映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』 波乱万丈な人生に胸を打たれる!
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ひとつの“伝説”を作り、あまりにも早くこの世を去ったミュージシャンは、映画にとって最高の題材だ。フレディ・マーキュリーを主人公にした『ボヘミアン・ラプソディ』のほか、『エルヴィス』、『シド・アンド・ナンシー』(シド・ヴィシャス)など、当人の熱烈なファン以外にも映画として強くアピールする。
ここに新たに加わったのが、ボブ・マーリー。レゲエの“神様”という存在なのは言うまでもない。ジャマイカ生まれの彼は、1981年に36歳の若さで亡くなった。本作のタイトルにもなっている『One Love』は、レゲエミュージックの象徴にもなった曲で、レゲエに馴染みのない人でも聴き覚えがあるだろう。映画は、マーリーが亡くなる5年前の1976年からはじまる。ジャマイカで国民的アーティストになっていた彼が、政治闘争に巻き込まれて銃撃される。その2日後、彼はケガをおしてステージに立った。さらに“20世紀最高のアルバム”と称された『エクソダス』のレコーディング、ヨーロッパ主要都市のツアー、ジャマイカでの凱旋コンサートなどとともに、愛する妻、家族との関係が若い時代も挿入されてエモーショナルに描かれていく。
人気ミュージシャンが銃撃の被害に遭うという、過酷な社会状況。一方で、レゲエのリズムに表現されるような、どこかリラックスした空気で、誰もが気軽に友人になれる国民性。そんな1970年代のジャマイカを、現地のロケも行って再現した映像により、マーリーの人生がビビッドに伝わってくる。この手の作品は、レジェンドを体現する俳優の実力が問われるが、本作でマーリーを演じたキングスリー・ベン=アディルは、外見を寄せるのはもちろん、ギターの持ち方やステージ上の動きも本人を完コピ。そのうえでアーティストとして、および人間としての葛藤もにじませた名演をみせている。『One Love』がどのシーンで流れ、そしてそこにはどんな意味があるのか。ボブ・マーリーの叶わなかった思いも受け止めながら、是非スクリーンに向き合ってほしい。
『ボブ・マーリー:ONE LOVE』5月17日公開
製作総指揮/ブラッド・ピット 監督・脚本/レイナルド・マーカス・グリーン 脚本/テレンス・ウィンター、フランク・E・フラワーズ、ザック・ベイリン 出演/キングズリー・ベン=アディル、ラシャーナ・リンチ 配給/東和ピクチャーズ
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito