『カラーパープル(1985年)』
製作年/1985年 原作/アリス・ウォーカー 製作・監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/メノ・メイエス 出演/ウーピー・ゴールドバーグ、ダニー・グローヴァー、マーガレット・エイヴリー、オプラ・ウィンフリー
ミュージカルリメイクで再注目!
1909年、14歳のセリーは父から性加害を受け、妊娠・出産。子供がよそに預けられた後、父は彼女をミスターという中年男に嫁がせる。ミスターは女性を腕力で屈服させる男で、セリーにも容赦なく暴力を振るった。生き別れとなった妹との再会を心の支えにしながら、耐え忍ぶ日々の中、セリーはミスターの昔の恋人である歌手のシャグと出会い、交流を重ねる。それは、やがて彼女の人生を変えていくことに……。
ミュージカルリメイクが劇場で好評を博している、1985年のスティーヴン・スピルバーグ監督作品。アリス・ウォーカーの小説の映画化で、それまで娯楽作の監督と思われていたスピルバーグがドラマに挑んだ、新境地的な力作でもある。時代背景は20世紀前半で、人種差別に加え性差別もはびこっていた封建的な時代。男たちの暴力に耐えながら、自分の人生を見出していく主人公セリーの姿が忘れ難い。演じるウーピー・ゴールドバーグは、これが出世作に。
『不屈の男 アンブロークン』
製作年/2014年 原作/ローラ・ヒレンブランド 製作・監督/アンジェリーナ・ジョリー 脚本/ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、リチャード・ラグラベネーズ、ウィリアム・ニコルソン 出演/ジャック・オコンネル、MIYAVI、ドーナル・グリーソン、ギャレット・ヘドランド
折れない心にグッとくる!
1943年、オリンピックの5000m走で8位の入賞経験がある米国のアスリート、ルイスは爆撃手として太平洋戦争に駆り出されていた。しかし、彼の乗った機はエンジントラブルにより洋上に不時着。漂流の果てに、敵である日本軍に見つかり、捕虜となってしまう。収容所では五輪選手であることから指揮官に目を付けられ、暴力を振るわれる日々。それでもルイスは精神力を武器に、必死に生き抜いていく。
1998年の長野オリンピックでは聖火ランナーを務めた陸上競技選手ルイス・ザンペリーニの壮絶な半生を、女優アンジェリーナ・ジョリーの監督により映画化。47日の漂流生活を経たと思いきや、その先には2年にわたる日本での捕虜収容所生活が待っていた。過酷としか言いようがない、そんなルイスの体験を描写。幼少期の移民に対する差別を皮切りとする不条理と戦い続けた、折れない心にグッとくる人も多いのでは。
『ローン・サバイバー』
製作年/2013年 原作/マーカス・ラトレル、パトリック・ロビンソン 製作・出演/マーク・ウォールバーグ 監督・脚本/ピーター・バーグ 出演/テイラー・キッチュ、エミール・ハーシュ、ベン・フォスター、エリック・バナ
たった一人の生還劇!
2005年、偵察任務で戦地アフガニスタンの山地に派遣された米軍特殊部隊シールズの小隊。彼ら4人は民間人の目に留まったことから、敵兵100名と応戦することになる。仲間を失い、負傷してただひとり生き残った兵士マーカスは村人に救出される。しかし、この村も武装勢力のターゲットに。マーカスは米軍の救援を待ちながら、村人たちとともに敵兵に抵抗する。
アフガニスタン紛争時の極秘ミッションから帰還した実在の兵士の体験を、実話に基づいて映画化。ただの偵察任務のはずが激烈な戦闘に巻き込まれ、最小限の武装で戦うハメになる主人公。生き延びたことは運も味方したのは確かだが、最後の最後まで戦い続けた粘り強さも見逃すわけにはいかない。ドキュメント風の描写やマーク・ウォルバーグの熱演に、見ているこちらも緊張し、終わってぐったり疲れる力作アクション。
『G.I.ジェーン』
製作年/1997年 製作・監督/リドリー・スコット 脚本/デヴィッド・トゥーヒー、ダニエル・アレクサンドラ 出演/デミ・ムーア、ヴィゴ・モーテンセン、アン・バンクロフト、スコット・ウィルソン
デミが熱演した不屈のヒロイン!
男女雇用機会均等を唱える議員の差し金により、特殊部隊の訓練プログラムに送られた米海軍情報局の女性エージェント、ジェーン。訓練兵たちは仲間と認めず、教官も執拗に彼女をしごく。それでもジェーンは他の訓練生同様に頭を丸刈りにして、男でも脱落するハードな肉体的な試練にも耐え抜き、少しずつ信頼を勝ち得てゆく。ところが、レズビアン疑惑をかけられたことで、彼女の立場は危うくなり……。
『エイリアン』『テルマ&ルイーズ』など、強い女性を描いた作品に定評のあるリドリー・スコット監督のフィルモグラフィーの中でも、これほどまでに不屈のヒロインはいないのでは。セクハラを蹴飛ばし、泣き言は言わず、男尊女卑的な軍のシステムに逆らい続けるヒロイン。ちなみに、これは女性蔑視の風潮が今よりも強かった1990年代の作品。実際に丸刈りにして撮影に臨んだデミ・ムーアの熱演にも圧倒される。
『キューティ・ブロンド』
製作年/2001年 原作/アマンダ・ブラウン 監督/ロバート・ルケティック 脚本/カレン・マックラー・ラッツ、キルステン・スミス 出演/リース・ウィザースプーン、ルーク・ウィルソン、セルマ・ブレア
ヒロインの猪突猛進ぶりが痛快!
成績優秀でオシャレもロマンスも大好き、なおかつ人望の厚いブロンドの大学生エルは、政界入りを目指して法学校に進学した恋人にフラれてしまう。しかし、こんなことでメゲる彼女ではない。自身もロースクールに進み、元カレに新しい恋人ができたと知ってもめげず、本気で弁護士を目指すようになる。やがて名門法律事務所の実習生となったエルはセクハラにも屈せず驀進し、法廷で弁護人を務めることに……。
アマンダ・ブラウンが実体験に基づいて執筆した小説を映画化。“ブロンドの女性は頭が悪い”という米国の固定観念を逆手にとり、チャラチャラした遊び人のように見えてもメチャクチャ努力家であるヒロインの奮闘を活写する。一度やると決めたら、どこまでも突き進むヒロインの猪突猛進は、とにかく痛快。人は見かけによらぬもの……という言葉は、やはり正しかった!
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