『search/サーチ』『バグダッド・スキャンダル』
物語がPC画面の中で進行する新感覚映画『search/サーチ』と、ブレイク間近の若手スター、テオ・ジェームズ主演の『バグダッド・スキャンダル』をピックアップ!
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物語で選ぶ編
『search/サーチ』
ムネアツなポイントは?
・全編PC画面で進む新感覚スリラー!
・高校生の娘の知られざる日常が明らかに!
・冴えわたる脚本に思わず唸る!
・自分のPCで事件を見守っている感覚に陥る!
これまでも映画は数多くのチャレンジで、新たなスタイルを完成させてきたが、今作も映画を革新する一作である。なんと全編がPCの画面(一部スマホ画面)だけで展開していくのだ! そう聞くと、なんだか“安易”なイメージも伴うが、このチャレンジは見事に成功。予想を上回る感覚を届けてくれる。
妻を病気で亡くし、シングルファーザーとして高校生の娘を育てる主人公のデビッド。父娘の関係は微妙なのだが、ある日、“クラスメートの家に泊まって勉強する”とメッセージを残し、娘の消息が途絶えてしまう。デビッドは警察にも連絡し、必死にその行方を探すが、やがて父親でも知らなかった娘の日常が明らかになっていく。
“PC画面のみ”というスタイルだけでなく、この失踪事件を描くストーリー自体もよく練られている。その点が今作の大きな魅力だ。父と娘の微妙な心の距離、妻を亡くした悲しみ、疑惑がかけられる人たちの怪しい言動、そして娘の秘密……。それぞれの要素が巧みに絡み合って、驚きのクライマックスを導いていく。普通の映画と同じように“実景”で撮っていたとしても、サスペンスのハラハラ感は満点だったはず。脚本自体が冴えわたっているのだ。
とはいえ、やはり見どころはPC内での展開。亡き妻のPCに残された思い出の画像や動画にはじまり、父娘それぞれのSNSでのやりとりや過去の履歴、ビデオチャットによる外部との連絡、さらに監視カメラやPCで見るニュース。YouTubeの動画までを状況によってあざやかに駆使し、観客を自分のPCで事件を見守っている感覚に陥らせる。父親が娘のSNSのパスワードを推理する過程などは、PC画面ゆえの緊迫感とテンションが満点。買物から銀行振込み、外部との連絡など、あらゆる日常生活がネットで可能になっていき、映画もPC内で成立してしまう……。そんな現代社会への強烈な皮肉も今作で感じるかもしれない。
監督を務めたのは、27歳のインド系アメリカ人のアニーシュ・チャガンティ。初の長編となる今作でサンダンス映画祭観客賞を受賞したうえ、すでに公開されたアメリカでも予想以上のヒットを記録。一気にハリウッド期待の新星となった。デビッド役は『スター・トレック』シリーズで知られる韓国系アメリカ人のジョン・チョウ。2018年、ハリウッドのトレンドである“アジア系”の勢いを加速させる一作でもある。
『seach/サーチ』
監督・脚本/アニューシュ・チャガンティ 出演/ジョン・チョー、デブラ・メッシング、ミシェル・ラー、ジョセフ・リー 配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2018年/アメリカ/上映時間102分
10月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
セレブで選ぶ編
『バグダッド・スキャンダル』
ムネアツなポイントは?
・ブレイク間近なスター、テオ・ジェームズ
・演劇学校で学んだ確かな表現力!
・本作で骨太な魅力も加わった!
・実際の国連汚職事件を描く社会派サスペンス
テオ・ジェームズと聞いて、ピンとくる人は『Safari Online』読者には少ないかもしれない。彼を一躍有名にしたのは、ティーン向けベストセラー小説を映画化した『ダイバージェント』シリーズだからだ。ヒロインを指導する役柄で、世界的に注目を浴び、2015年には〈ヒューゴ・ボス〉のフレグランスのアンバサダーを務めるほどに。エキゾチックな雰囲気を持つ2枚目は、近い将来、ブレイクしそうな気配を感じずにはいられない。
イギリス生まれのテオは、大学で舞台や短編映画の制作に携わったことで、プロの俳優を目指すように。その後、ブリストル・オールド・ヴィック演劇学校に入学し、本格的に演技指導を受けた。この学校はダニエル・デイ=ルイス、ジェレミー・アイアンズらを輩出した名門。在学中、ウディ・アレンの『恋のロンドン狂騒曲』に出演し、映画デビューを飾っているが、そのスター性は巨匠の折り紙つきというわけだ。
そんな彼の魅力といえば、スマートさ。スタイルもシャープで、どちからといえば王子様キャラ。そこに武骨さを補完してくれるのが本作の役どころだ。未曾有の汚職事件を解き明かしていく国連職員役で、正義のために立ち上がる様は男性からも共感を得るに違いない。
物語は、2000年初頭のイラクが舞台。経済制裁により苦しむイラク国民を助けるため、国連による食料配給計画が実施される。しかし、その裏では汚職がはびこっていて……。実際に起こった国連スキャンダルを描くもので、その内容を知るだけでも驚きの一言。ベテラン俳優ベン・キングズレーが、十八番の憎まれ役を好演している。
『バグダッド・スキャンダル』
原作/マイケル・スーサン 監督・脚本/ペール・フライ 出演/テオ・ジェームズ、ベン・キングズレー、ジャクリーン・ビセット 配給/アンプラグド
2018年/デンマーク、カナダ、アメリカ/上映時間106分
11月3日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
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