ネットフリックス『雪山の絆』の実話サバイバルぶりに驚愕する!
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映画を観るうえで大切なことのひとつ。それは“季節”。そこで描かれているドラマを登場人物と同じように体験するうえで、寒さや暑さは重要ポイント(もちろん快適な温度の場所で観るにしても)。この『雪山の絆』は真冬に観てこそ、作品の真髄がわかるはずだ。
1972年、ウルグアイのモンデビデオからチリのサンティアゴへ飛行中のチャーター機の連絡が途絶える。ウルグアイのラグビー・チーム一行45人が乗った同機はアンデス山脈で墜落。パイロットらは死亡し、続いていた捜索も打ち切られるなか、生存者16人はどのような運命をたどったのか……。航空機事故の歴史でも語り継がれるこの実話は、ハリウッドで1993年にイーサン・ホークらの出演で『生きてこそ』として映画化されたが、今回は『ジュラシック・ワールド 炎の王国』で知られるスペイン出身のJ・A・バヨナ監督が、ラテン系の俳優を集め、セリフもスペイン語にするなど徹底してリアリティ重視で再現。アカデミー賞に向けた各賞でのノミネートを重ねている。
極寒の雪山。食料もわずか。目の前で仲間が次々と命を落としていく。もちろん外部と連絡する方法は見つからない。そんな過酷な状況での、生存者たちの“究極の選択”も本作は、しっかりと見据え、背筋が凍る瞬間が多発する。食べ物が制限されると、こんな生理現象が起こるのか、というシーンにはびっくり。俳優の極端なアップで寒さと閉所の両方を伝え、広大な雪山をとらえたワイドショットで孤立感を倍増。こうした映像の使い方も計算されたうえ、日に日に死が迫ってくる恐怖と、「絶対に生還する」という決意や勇気が、それぞれの人物を通してエモーショナルな高みへと達する展開が見事だ。有名な事件なので、結末を知っている人も多いと思うが、それでもクライマックスは激しいまでに感動してしまう。人間の生命力はもちろん、映画のパワーも改めて教えてもらった気分で、観た後もしばらくテンションが上がったままになる一作だ。
『雪山の絆』配信中
原作/パブロ・ビエルチ 製作・監督・脚本/J・A・バヨナ 出演/エンゾ・ボグリンシク、アグスティン・パルデッラ、マティアス・レカルト、エステバン・ビリャルディ 配信/ネットフリックス
2023年/スペイン・アメリカ・ウルグアイ・チリ/視聴時間143分
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