Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.04.13


ライアン・レイノルズからセルフプロデュース術を学べ!(2)


『デッドプール』(2016年)

主演した大作が立て続けにコケた以上、客を呼べないスター、つまりはハリウッドスター失格の烙印を押されてしまうもの。作品の不出来はレイノルズの責任ではないにせよ、観客はレイノルズという存在に映画館に足を運ぶほどの価値を見出さなかったのだ。普通なら、ここでレイノルズのスター街道は終わっていたはず。後はB級アクションやコメディで糊口をしのぐか、主演スターの座を降りて脇役ポジションに活路を見出すのが順当な未来だったはず。しかしレイノルズは諦めてはいなかった。もはや自分の命運を他人に任せてはいられないとばかりに背水の陣で挑んだのが、初めて主演とプロデューサーを兼ねた『デッドプール』である。
 

  

 

『あなたは私の婿になる』(2010年)

レイノルズはデッドプール役を再演するにあたって、なりふり構わず「ライアン・レイノルズであること」を表に押し出した。当時のパブリックイメージは大コケ超大作の主演スターであり、主演作で最もヒットしたラヴコメ『あなたは私の婿になる』(2010年)は、すでに大スターだったサンドラ・ブロックの相手役にすぎなかった。さらに“スカーレット・ヨハンソンの元夫”というゴシップ的な属性も軽く見られる一因となった。乱暴な言い方をすれば、当時、要注目の次世代スターでライアンといえば圧倒的にライアン・ゴズリングであり、レイノルズは替えがきく予備軍のひとりでしかなかったのだ。
 

  

 

『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009年)

しかしレイノルズには、自分自身を笑い飛ばす度量とユーモアがあった。デッドプールはスクリーン越しに観客に語りかけるようなメタなキャラクターであり、レイノルズは自分自身と演じる役柄の垣根を取り払い、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』で演じたデッドプールがショボい悪役だったことや、同じヒーロー映画の『グリーン・ランタン』で大失敗したことをネタにしまくった。

レイノルズは不謹慎なギャグを飛ばす陽キャを積極的に押し出して、デッドプールのフザけずにいられない性質が、役の上での演技なのか、レイノルズの個性なのかを限りなく曖昧にしてみせた。

そもそも映画スターは「自分自身を演じるもの」だと言われている。古くはジョン・ウェインやクリント・イーストウッド、シルベスター・スタローンにジャッキー・チェン、トム・クルーズ、ジェイソン・ステイサムらは、ほとんど本人と演じるキャラが同化しているが、それは長いキャリアでイメージを積み上げてきた成果でもある。しかしレイノルズはあえて「自分自身を演じる」ことで、逆説的に映画スターになったのだ。
 

  

 

『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年) ※撮影中

『デッドプール2』(2018年)ではなんとライアン・レイノルズ役としても登場し、シリーズ最新作『デッドプール&ウルヴァリン』では、ウルヴァリン役から引退したはずのヒュー・ジャックマンを復帰させて、レイノルズとジャックマンがいがみ合うというプロレス的アングルを大々的に宣伝に活用している。もちろん2人の仲が悪かろうはずがなく、現実世界でのおフザけを自分たちが演じるキャラクターの場外乱闘と重ね合わせて、お祭り騒ぎを演出しているのである。

もうひとつ、レイノルズで特徴的なのが、映画スターの座に達したのに、決して偉ぶろうとしないスタンス。どんな業界でも、ある程度のポジションを確立すると、本人が望む望まざるに関わらず大物として扱われ、序列にこだわるようになるものだが、レイノルズほどフットワーク軽く、他人の主演作にゲスト出演してくれるスターはいないのではないか。

『デッドプール』の大成功後に絞っても、ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムがW主演した『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)では、調子のいいCIAエージェント役で顔出し。ブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』(2022年)でも、あまり役に立たない殺し屋役でチラリと登場。クリス・エヴァンスとアナ・デ・アルマスが共演したアクションコメディ『ゴーステッド Ghosted』(2023年)にもカメオ出演。しかも、どれもこれも「大御所登場!」という仰々しさはなく、気軽に遊びにきているような風情なのだ。

自分自身のキャラを売りにしつつ、ゲスト出演の敷居の低さを感じさせるスターにもうひとりチャニング・テイタムがいるが(テイタムはレイノルズの主演&プロデュース作『フリー・ガイ』(2021年)にもゲスト出演している)、どちらも業界内のマウント合戦に参戦するのではなく、とっつきやすいキャラを売りにして確実に人脈を広げている。

共演者にとってもスタッフにしてもわれわれ観客にとっても「一緒につるめば楽しそう!」と思わせてくれる気さくさがレイノルズの最大の強み。このせちがらい世の中をサバイブするためにも、みごとハリウッドでのし上がったレイノルズのセルフプロデュース力から大いに学ぶところがあるのではないだろうか。

●こちらの記事もオススメ!
ハリウッド女優たちがプロデューサーを務める理由とは?(1)
 

  

 

 
文=村山章 text:Akira Murayama
photo by AFLO
Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタントエレガントな時間を、手元に宿す。
SPONSORED
2025.11.28

Urban Safari CLOSE-UP BRAND フレデリック・コンスタント
エレガントな時間を、手元に宿す。

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!
SPONSORED
2025.12.01

創業地“小矢部”の名を冠した〈ゴールドウイン〉のプレミアムな1着!
大人のスキーウエアは上質感と快適さで選ぶ!

1950年にはじまった〈ゴールドウイン〉のヒストリー。その新作スキーウエアコレクションの名前は、創業地にちなんだ“オヤベ”だ。歴史の深みを感じさせ、エイジレスなスタンダードデザインでありながら、機能は最新鋭。素材はもちろん、ひとつひとつの…

TAGS:   Fashion
初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!
SPONSORED
2025.11.25

初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!
カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!

一流は一流を引き寄せるとは、よくいわれること。ロックアーティストHYDEがまとったのは“キング・オブ・ダイヤモンド”として名高い、世界最高峰のジュエリー&ウォッチブランド〈ハリー・ウィンストン〉。常に最高を求め続ける両者が出会うと、どんな…

TAGS:   Fashion Watches
〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!さりげに違い出しできる大人の冬アウター
SPONSORED
2025.11.25

〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!
さりげに違い出しできる大人の冬アウター

冬カジュアルの主役であるアウターは、さりげなく違いが出せる1着を選びたい。そこで注目すべきなのが、大人のための上質な冬アウターに定評のある〈タトラス〉。定番ベースのシンプルなデザインを基本としつつ、街ゆく人をハッとさせるさりげない“違い”…

TAGS:   Fashion
〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!大人の革小物はさりげなロゴ使いで!
SPONSORED
2025.11.25

〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!
大人の革小物はさりげなロゴ使いで!

普段、バッグや靴ほど目立たないが、意外とセンスを問われるのが財布などの革小物。大人ならシンプルながらも品があって、さりげない上質感のあるものが狙いめだ。となれば〈サンローラン〉の革小物を。小ぶりなアイコンロゴがピリッと効いた財布やカードケ…

TAGS:   Fashion
俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!
SPONSORED
2025.11.25

俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!
“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!

航空計器から着想を得た革新的なデザインが人気の〈ベル&ロス〉から、2本の限定モデルが登場した。情熱的な輝きを放つダイヤルの赤と闇夜にクールに浮かび上がる蓄光の緑。異なる魅力を宿す2本のパワーウォッチがファッションシーンでも注目を集める俳優…

TAGS:   Fashion Watches
大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!冬カジュアルに効く品格バッグ!
SPONSORED
2025.11.25

大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!
冬カジュアルに効く品格バッグ!

大人の冬カジュアルに欠かせない名脇役がバッグ。どんな着こなしにも似合う上質なバッグがあれば、気分よく外出できるというもの。そこでおすすめしたいのが、〈フルラ〉の新作として登場した“アーバン バックパック”。コートなら背負って、短丈ブルゾン…

TAGS:   Fashion
機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?
SPONSORED
2025.11.25

機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!
こだわる男のための次世代ワークブーツとは!?

男のカジュアルウエアは、ワークやミリタリーをモチーフにしたタフで骨太なアイテムが定番。それは服だけでなく、足元も同じだ。とはいえ往年のワークブーツなどでは、履き心地やスペック的に現代の暮らしにフィットしない!? ならば、〈アシックス〉のワ…

TAGS:   Fashion
“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!“上質”を贈りたい 大人のギフト!
SPONSORED
2025.11.25

“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!
“上質”を贈りたい 大人のギフト!

クリスマスに忘年会、そしてニューイヤー……年末年始は、特別なギフトシーズン。頑張った自分へのご褒美に、大切な人に感謝を込めて、“とっておきの上質”を贈りたい。自分の身と心を一新させるようなワザありの逸品から、相手の顔が思わずほころぶ名品ま…

建築家・クマタイチが〈バルミューダ〉で発見。豊かな暮らしをデザインする、加湿器の新しい選択。
SPONSORED
2025.11.14

建築家・クマタイチが〈バルミューダ〉で発見。
豊かな暮らしをデザインする、加湿器の新しい選択。

〈バルミューダ ザ・ストア 青山〉を訪れた建築家・クマタイチさん。暮らしに寄り添う建築を数多く手掛けてきたからこそ、関心を寄せたのは新しい加湿器“レイン”だ。ただ湿度を調整するだけでなく、暮らしを豊かに導くための機能や造形美を兼ね備えた“…

勝利を呼び込む〈タグ・ホイヤー〉の傑作3選!名作時計はファッション使いするのが決め手!
SPONSORED
2025.11.11

勝利を呼び込む〈タグ・ホイヤー〉の傑作3選!
名作時計はファッション使いするのが決め手!

2025年で創業165周年を迎え、そのうえ、22年ぶりにモータースポーツの最高峰である“F1”公式タイムキーパーにも返り咲いた〈タグ・ホイヤー〉。モータースポーツと密接な関わりをもち、勝利を象徴するウォッチとして君臨してきたそれは、時を経…

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。
SPONSORED
2025.11.18

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。
ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。

上質なレザーのしなやかな感触と使い勝手の良さで支持を集めている〈アニアリ〉のバッグ。ミニマルで洗練されたデザインは、装いを自然に洗練されたものへと導いてくれる。また、確かな日本の職人技に裏打ちされた使いやすさと安心感が、使うほどに深まる風…

TAGS:   Urban Safari Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ