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CULTURE カルチャー

2022.11.03

ArtSticker presents ART INTO LIFE
1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。

アートへの関心が世界的に高まっている中、アート初心者の方にもわかりやすく“アートの見方”を解説するこの連載。今回は画家の熊倉涼子さんの作品をクローズアップします。ナビゲーターは、現代美術に造詣の深い塚田萌菜美さん。さっそく熊倉さんの作品を紐解いていきましょう。

1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。作中に針金で作ったモチーフが台座ごと描かれていることで、現実と絵画内の不思議な関係性を感じさせる

熊倉涼子さんの絵画は、神話や星座など、時空を超えて、様々なモチーフが複雑にレイヤーされ、唯一無二の世界観を作っています。今回はアトリエにお邪魔して、作品の制作秘話をお伺いしました。

──熊倉さんの作品の、図版の選定や厳密な構成を拝見するに、1枚の絵を仕上げるのに、どれくらいの期間がかかりますか?
熊倉涼子さん(以下熊倉) 個展が決まるとそこに向けてテーマを構築します。そのために資料を読み込んだり、画像を検索したりと、リサーチする期間が1カ月ほど。絵の構成をそれぞれ2、3日で設定して、描いていくという感じです。

──制作に際して、針金の制作や紙を使ったコラージュをしていますが......。
熊倉 以前はドローイングで下絵を作っていましたが、今はiPadで下絵をレイヤーさせて構成を調整します。次にモチーフを作成して並べ、撮影したら、さらにそれをもとに実際に絵を描きます。構成を決めるときにiPadで手作業をしていると、予期せぬズレが生まれることがありますが、それがまたいいなと。作品に描かれる針金は写実的で存在感があるようにも見えますし、線なので存在感が曖昧だったりする点も面白さです。針金は影が想像できないので、実際に光を当てて描きます。

──テーマで使われる宗教的、神話的なアイコンは、どう捉えていますか?
熊倉 そうしたモチーフは“情報の塊”として捉えています。西洋の神話や日本の神話などを取り扱うことがありますが、自分に深い関係性があるとは捉えていません。距離感を保ちながら、様々なモチーフをフラットに扱うようにしています。

──このスタイルをはじめたきっかけやインスピレーションの源はありますか?
熊倉 モチーフを作ることと、歴史が出来上がるまでの経緯を結びつけたいと思うようになったのがきっかけです。やっていることは引用と模写という、見て描いているだけですが、制作の過程を積み重ねていくと、自分が見たことのない新しいイメージが生まれてきます。以前はぬいぐるみを描いていましたが、ぬいぐるみは印象が強いので、モチーフだけを入れ替えて同じようなことをやりたいと思うようになりました。その傍らで古いものを調べることをずっとやっていました。モチーフは私の思考からのものではなく、サンプリングなので、モチーフが無限にあるなと。そのぶん、ひとつひとつ丁寧に扱う必要があるので、さらに調べて描くようになりました。

1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。複雑な要素が幾重にもレイヤーしているのが窺える。それでいて絶妙の画角バランスをしっかりキープしている

1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。“塗り絵シリーズ”折り紙やおもちゃなどをモチーフに、色を塗り重ねている

1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。作品のアイデアやヒント、実験の過程が詰まっているiPad

1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。Artist
熊倉涼子
画家。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。歴史の中で人々が世界を理解しようとする過程で生まれたイメージを元に、絵画を制作。多面的な視点の図像を集め、それを元に作品を構成している。主な個展に、2022年「TransientImages」(日本橋三越本店美術サロン)、2018年「Pseudomer」(REDANDBLUEGALLERY)など。2021年「第34回ホルベイン・スカラシップ」奨学生。



1枚の絵の中に謎解きするような面白さがある。ArtSticker
塚田萌菜美
アートスペシャリスト。成城大学大学院文学研究科美学・美術史専攻博士課程前期修了。SBIアートオークション株式会社でオークショニア・広報・営業を担当した後、現在はArtStickerを運営する株式会社The Chain Museumにて、キュレーションやアドバイザリーを担当している。

 
Information

『Urban Safari』Vol.30 P29掲載

写真=田中駿伍 監修=塚田萌菜美 文・構成=堀川博之
photo : Shungo Tanaka(MAETTICO) supervision : Monami Tsukada(ArtSticker) text & composition : Hiroyuki Horikawa
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