Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.03.16


【映画】リュック・ベッソン 80〜90年代の寵児が作品に込めたもの(1)


『グラン・ブルー』(1988年)

当時のカルチャーを席巻したベッソン作品
80年代から90年代にかけて、リュック・ベッソンは一つのカルチャーの象徴だった。フランス映画といえばどこか高尚なイメージが先行することが多い中、突如映画界に殴り込みをかけるように放たれたベッソン作品は、鮮烈なビジュアルスタイルと躍動感を併せ持ち、既存の伝統や枠組みをものともしない新時代のパワーに満ち溢れていた。

一作目の長編『最後の戦い』(1983年)はセリフなしのモノクロームで構成された近未来SF。二作目『サブウェイ』(1984年)はパリの地下迷宮を舞台にした奇想天外なクライムアクション。さらに三作目『グラン・ブルー』(1988年)ではフリーダイビングをめぐる海洋ロマンを詩情豊かに描ききった。このとき29歳。ベッソンは20代にして一躍、映画界の最重要人物へと躍り出たのである。

今となっては信じられない話だが、『グラン・ブルー』は初お披露目を迎えたカンヌ映画祭で批評家の激しい不評に晒されたという。しかしいざ一般公開されると、どこまでも青く澄み渡った海が観客の心をギュッと鷲掴みにした。映画はフランスにとどまらず、世界中で大ヒットを記録。まさに社会現象と言えるほど時代にこよなく愛された一本となったのだ。

映画学校出身でもなく、現場での雑用仕事から必死に這い上がった彼が、驚くべき若さでこれらの傑作群を世に放つことできた理由は何なのか。究極的な理由を挙げるとすれば、近年書かれた自伝のタイトルでもある『恐るべき子供』だったから、という言葉に尽きるだろう。
 

  

 

【Profile】リュック・ベッソン/1959年3月18日生まれ、フランス出身。

居場所を探してもがき続けた成長期
著書の中では幼少期のベッソンが、周囲と一言も言葉を交わさず、ソクラテスという名の犬とだけ親密に心を通わせる内気な少年だった事実が明かされている。

リゾート会社のスタッフ仕事に応募した父の影響で、一家は夏場のビーチと冬場のスキー場を行き来するような暮らしを送っていた。そんな中で父母の関係性が決定的なまでに冷え切り、離婚後はそれぞれが再婚相手との間に子を授かったことから、リュック少年は徐々に家庭内での居場所をなくし、誰からも存在を認めてもらえていないような複雑な心境を抱えるようになる。

そんな中、10代で体得したスキューバダイビング、さらに海中のイルカとの運命的な出会いは、傷心の彼を光射すところへいざなう唯一の癒しであり希望だった。

しかし慢心から生じたダイビング中の事故などもあって、医師からは命の危険ゆえにこの道を諦めるように告げられる。この時のショックについて、自伝の中で「人生は打ち砕かれた。もう生きている意味もない」と記されているほどだ。

ただ、逆説的にいうと、この道が断たれたからこそ彼は他の道、すなわち“映画”へと引き寄せられていくことになったのだ。それも観る側ではなく、作る側として。

その意志を決定づけたのは、初めて見学した撮影現場の光景だった。彼の瞳には、人々に娯楽を提供するためスタッフ全員が一心不乱に働く姿がとても崇高なものに映ったようで、この時の心境を「依りどころにしたいと思える宗教を見つけた」「恋に落ちたような気分」(自伝より)とも語っている。
 

  

 

『ニキータ』(1990年)

鬱屈した感情をパワーに変え、作品へとぶつける
こうと決めたら突き進むのみ。戻る場所なんてもうない。彼はがむしゃらに働き、どんな雑用仕事も快く引き受けた。そうやって現場で多くのことを学び、人より二手も三手も先を読んで行動することで、スタッフからの厚い信頼を獲得。さらに睡眠時間を削って映画の構想を練り、たえず脚本を書き続けた。

映画を撮るには才能や感性が不可欠である。しかしベッソンの場合、それを上回るほどの、破格の執念と情熱と行動力がみなぎっていた。その姿はもはや全ての面において他人より10年早く生き急いでいるように見えるほどだ。

当時の爆発的なパワーは各作品からもひしひしと感じ取れる。最初期の2作は彼が成長期に溜め込んだ感情を吐き出すかのように、アウトサイダーたちが有り余るエネルギーを激しく燃焼させるものだった。
 

  

 

『レオン』(1994年)

そこでの経験を踏まえて臨んだ3作目『グラン・ブルー』は、ベッソンにとって人生を変えた二つの要素、海と映画の融合でもある。従来の怒りや鬱屈はフッと和らぎ、深く精神世界へと潜っていくかのような成熟ぶりが刻まれていた(ちなみにベッソンの第一子が誕生したのもちょうどこの頃にあたる)。

さらに30代に突入した『ニキータ』(1990年)、35歳でキャリアの頂点へと達した『レオン』(1994年)。主人公は相変わらずアウトサイダーでありながら、殺伐とした暮らしの中で、自らの愛するもの、望むべき生き方を見つける。とりわけ『レオン』の観葉植物が象徴する「根を張って生きる」ことは、他ならぬベッソン自身が長年にわたって切望し、追い求めてきたことそのものである。

リュック・ベッソン80〜90年代の寵児が作品に込めたもの(2)に続く

※参考・引用文献:「恐るべき子ども/リュック・ベッソン『グラン・ブルー』までの物語」リュック・ベッソン著、大林薫監訳、辰巳出版、2022年
 

  

 

 
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
Photo by AFLO
仕立ての美しさに裏打ちされた〈ジーフランコ〉。リラックスかつ快適な大人のための上質デニム。
SPONSORED
2026.04.30

仕立ての美しさに裏打ちされた〈ジーフランコ〉。
リラックスかつ快適な大人のための上質デニム。

日常にしなやかに馴染む、イタリア特有の色気と軽快さが魅力の〈ジーフランコ〉。職人の手仕事によって育まれたデニムは、柔らかさと端正さを併せ持つ仕立てで、身体を包み込むような快適な着心地を実現する。さらに、上質素材がもたらす奥行きある表情がさ…

TAGS:   Fashion Urban Safari
〈ファルコネーリ〉が提案する軽やかな春。カシミヤシルクに寄り添う軽やかなリラックスアウター。
SPONSORED
2026.04.30

〈ファルコネーリ〉が提案する軽やかな春。
カシミヤシルクに寄り添う軽やかなリラックスアウター。

シルクの通気性と、カシミヤの保温・保湿性を高次元で融合した、〈ファルコネーリ〉のシルクカシミヤ。ほのかに肌寒い日には、軽やかなアウターを一枚重ねることで、リラックス感はそのまま心地よい温度バランスを実現してくれる。そんなシルクカシミヤと美…

TAGS:   Fashion Urban Safari
〈ジーフォア〉で叶えるラグジュアリーなゴルフ。品格と遊び心でゴルフスタイルを刷新。
SPONSORED
2026.04.30

〈ジーフォア〉で叶えるラグジュアリーなゴルフ。
品格と遊び心でゴルフスタイルを刷新。

〈ジーフォア〉が描くのは、機能美とデザインが響き合うラグジュアリーなゴルフスタイル。あざやかな色彩と遊び心あるディテールがコースに映え、上質な素材と快適な着心地がプレイの質を高める。品格と個性を軽やかにまとい、大人の余裕を感じさせるゴルフ…

ビーチリゾートで着たい〈タトラス〉の新作!大人の海カジュアルは“柄”と“白”で作る!
SPONSORED
2026.04.24

ビーチリゾートで着たい〈タトラス〉の新作!
大人の海カジュアルは“柄”と“白”で作る!

思いきり羽をのばすビーチリゾートでは、いつも以上に洒落た柄使いや、大人の品格を感じさせる白アイテムで違いを出したいところ。そこで注目したいのが〈タトラス〉の新作。センスのいいオリエンタル柄や、スポーティかつ上品な白アイテムを上手に取り入れ…

TAGS:   Fashion
〈ラコステ〉ならデザインのバリエーションも豊富!夏は大人に似合うポロシャツを手に入れる!
SPONSORED
2026.04.24

〈ラコステ〉ならデザインのバリエーションも豊富!
夏は大人に似合うポロシャツを手に入れる!

ポロシャツのオリジンにして、それをファッションへと昇華させたブランドといえば、もちろん〈ラコステ〉。今、そのポロシャツは大きな進化を遂げ、夏のカジュアルシーンには欠かせない存在に。そしてこの夏は、もっと自由にお洒落を楽しみたい大人たちへ向…

TAGS:   Fashion
西海岸ムードが際立つ、今シーズンの〈オリジナルスゴルフ〉!魅せる夏のゴルフはレトロかつクールに!
SPONSORED
2026.04.24

西海岸ムードが際立つ、今シーズンの〈オリジナルスゴルフ〉!
魅せる夏のゴルフはレトロかつクールに!

今シーズン、レトロなムード漂うスタイリッシュなコレクションを展開する〈アディダスゴルフ〉の〈オリジナルスゴルフ〉ライン。アイテムにはブランドを象徴する“トレフォイル”や“スリーストライプス”を印象的にあしらい、コースにも街にも馴染むスタイ…

TAGS:   Fashion GOLF
着こなしのアップデイトは〈ラコステ〉の最新コレクションで!夏ゴルフを盛り上げるクラシックなアイテム!
SPONSORED
2026.04.24

着こなしのアップデイトは〈ラコステ〉の最新コレクションで!
夏ゴルフを盛り上げるクラシックなアイテム!

“紳士のスポーツ”とはよくいったもので、ゴルフは関わるすべてのヒト・モノ・コトに誠実であることを求めている。それゆえ着こなしにも、清潔感や品格が不可欠。そのうえでスタイルに個性を求めるなら、〈ラコステ〉の新作がまさにお誂え向き。往年のスポ…

TAGS:   Fashion GOLF
〈ハリー・ウィンストン〉阪急梅田店がリニューアルオープン!最高峰の輝きをふたつの新空間で楽しむ!
SPONSORED
2026.04.24

〈ハリー・ウィンストン〉阪急梅田店がリニューアルオープン!
最高峰の輝きをふたつの新空間で楽しむ!

阪急梅田店がユニークなのは、最新のコンセプトを取り入れたメインサロンと、ブランドの世界観が体験できるコンセプトスペース「The World(ザ・ワールド)」というふたつの空間を備えていること。まずは「ザ・ワールド」の開放的な空間で美しい輝…

TAGS:   Fashion Watches
〈リプレイ〉の最新デニムを俳優・笠松 将が着こなす!自分らしく自由に楽しむ、初夏のデニムスタイル!
SPONSORED
2026.04.22

〈リプレイ〉の最新デニムを俳優・笠松 将が着こなす!
自分らしく自由に楽しむ、初夏のデニムスタイル!

デニムのお洒落には決まりきった正解はなく、“自分で見つける楽しさ”がある。多彩な役柄を魅力的かつ、自由に演じる俳優・笠松 将は、デニムという服の魅力をそう語る。そんな彼が愛するデニムブランドのひとつが、イタリア生まれの〈リプレイ〉だ。オー…

TAGS:   Fashion Denim

loading

ページトップへ