予想を覆される、どんでん返し映画を5本セレクト。作品紹介の後半には【ネタバレ】が含まれているので、ラストを知りたくない人は記事を読まないようご注意ください。なお「あの作品が紹介されていない!」「もっと、どんでん返し映画を知りたい!」という人は、既出の記事“【まとめ】まさかのエンディングに驚愕! どんでん返し映画55本!”のチェックをお願いします!
『バニー・レークは行方不明』
製作年/1965年 原作/イヴリン・パイパー 監督/オットー・プレミンジャー 脚本/ジョン・モーティマー、ペネロープ・モーティマー 出演/キャロル・リンレー、キア・デュリア、ノエル・カワード、ローレンス・オリヴィエ
予想が根こそぎ覆される!
『帰らざる河』『悲しみよこんにちは』の名匠オットー・プレミンジャーが手がけたサスペンス・ミステリー。アメリカからロンドンに引っ越してきたシングルマザー、アン(キャロル・リンレー)が、保育園に預けていた幼い娘バニーを迎えに行く。しかしバニーは忽然と消失してしまい、ロンドン警視庁のニューハウス警部(ローレンス・オリヴィエ)が捜査に乗り出す。しかし保育園の職員をはじめ、誰もバニーを目撃しておらず、ニューハウスはアンの主張に疑念を抱きはじめる……。
〈ここからネタバレ〉
人間の失踪を題材にしたミステリー劇は『フライトプラン』『ブレーキ・ダウン』など数多くあるが、本作はそれらのどれとも違う真相が待ち受ける異色作。観る者は“消えた少女”バニーは最初から存在しておらず、情緒不安定なアンの妄想の産物ではないかと思わされるが、その予想は根こそぎ覆される。キーパーソンはアンの唯一の理解者である兄スティーヴン(ケア・デュリア)。彼がサイコな本性を露わにし、アンとの歪んだ兄妹愛が明かされる結末に唖然呆然とさせられる。
『瞳の奥の秘密』
製作年/2009年 製作総指揮/ヘラルド・エレーロ、バネッサ・ラゴーネ 監督・脚本/フアン・ホセ・カンパネラ 脚本/エドゥアルド・サチェリ 出演/リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ
サスペンス・ミステリーとしても一級品!
第82回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞したアルゼンチン映画。ブエノスアイレスの刑事裁判所を定年退職した初老の男性ベンハミン(リカルド・ダリン)が、25年前に自分が捜査に携わった未解決事件を題材にした小説を書きはじめる。それはリカルドという銀行員の美しい新妻が被害者となった残虐な暴行殺人事件だった。かつての同僚で、今は検事として活躍するイレーネと再会したベンハミンは、容疑者のゴメスを取り逃がした当時の記憶をたどっていく……。
〈ここからネタバレ〉
現在と過去のふたつのパートから成る本作は、主人公ベンハミンと彼の憧れの女性イレーネが織りなすメロドラマでもある。しかし軍事政権下で闇に葬られた殺人事件のおぞましい成り行きと、終盤に描かれる真相の衝撃性は、サスペンス・ミステリーとしても一級品。最愛の妻の命を奪った憎き犯人をただならぬ執念で追い続けていたリカルドは、法では裁かれなかったゴメスを自らの手で“終身刑”に処していたのだ。人間という生き物の情念の深さに驚嘆せずにいられない一作だ。
『灼熱の魂』
製作年/2010年 原作/ワジディ・ムアワッド 監督・脚本/ドゥニ・ビルヌーブ 出演/ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーラン、マキシム・ゴーデット
奇妙な数式の答えに驚愕!
『ブレードランナー 2049』(2017年)、『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の出世作。カナダ在住の若い姉弟ジャンヌとシモンが、母親ナワル(ルブナ・アザバル)の死後、公証人のもとを訪れる。そこで姉弟に手渡されたのは、彼らの“父”と“兄”に宛てられた2通の手紙だった。父親が誰なのかわからずに育ち、兄が存在していることも知らなかったジャンヌとシモンは、中東レバノンからカナダに移住してきたナワルの過去を探っていくのだが……。
〈ここからネタバレ〉
レバノン生まれの劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲を原作にした本作は、いわゆるジャンル映画ではなく、ひとりの母親の波瀾万丈の人生をめぐる物語。祖国レバノンで宗教対立に巻き込まれた主人公ナワルのあまりにも過酷な運命は、ギリシャ神話さえも想起させる。そんな母親の軌跡をたどった姉弟は、劇中で提示される“1+1=1”という奇妙な数式の答えにたどり着く。それはナワルの遺言である手紙を渡すべき“父”と“兄”が、同じ人物だったという禁断の真実である。
『フレイルティー 妄執』
製作年/2001年 監督・出演/ビル・パクストン 脚本/ブレント・ハイレン 出演/マシュー・マコノヒー、パワーズ・ブース、マット・オリアリー
観る者の善悪の価値観をひっくり返す!
俳優ビル・パクストンの監督デビュー作。とある夜、テキサス州のFBI支局にフェントン(マシュー・マコノヒー)という男がやってくる。彼は全米を震撼させる“神の手殺人事件”の真犯人を知っているという。同事件の捜査担当者ドイル(パワーズ・ブース)は、不審を抱きながらもフェントンの告白に耳を傾ける。それは少年時代のフェントンと幼い弟アダムが、天使から「悪魔を滅ぼせ」という使命を授かったと主張する父親(パクストン)に導かれ、殺人に加担した恐ろしい過去だった……。
〈ここからネタバレ〉
フェントンの告白を映像化した過去のパートでは、父子3人が力を合わせて“人間の姿をした悪魔”を次々と抹殺していく様を描出。純真な子供の視点で描かれるその異様なストーリーからして戦慄ものだが、終盤の展開はさらにすごい。フェントンが語るオカルトじみた“神と悪魔の闘い”は本当にあった出来事で、彼こそが悪魔退治にいそしむ“神の手殺人事件”の犯人だったという驚愕の真実が明かされる。観る者の善悪の価値観をひっくり返す、斬新なミステリー・スリラーだ。
『プリデスティネーション』
製作年/2014年 原作/ロバート・A・ハインライン 製作・監督・脚本/マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ 出演/イーサン・ホーク、サラ・スヌーク、ノア・テイラー
タイムパラドックスが生んだ真実はまさに予測不能!
1970年、ニューヨークのバーでライターの青年ジョン(セーラ・スヌーク)が、バーテンダー(イーサン・ホーク)に数奇な生い立ちを語りはじめる。ジェーンという女の子としてこの世に生まれた“彼”は、18歳の時に悲しい恋を経験し、性転換手術によって男性になった。その身の上話を聞いたバーテンダー(イーサン・ホーク)は、ジョンをタイムトラベルに誘う。実はバーテンダーは、凶悪爆弾魔のフィズル・ボマーを追って未来からやってきた時空警察の捜査官だった……。
〈ここからネタバレ〉
ロバート・A・ハインラインの短編小説に基づくこのSFサスペンスは、まさに予測不能のひねりの連続。バーテンダーが携帯型タイムマシンでジョンを1963年へ連れ出す中盤以降、めまぐるしく時制を移動し、ジェーンを妊娠させた謎の男、ジェーンが出産した赤ん坊、そしてバーテンダーと彼が異常な執念を燃やして追跡するフィズル・ボマーのあっと驚く関係性を明かしていく。タイムパラドックスが生んだ世にも複雑怪奇な真実、何と上記のキャラクター全員が“同一人物”だったのだ!
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photo by AFLO