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CULTURE カルチャー

2023.12.30


2023年を振り返って明らかになった瀬戸際な映画界



映画の歴史を作ってきたワーナー・ブラザーズやディズニーが100周年を迎えた2023年。ますますハリウッド映画は活況を極め……とは残念ながらいかなかった。ハリウッドの映画産業は配信サービスの台頭やコロナ禍の影響をモロに食らって再編成を迫られているし、脚本家組合と俳優組合のストライキによってメジャースタジオは多くのプロジェクトの延期や中止を余儀なくされた。

ただ、日本にいるとハリウッドで起きた激震も遠い話に思えなくもない。というのも2023年は、近年顕著になっている日本の観客の洋画離れが加速していて、明らかに外国映画の存在感が薄くなっているから。
 

  

 

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)

今年の興行ランキングで10位圏内に入っている洋画は、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』の2本のみ。30位圏内に広げても8作品しかなく、日本の映画興行はアニメと邦画が中心だと言っていい。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ザ・ムービー』は興行収入140億円で年間1位(世界興収では2位)の大ヒットだが、アメリカ製作でありつつも任天堂発信のプロジェクトなので、ほかの洋画とは事情が違っている。実写洋画では1位の『ミッション~』には「さすがトム・クルーズ!」と言いたいところだが、全体としては5位で、興収53.8億円は同シリーズとしては標準的な結果。シリーズとしては97億円を売り上げた『ミッション:インポッシブル2』の頃がピークだった。また、昨年公開されて一年間以上のロングランとなった『トップガン マーヴェリック』が叩き出した137億円に比べると見劣りするのは否めない。 
 

  

 

『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)

ほかにもドル箱と目されてきたMCUや『ワイルド・スピード』のようなシリーズものも一年を象徴するような大ヒットにはなっていない、アカデミー作品賞受賞の快挙を成し遂げたインディペンデント魂あふれる怪作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も年間46位止まり。ストライキの影響で今後しばらくはハリウッド映画の供給は減る見込みなので、洋画の存在感がさらに薄れていくのは必然だろう。
 

  

 

『バービー』(2023年)

今年、日本と海外の温度差がもっともわかりやすく表面化したのが『バービー』。フェミニズムや多様性といったテーマを前面に押し出しつつも、ポップでカラフルなエンタメに仕立てて、2023年の世界興収ナンバーワンの大ヒット作となった。“バーベンハイマー”という作品にとってはもらい事故のような騒動もあって映画ファンの間ではなにかと話題になったが、興行だけでいえば年間56位。“今年の1本”を選ぶなら間違いなくタイトルが挙がる作品なのに、日本での反応は芳しくなかった。

『バービー』は#MeToo以降のフェミニズムや多様性の議論にひとつの区切りを付ける気概を持った作品だと思うし、実際、観客を刺激し、エンパワメントしてくれる映画として海外では大いに受け入れられたわけだが、『バービー』が内包する今日的なテーマ性が、はからずも日本ではヒットに結びつかない一例になってしまった。

一方で、海外との温度差で真逆の反応を見せたのがディズニー100周年を記念して製作された『ウィッシュ』。全米でのオープニング週末の興行成績は3位止まりで、世界各国で100周年にふさわしい成果は上げられなかった。しかし最も遅れて封切られた日本では、初登場1位発進。2週目は『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』に1位の座を譲ったものの、すでに中国の倍近くを売り上げ、英仏を抜いてアメリカに次ぐ勢いなのだ。

『ウィッシュ』の作品的評価はさておき、日本では王道ディズニーアニメへの支持がは根強いというだけでなく、ほとんどのスクリーンで吹替版が上映されているアニメ作品なので、海外の作品と構えることなく観られる敷居の低さもあるだろう。
 

 
と、ミニシアター系の小規模公開作品を脇において、興行面の数字の話ばかりしているが、要するにハリウッド映画やハリウッドスターが求心力を失っていることは事実として認めざるを得ない。そのこと自体は何年も前から言われているが、もはや海外映画の動向やトレンドが日本の興行を左右する状況ではないのだ。極論すれば、仮に洋画の供給がストップしても困るのはわずかな映画ファンと業界関係者だけで、すっかり趣味人の娯楽になってしまった感がある。

日本のガラパゴス化は当分続きそうで、世界の潮流から取り残される弊害はあると思うが、決して悪いことばかりではない。国内で人気のアニメ映画のクオリティは明らかに上がっているし、実写映画にしても独自の方向性で発展を続けることでオリジナリティを獲得することもあるだろう。
 
  

 

『オッペンハイマー』(2023年)

残っているのは、われわれ映画好きが、どこまで海外の映画に触れ続けられるのかという問題だが、日本公開が遅れに遅れた『オッペンハイマー』のような特例を除けば、メジャー作品については配信サービスが受け皿になるはずだ。映画館のスクリーンで観たいという欲求を満たされないのは残念だが、少なくとも作品を鑑賞することはできる。
 

  

 

『ゴーストワールド』(2021年)

もっと小規模な作品や非ハリウッドの外国映画については、ミニシアターの閉館が相次ぎ、経営の苦しさが叫ばれており、見通しは楽観的ではいられない。しかし22年ぶりに公開されてヒットしている『ゴーストワールド』のようなリバイバル上映が多かったこと、知られざる名監督の功績を掘り起こす特集企画が充実していたことは、2023年の喜ばしい一面ではある。少なくとも映画ファンは新旧問わずいい映画や、まだ出会っていない映画を観たい、知りたい、見せたい、という気持ちを失ってはいない。
 

  

 

TSUTAYA渋谷店 ※画像は2017年当時のもの

2023年は、ソフトレンタルの牙城だったTSUTAYA渋谷店がついにレンタル事業を取りやめたことも象徴的だった。配信サービスがあればいいという向きもあるだろうが、ある日突然配信がなくなってしまうケースは数多い。洋画がすぐに映画館から消え去るわけではないにしても、大資本の支えのない作品は風前の灯であるという危機感は持っていた方がいい。 コロナ禍は間違いなく映画業界に打撃を与えたが、筆者は来るべき厳しい未来が近づいてくる時計の針を早めただけだと考えている。 

とはいえ映画ファンひとりひとりができることには限界がある。深田晃司監督を筆頭に、もはや映画館や映画ファンの自助努力だけでは限界があることを認識し、公的支援を呼びかけている人たちの意見にも耳を傾けてほしい。ファンひとりひとりの草の根の努力はもちろん必要だが、業界全体、国全体としてひとつの文化を守れるかどうかの瀬戸際なのではないか。大げさに聞こえるのは承知の上で、待ったなしの状況がより明らかになった年だったと思っている。※参考/Box Office Mojo
 

  

 

 
文=村山章 text:Akira Murayama
photo by AFLO
(C) 2023 Nintendo and Universal Studios
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