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CULTURE カルチャー

2025.02.21


アカデミー賞注目の映画『ブルータリスト』は骨太で重量級の感動作!

 

 


今年のアカデミー賞で注目の部門がひとつ。それは主演男優賞。現在、最有力は『ブルータリスト』のエイドリアン・ブロディだ。彼は22年前の『戦場のピアニスト』でアカデミー賞主演男優賞を史上最年少で受賞。その記録は今も破られていないが、今年の対抗馬、ティモシー・シャラメが受賞すれば最年少記録となる。ブロディvs.シャラメの対決は目が離せない!

『ブルータリスト』でエイドリアン・ブロディは、主人公の30年もの激動の運命を演じ切った。第二次世界大戦のホロコーストで、ハンガリーからアメリカへ逃れたユダヤ系の建築家、ラースロー・トート。いとこの紹介で豪邸のリフォームを手がけた彼は、その当主の実業家に気に入られ、建築の一大プロジェクトを任される。一方でラースローは、ヨーロッパに置き去りにした妻と姪を何とかアメリカへ呼ぼうとする……。真っ暗な船内から外に出たラースローが、自由の女神を目にするオープニングから波乱万丈の物語を予感させ、実際に予想以上のドラマチックな展開が続く、骨太かつ重量級の感動を備えた一作だ。上映時間は、なんと3時間35分! しかし途中で15分の休憩が入っているので、トイレの心配は不要。前後編で2本の映画を観られるオトク感もある。
 
 
こうした長尺の作品は、間延びするシーンが多発しがちだが、この『ブルータリスト』は飽きる瞬間が少ない。思いのほかテンポのいい展開はもちろん、要所にカッコいい演出・映像がほどこされ、そこで一気に引き込まれるからだ。ラースローが建築家ということで、“ブルータリズム”というヨーロッパの様式を取り入れた彼のデザインも見どころとなるが、映画全体にクールな“デザイン”が意識され、クレジットの文字の出し方、音楽の挿入のやり方など、あちこちで監督の大胆なセンスが炸裂。ブラディ・コーベットは、かつて実写版『サンダーバード』の主人公など子役として活躍し、俳優から監督に転身して本作でヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞(監督賞)に輝いた。そんな彼の演出に、エイドリアン・ブロディが全編、迫真の演技で応える。異文化社会で超過酷な試練を受け止め、それでも仕事への野心を消さないラースローの姿に、多くの人が自分を重ねて一喜一憂することだろう。

『ブルータリスト』2月21日公開
製作・監督・脚本/ブラディ・コーベット 出演/エイドリアン・ブロディ、ガイ・ピアース、フェリシティ・ジョーンズ、ジョー・アルウィン 配給/パルコ
2024年/アメリカ・イギリス・ハンガリー合作/上映時間215分

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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
Photo by AFLO
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