2026.06.19 NEW
『さよなら、僕の英雄』記憶喪失の兄と、大金を取り戻したい弟による感動作
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どんな国の俳優も、ハリウッドの話題作で認められれば、母国よりもそちらの作品を中心に活躍しがち。ギャラの面でも、撮影の環境の面でも、圧倒的に恵まれるからだ。一方で、ハリウッド大作で世界的スターになっても、母国の小規模な作品に積極的に参加する俳優は、それだけで誠実な性格に尊敬の念を抱いてしまう。マッツ・ミケルセンは、まさにそんなスターだろう。
『007』や『ファンタスティック・ビースト』、『インディ・ジョーンズ』のシリーズ、マーベル映画『ドクター・ストレンジ』などの悪役、さらに『ライオン・キング:ムファサ』の声の出演など、ハリウッドで引く手あまたのマッツ・ミケルセン。デンマーク出身で“北欧の至宝”と称えられるように、日本でも熱烈なファン層を有し、最近はコミコンなどで来日のたびに大歓迎を受けている。そんなミケルセンは、母国デンマークの映画では、とにかくチャレンジングな役を好み、そこがファンの心をくすぐってもいる。この最新作では、自分をジョン・レノンだと思い込み、危うい行動も繰り返す主人公のマンフレル役。15年ぶりに出所した弟が、逮捕前に隠した大金を取り戻そうとするが、マンフレルは隠し場所を思い出せず、兄弟はとんでもない運命に巻き込まれる。
髪はパーマ、メガネというマンフレルのルックスは、マッツ・ミケルセン自身のアイデア。そして走る車から飛び降りるなど、かなり過激なスタントもこなす彼の姿から、ハリウッド作品とは違う自由な撮影現場を想像させる。それもそのはず、アナス・トマス・イェンセン監督とミケルセンは、本作が6度目のタッグ(同監督の長編にはすべて出演)。全編に、両者の信頼の絆が貫かれているのだ。ジョン・レノンだと信じるマンフレルが、他のワケありなキャラとバンドを組む流れでは、ビートルズやABBAといった誰もが知る名曲も散りばめられ、音楽ムービーとしても楽しめる本作。兄弟の関係が、トム・クルーズが出演した『レインマン』を連想させたりと、さまざまな“発見”もある。一見、シリアスな物語のようで、ユーモアもたっぷり。ドキリとする衝撃で驚かせたかと思えば、ホッコリした感動も用意されたりと、多様な方向で魅せる快作だ。
『さよなら、僕の英雄』6月19日公開
監督・脚本/アナス・トマス・イェンセン 出演/マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・コス、ソフィー・グロベル、ソーレン・マリン 配給/スターキャットアルバトロス・フィルム
2025年/デンマーク・スウェーデン/上映時間116分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
© 2025Zentropa Entertainments4ApS & Zentropa Sweden AB.
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