宿泊も充実の〈インスパイア〉リゾートへ!週末を遊び尽くす大人の韓国!
SPONSORED
2025.08.25 NEW

遊びも食も宿泊も充実の〈インスパイア〉リゾートへ!
週末を遊び尽くす大人の韓国!

羽田空港や成田空港から約2時間で行ける〈インスパイア・エンターテインメント・リゾート〉。迫力のウォーターアトラクションを楽しめるプールや贅沢な5ツ星ホテル、きらびやかな韓国最大級カジノ、食欲をそそる韓流の肉料理など、多彩な魅力が集まってい…

TAGS:   Gourmet Stay&Travel
【時計】ブランド刷新の仕掛け人CEOが語る〈オリス〉は、イタリアにおける“ピアッツァ=広場”でありたい
SPONSORED
2025.08.22

【時計】ブランド刷新の仕掛け人CEOが語る
〈オリス〉は、イタリアにおける“ピアッツァ=広場”でありたい

グループに属さない独立系時計ブランドならではの自由な時計作りで、存在感を放つ〈オリス〉。スイスの機械式時計の文化継承に多大な貢献を果たしてきた“正統派の後継者”である一方、1980年代に趣味的な高級品に留まっていた機械式時計を身近な存在に…

TAGS:   Watches
即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 大人カジュアル必携の人気のブラックアイテム!
SPONSORED
2025.08.18

即完売〈ロンハーマン〉の別注アイテム! 
大人カジュアル必携の人気のブラックアイテム!

大人になると色あざやかなアイテムを組み合わせてコーデするということを避け、ベーシックカラーを好むようになってくる。そのなかでも黒は、精悍でスマートに見せてくれるから、アラフォーにとって万能色といえるだろう。さらに季節が秋冬に向かえば、それ…

TAGS:   Fashion
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ