
『ゴーン・ベイビー・ゴーン』
製作年/2007年 監督/ベン・アフレック 出演/ケイシー・アフレック、ミシェル・モナハン、モーガン・フリーマン
少女はどこへ!? 驚きの結末が胸に突き刺さる!
ベン・アフレックが、2007年に初めて長編映画監督に挑んだ記念すべき一作。ボストンの労働者階級が暮らす町で幼い少女の失踪事件が起こり、テレビのニュースでは母親が涙ながらに「娘を返して!」と訴える映像が流れ続ける。やがて親族は警察の捜査だけでは埒があかないと、地元に独自の人脈を持つ私立探偵パトリック&アンジーへ捜査を依頼。これを機に思いがけない事件の真相が解き明かされていくのだが……。
原作が米文学を牽引するデニス・レヘインとなると、かなり重めの衝撃に身構えるべきなのは当然のこと。子供の失踪というだけでも胸が引き裂かれそうになるが、それ以上に親のネグレクトやアルコールやドラッグの問題、さらには周囲にうごめく登場人物たちが「善き人間でありたい」と願いながらも踏み越えてしまう運命の境界線を、この映画は痛いほど突きつける。アフレックの地元ボストン愛ゆえ、多くのロケ地とエキストラを擁した作品に仕上がっているのが特徴的。弟ケイシーの飄々としながら時にグイグイと闇に踏み込むハードボイルドぶりも秀逸だ。

『スリーパーズ』
製作年/1996年 監督/バリー・レヴィンソン 出演/ジェイソン・パトリック、ブラッド・ピット、ロバート・デ・ニーロ
深い傷を抱えた少年たちの復讐劇が幕を上げる!
‘60年代の終わり、反戦や公民権を訴える市民運動のうねりが絶頂を迎える中、ギャングが仕切る街ヘルズ・キッチンで育った4人の不良たちは、ふとしたことがきっかけで重大事故を引き起こし、少年院へ送られる。そこは更正とは名ばかりの、看守たちによる虐待、いじめ、性的暴行が横行する場所だった……。
ロレンツォ・カルカテラのベストセラー本を原作に、フレッシュな若手からデ・ニーロ、ホフマンといった名優まで取り揃えた重厚作。ここは決して道徳的に胸を張れるような大人たちの街というわけではないが、それでも独自のルール、誇り、生き様が存在する。少年院でトラウマを抱えた者たちが、やがて元看守たちへの大いなる復讐へ踏み出すのも、まさにこの街で育った“不屈の魂”あってこそ。各々が役割を分担し、大人たちの力を借りながら着実に計画を進める姿は、少年の一人の愛読書『モンテ・クリスト伯』さながらだ。子供たちが道を踏み外さぬよう見守る司教役デ・ニーロのまっすぐな瞳にも心を揺さぶられる。

『トールマン』
製作年/2012年 監督/パスカル・ロジェ 出演/ジェシカ・ピール、ジョデル・フェルランド、スティーヴン・マクハティ
謎の男は子供らをどこへ連れ去ったのか!?
ここはアメリカのとある廃れた町。鉱山が閉山したきり産業と呼べるものはなく、人々は貧しい暮らしを余儀なくされている。そんなさなか、子供達が忽然と姿を消す事件が続発し、数々の目撃談から“トールマン”と呼ばれる謎の男が容疑者として浮上していた。ある日、看護師のジュリアは、フード姿の男が子供を肩に担ぎ逃げ去るのを目撃。トラックにしがみついて必死に追跡するのだが……。
トールマンとは何者なのか。彼の目的は?さらわれた子供たちは一体どこへ連れて行かれるのか。いやそれ以前に、私たちは本当に街の住人たちを信用して良いのだろうか? ストーリーが二転三転して一向に真相が明かされない中、ただひとつ言えるのは、いつも被害者となるのは子供たちだということ。貧しさは貧しさを生み、人々は無間地獄のように抜け出せない。この繰り返しを断とうとするのは善行だろうか。それとも偽善だろうか。先読み不能の結末に、あなたの価値観は大きく揺さぶられるはず。

『チャイナタウン』
製作年/1974年 監督/ロマン・ポランスキー 出演/ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン
生々しい人間模様の光るフィルム・ノワールの傑作
妻のシャロン・テートが殺害されるという痛ましい事件後、久方ぶりにポランスキーがアメリカで監督を手がけたフィルム・ノワールの傑作。舞台は1937年のロサンゼルス。灼熱の太陽にさらされた同地では“水”利権をめぐって容赦ない駆け引きが繰り広げられていた。ある日、水道局のお偉方、ホリスの浮気調査を依頼された私立探偵のジェイク(ジャック・ニコルソン)は、真面目一徹で市民のために精魂込めて働くその男が若い女性と密会するのを目撃する。しかし直後、彼があまりに不審な死を遂げたことで、ジェイクは事の真相を探りはじめるが……。
ニヤニヤと軽薄そうな微笑を浮かべつつも、正義感に厚く、こうと決めたら突っ走る。そんなニコルソンの役柄がやがて辿り着くのは“若い女性”をめぐる急展開だ。実は重要人物のワケありな“娘”でもあるこの少女。運命の夜、複雑な相関図に巻き込まれた彼女の目前で起こる出来事はあまりに悲劇的で、チャイナタウンの非情さと理不尽さを物語る。ある意味、この救いのなさこそポランスキーらしさ。彼女の悲鳴が耳にこびりついて離れない一作だ。

『プリズナーズ』
製作年/2013年 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演/ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノ
覚悟無しには見届けられないディープ・サスペンス
『DUNE/デューン砂の惑星』シリーズのヴィルヌーヴ監督が手掛ける漆黒のディープ・サスペンス。ご近所どうしが共に感謝祭のひとときを過ごす中、少し目を離した隙に、幼い二人の少女が姿を消した。警察が必死の捜査を続ける一方で、少女の父親は近所に停まっていたRV車の持ち主が何らかの事情を知っているのではないかと疑いだす。失踪事件は発生から時間が経つごとに生還の可能性が減る。もう後がない。決意を固めた父親はその人物を屋内に監禁し、強制的に口を割らせようとするが……。
人は悩める子羊であり、原罪を背負った存在である。タイトルが示す通り、本作の登場人物たちは必死にもがき続け、答えの見つからない暗闇であやまちを重ね、それでもなお自らの力で立ち止まることができない。見る側の我々にとってもある種の覚悟を強いる物語。だが、安全領域を超え、身も心もボロボロになりながら見えてくる壮絶で深淵な境地が、この映画には確かに存在する。あなたに最後まで見届ける勇気はあるだろうか!?
Photo by AFLO




























































