映画界最大のイベント、アカデミー賞が今年も近づいてきた。やはりこの時期は、受賞を狙う作品をイチ早く観たいもの。先日のノミネート発表で作品賞など7部門で入り、今年の目玉のひとつとなっているのが、この『ウエスト・サイド・ストーリー』だ。
歴代のミュージカル映画のアンケートをとると、必ずと言ってもいいほどナンバーワンにランクされる、1961年の『ウエスト・サイド物語』。当時、アカデミー賞でも作品賞など10部門を受賞した、まさに名作中の名作だ。そこから60年を経て再生させたのは、スティーヴン・スピルバーグ監督。子供時代から大好きだったという巨匠の愛とリスペクトに溢れる新作の誕生だ。
舞台は1950年代のNY。開発が進むマンハッタンのウエスト・サイドで、プエルトリコ移民のシャークスと、ポーランド系のジェッツという、若者グループの抗争が激化する。シャークス側のマリアと、ジェッツ側のトニーが一瞬で惹かれ合ったことで、彼らは切実な運命をたどることに……。あの『ロミオとジュリエット』を基にしたオリジナルに忠実なドラマが展開していく。
NYの街をスケール感たっぷりにとらえた映像や、ミュージカルシーンの圧倒的な迫力と完璧なカメラワーク、決闘シーンのリアルな壮絶感など、全編、スピルバーグがこれまでのキャリアをつぎこんだような堂々たる演出に引き込まれる。アクション作品と同じく、明らかにこれは大スクリーンで体感すべき映画だ。『トゥナイト』『アメリカ』などオリジナルと同じ名曲は、いま改めて聴いてもまったく古さは感じないから不思議! この新作で特にオススメのナンバーは『クール』で、1961年の映画の同曲は、あのマイケル・ジャクソンにも影響を与えた。タイトルどおり超クールに、カッコよく進化しているので楽しみにしてほしい。主人公2人の純粋ながら過酷なラブストーリー、人種問題で世界の“分断”を問うテーマを、ミュージカルというエンタメとして現代の観客に届けるという、巨匠の魂が込もった力作だ。
『ウエスト・サイド・ストーリー』2月11日公開
原作/アーサー・ローレンツ 製作・監督/スティーヴン・スピルバーグ 脚本/トニー・クシュナー 出演/アンセン・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、デビッド・アルバレス 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
2021年/アメリカ/上映時間157分
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