映画『セプテンバー5』 テレビ報道のプライドに熱く感動する!
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このところハリウッドの話題作は、上映時間が長いものが目立つ。2時間半超えなんて当たり前。3時間近い作品も多数。こうした傾向が続くと、逆に短い作品はそれだけで新鮮。しかもこの『セプテンバー5』のように傑作に仕上がっていれば言うことナシだ。
タイトルからわかるように、この映画は“9月5日”に起こった事件を描いている。今から53年前の1972年、ミュンヘン夏季オリンピック会期中に、世界を震撼させたのが、パレスチナ武装組織“黒い九月”の選手村への侵入と立てこもり。彼らはイスラエル選手団を人質に、イスラエルに拘束されたパレスチナ人らの解放を要求してきた。平和の祭典であるオリンピックでの悲劇という衝撃もさることながら、世界で初めてテロがテレビで生中継され、9億人がニュースを見守ったというから、まさに歴史を変えた事件なのである。かつてスティーヴン・スピルバーグ監督が『ミュンヘン』でこの事件を題材にしたが、今回の映画は別アングルから描いて背筋を凍らせる。テロ発生に気づいたアメリカのテレビ局、ABCがどのように生中継をしたのかを再現。中継担当のスタッフたちは大混乱しつつ、どんな決断をしたのか……。
基本的に、選手村近くのABCのスタジオ内部だけで展開する本作。そのため、映画を観るわれわれも、事件の詳細がなかなかつかめないスタッフたちと同じ気持ちにさせられる。それが95分の上映時間で、ノンストップの勢いで進んでいくものだから、臨場感、緊張感、スリル、すべてが半端じゃないレベル! わずか1日の間に事態は刻々と変わっていくし、その場その場の判断が試される。そこに当時の実際のニュース映像もうまく挿入。“体感映画”として申し分ない作りだ。53年前を描いているのに、今の時代にもアピールする理由がもうひとつ。最近も何かにつけて、メディアの報道のあり方が問題視されるが、このABC、および現地ドイツのスタッフには“真実をどう中継するか”というプライドがみなぎる。そのプライドが、本作のキャストやスタッフにものりうつったようで、熱く感動してしまうのだ!
『セプテンバー5』2月14日公開
製作・監督・脚本/ティム・フェールバウム 出演/ピーター・サースガード、ジョン・マガロ、ベン・チャップリン 配給/東和ピクチャーズ
2024年/ドイツ・アメリカ/上映時間95分
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Photo by AFLO