『トレインスポッティング』(1996年)
それまでは、ダブダブのショートパンツやダブダブのジーンズを履いていた若者たちに、全く新しいシルエットと着こなしを提案したのが、伝説のドラッグカルチャー・ムービー『トレインスポッティング』(1996年)だ。スコットランドのエディンバラで無軌道な日々を送るアウトサイダーの若者たちが、人生を変えるべく格闘する。そんなどん詰まり生活を送るグループの中でも、ユアン・マクレガーが演じるメインキャラ、レイトンのワードローブには盗めるアイデアがたくさんある。
『トレインスポッティング』(1996年)
まず、雑なように見えて実は計算し尽くされたレイヤードルック。上から行くと、スウェードのボンバージャケットの下には長袖のスウェット、さらにその下にはワイサイズ小さいTシャツ、シーンによっては同じ時代を代表するスポーツブランドのタウン仕様、つまり、〈アディダス〉、〈アンプロ〉、〈ナイキ〉などのジャージを上に着ることもある。そして、ケミカルウォッシュのスキニージーンズに白い〈コンバース〉のハイカット・スニーカーがユアンの細長い下半身を強調している。
『トレインスポッティング』(1996年)
つまり、全体的にスリムなシルエットがとても斬新で、後にレイトンの着こなしは一部のロックンローラーや若者のタウンウェアとして定着することになる。特に、ボンバージャケット&Tシャツ&腰に巻いた柄物のスウェットシャツ&スキニージーンズで街角を疾走するレイトンは、映画を代表するアイコニック・ショット。そして、ビーチの風景がプリントされたTシャツはワンサイズどころかツーサイズは小さめのチビTで、ユアンのヘソが見えそうで見えない究極の演出が施されている。そのためにはほどよく痩せていること、それがトレンドだった、ような気もする。
『トレインスポッティング』(1996年)
監督のダニー・ボイルが一際その才能を発揮する名場面がある。それは、ヘロイン中毒のレイトンが便器の中に頭を突っ込むと、そのままカラダ全体が便器に吸い込まれ、便器の下に広がる汚物の海ではなく、青く透き通った水の中を泳ぐシーンだ。その時、レイトンのカラダもトレードマークの服も、汚れた魂も、浄化されていく感覚に陥らせる。カルトムービーは必ずしも名作や傑作である必要はない。何度でも繰り返し観てみたい、究極のキラーショットが一つか二つあれば充分なのだ。『トレインスポッティング』はまさにそんな映画で、そこに忘れられない服が描かれていることも、カルトたる所以なのである。
『トレインスポッティング』
製作年/1996年 原作/アービン・ウェルシュ 監督/ダニー・ボイル 脚本/ジョン・ホッジ 出演/ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー
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photo by AFLO